外科

Volume 71, Issue 1, 2009
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特集【胆道癌診療ガイドラインを学ぶ】
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I.総論:1.「エビデンスに基づいた胆道癌診療ガイドライン」とその作成過程について
71巻1号(2009);View Description
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胆道癌はいまだ予後不良の疾患であり,その治療成績の向上には多くの課題が残されている.一方で,各施設間で独自の経験に基づいた診療が行われることも多く,その内容のバラツキが大きいのが実情である.このような背景から現時点でのエビデンスをまとめ,本疾患にかかわる医療従事者の参考となるようガイドラインを作成した.本稿では,その作成にいたる経緯,過程を中心に解説する.
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I.総論
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2.胆道癌の疫学—— 特にリスクファクターについて
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胆道癌診療ガイドラインに記載された胆管癌,胆嚢癌,十二指腸乳頭部癌のリスクファクターにつき述べる.胆管癌のリスクファクターは,胆管拡張を伴う膵・胆管合流異常と原発性硬化性胆管炎である.胆嚢癌のリスクファクターは膵・胆管合流異常である.胆嚢ポリープでは,大きさが10 mm 以上や,増大傾向を認めるもの,大きさにかかわらず広基性病変では胆嚢癌の頻度が高い.十二指腸乳頭部癌は,リスクファクターの報告はない. -
3.胆道癌診断のエビデンスとコンセンサス
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胆嚢癌には特徴的な臨床症状はなく,一方,胆管癌や乳頭部癌は黄疸を契機に診断される.しかし,胆管癌や乳頭部癌においても早期発見のための特異的な臨床症状はなく,早期発見できる腫瘍マーカーはない.胆道癌を疑ったらまず超音波検査がファーストステップである.さらに,セカンドステップの精査には造影CT とくにmultidetector-row CT が推奨される.直接胆道造影で得られる情報は磁気共鳴胆管膵管造影(MRCP)でも可能になった.しかし,胆管水平方向進展の検索には直接造影が必要である.また,存在診断には最終的に生検が必要な場合があり,一方で手術適応にはCT は欠かせない.このほか,各種検査法は個々の症例に合わせた選択が必要である.以上のような胆道癌診断に関しての症状や検査法の評価は,ほとんどがエビデンスレベルはIV 以下の論文であり,診断のガイドラインの多くは専門家の意見の一致という推奨度に基づいて作成された.今後は診断に関して前向きな検討と評価が必要である. -
4.術前胆道ドレナージに関するエビデンスとコンセンサス
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胆道癌診療ガイドライン第V章「術前胆道ドレナージ」では,実際の臨床の場において問題となる6 個のクリニカルクエスチョン(CQ)が取り上げられている.現在でもその内容が大きく異なることはないが,「CQ-10 黄疸を有する患者に術前の胆道ドレナージは必要か?」,「CQ-11 術前胆道ドレナージとしては何が適切か?」などではいくつかの新しい知見が,文献報告や学会の演題で散見される.最近の新しい流れを含めて解説した. -
5.肝機能評価法と術前門脈塞栓術
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大量肝切除術を必要とする胆道癌症例においては,術前門脈塞栓術(PVE)を行うことにより術後合併症や手術関連死亡を減少させる可能性がある.PVE の適応は肝右葉切除以上,あるいは切除率50 〜60%以上の肝切除を予定する症例に行われるのが一般的であるが,肝機能は単に「容量」だけでなく「機能」的側面からも評価されなければならない.われわれの施設では,ICG 排泄率(ICGK)に残肝容積率をかけ合わせた残肝ICGK 値を用いて,残肝予備能を容積・機能の両側面から評価している.
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II.各論
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1.胆石症・胆嚢ポリープの切除適応について
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胆嚢癌患者では胆嚢結石の保有率が高いため,古くから胆石が胆嚢癌の危険因子であると考えられてきたが,それを支持する明確なエビデンスは存在せず,胆道癌診療ガイドラインでは無症候性胆石に対して胆嚢摘出術を推奨してはいない.胆嚢ポリープは画像上10 mm 以上で増大傾向を認める場合や,大きさにかかわらず広基性のものは胆嚢癌の頻度が高く,胆嚢摘出術が推奨される. -
2.胆管癌の手術方針
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エビデンスに基づいた胆道癌診療ガイドラインにおける「胆管癌の手術方針」に関する領域について概説する.胆管癌の手術方針としては,中下部胆管癌には幽門輪温存膵頭十二指腸切除術(D2)が,肝門部胆管癌でBismuth 分類IIIb には左葉側肝切除+胆管切除(D2)が,Bismuth 分類IIIb 以外には右葉側肝切除+胆管切除(D2)が基本となる.門脈切除再建の併施は安全に行われるようになり,根治切除可能で患者の全身状態から耐術可能と判断される場合には考慮する. -
3.胆嚢癌の手術方針
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胆道癌診療ガイドラインの中から胆嚢癌の手術方針に関連するクリニカルクエスチョン(CQ)を取り上げて解説した.ガイドライン作成の過程でレベルの高いエビデンスが内外ともにほとんどないことが再確認され,症例数の多い日本,アジアから今後エビデンスが発信されていくことが期待され,それにつれて内容が変動していく可能性がある.また,このガイドラインはあくまでも標準的な診療指針・目安であり,実際の診療行為を強制するものではない.各施設,個々の患者や癌の特性を考慮して,よいと考えられる方法をガイドラインの内容とともに主治医が患者に提示することが必要であろう. -
4.十二指腸乳頭部癌の手術方針
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胆道癌診療ガイドラインにより,乳頭部癌の手術法については膵頭十二指腸切除(PD)が適切で,縮小手術は推奨できないとされた.この理由の一つとして,超音波内視鏡検査(EUS)や管腔内超音波検査(IDUS)による術前進展度診断の有用性は示されているが,正診率において,現段階で十分とはいえないと解説された.また,予後因子についての検討から,幽門輪温存膵頭十二指腸切除(PPPD)および亜全胃温存膵頭十二指腸切除(SSPPD)の有用性が示唆された.
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III.非手術的治療
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1.胆道癌の化学療法に関するエビデンスとコンセンサス
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胆道癌に対する化学療法は,切除不能胆道癌患者において生存期間の延長やQOL の改善を示した報告もあり,全身状態が良好な場合には十分効果が期待される.胆道癌化学療法の後ろ向き研究ではgemcitabineやcisplatin の有効性が示唆されている.わが国では第II相試験の結果,現在,gemcitabine とTS-1 が新たに保険適用に承認され,広く用いられている.今後gemcitabine を中心とした併用療法や分子標的薬を用いた新しい治療開発,さらに術後補助療法の確立が望まれる. -
2.胆道癌に対する放射線治療のエビデンスとコンセンサス
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切除不能胆管癌においては,放射線療法はbest supportive care と比較し優れているとの報告が多いが,大規模なRCT はなくそのエビデンスレベルは低い.外照射が一般的であるが,放射線療法の効果を高めるためには腔内照射の併用が有用である.奏効率の改善,再発期間や生存期間の延長をみたという報告が多い.多くの施設で施行されており,多施設による大規模なRCT の施行が望まれる.手術との併用療法では,術中または術後に放射線療法を施行した群と非施行群との比較では,有意差はないものの照射群で生存が延長したとの報告がなされている. -
3.切除不能胆道癌に対する胆道ステント
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胆道癌診療ガイドライン作成にあたり苦労させられたのは,この領域には高いレベルのエビデンスが不足していることにある.切除不能とする基準自体が施設間で大きく異なり,局所進展因子ではそのコンセンサスが得られていない.推奨文の多くはガイドライン作成委員の間でも意見の一致をみないことがあり,コンセンサスを得ることは容易ではなかった.切除不能例に対する胆道ステントとしてmetal stent が望ましいと推奨しているが,“開存率からみると”というただし書きが付記されている.これまでのエビデンスでは,metal stent はplastic stent に比べ開存期間は有意に長いが生存率に差がないためである.また,ステント関連の論文に含まれる対象例の多くは膵頭部癌であり,胆道癌を対象とした本来のエビデンスの蓄積がまたれる.
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連載/外科医のための臨床研究講座(9)
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連載
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臨床経験
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気道や食道の緊急処置後の医原性食道損傷に対する診療戦略—— 頸部斜切開・一期的単純縫合閉鎖・深頸部縦隔ドレナージ
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症例
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術後CPT-11+TS-1 にimatinib mesilate を同時投与したS 状結腸癌と胃gastrointestinal stromal tumor の同時性重複の1 例
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書評
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