外科

Volume 71, Issue 7, 2009
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特集【消化器外科領域におけるoncologic emergency】
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I.食道癌:食道癌による狭窄~気管(支)瘻
71巻7号(2009);View Description
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進行食道癌では狭窄症状や瘻孔形成に伴う症状さらには気道閉塞症状をきたすことが多く,oncologic emergencyの高い病態といえる.Oncologic emergencyをきたす食道癌に対する明確なevidence-based medicine(EBM)は確立されていないが,全身状態が不良となっている場合も多くすみやかな治療が的確に行われ,きたるべき根治治療に備えることや治癒不能例に対する生活の質(QOL)向上をめざしたすみやかな処置が必要である.
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II.胃癌
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1.胃癌腹膜播種による癌性腸閉塞
71巻7号(2009);View Description
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切除不能進行・再発胃癌によるoncologic emergencyの一つに,腹膜播種による癌性腸閉塞がある.本症に対する外科的介入は人工肛門造設の可能性が高く,短時間での手術決定は容易ではない.消化器外科医は,患者と信頼関係を築き十分なインフォームド・コンセントを得て,合併症のない手術を心がける必要がある.患者ごとに目標を定め,入念な手術計画と精神的配慮ができるチーム医療のもとで行う外科的介入は,患者にとって有意義な緩和医療となる.これは消化器外科医が提供すべき高度な医療で,今後そのニーズは高くなると考えている. -
2.胃癌穿孔
71巻7号(2009);View Description
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胃癌穿孔が胃癌全体に占める割合は1%以下とまれであるが,胃穿孔例のうち胃癌穿孔例の占める割合は26〜32%と多く,胃穿孔では胃癌穿孔に留意した治療が必要である.胃癌穿孔では術中に診断できることは少なく,術中内視鏡検査や迅速病理検査などの対策が必要である.胃癌穿孔では非穿孔胃癌と比較して予後不良であるが,早期癌で根治手術が行われた場合には,非穿孔例と匹敵する予後が期待できる.また手術術式については,全身状態を考慮した適切な術式選択をする必要があり,場合によっては二期的手術を考慮すべきであろう.
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III.小腸腫瘍
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小腸腫瘍による出血・閉塞
71巻7号(2009);View Description
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小腸腫瘍は胃や大腸の腫瘍と比較してまれな疾患であるが,近年はカプセル内視鏡やダブルバルーン内視鏡の登場で内視鏡診断が可能になってきた.しかし,現時点でカプセル内視鏡やダブルバルーン内視鏡は限られた施設でのみ施行可能であり,依然として下血や腸閉塞の状態で診断される小腸腫瘍が存在するのが現状である.今回われわれは自験例の小腸腫瘍による出血・閉塞例をレヴューし,今後の診断・治療法のストラテジーを検討した.
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IV.大腸癌
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1.大腸癌関連穿孔
71巻7号(2009);View Description
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大腸癌穿孔は,大腸癌患者の2〜7%に発生する比較的まれな疾患ではあるが,今後大腸癌の増加とともに増えると予想される.腹膜炎から敗血症,多臓器不全と発展しやすく予後不良であるが,救命のためには迅速な診断と,発症早期からの治療開始が必要である.手術と敗血症対策が治療の中心であり,患者の救命を最優先し,次いで癌の根治性を追求することが大切である.周術期を乗り越えた症例の予後は,非穿孔大腸癌と大差ないため積極的な対応が求められる. -
2.大腸癌イレウス
71巻7号(2009);View Description
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経鼻的減圧術では,効果がないことが多いとされる左側大腸癌イレウスに対しては,従来Hartmann 手術など二期的手術が選択されることが多かった.しかし最近では,内視鏡技術機器の進歩とともに経肛門的減圧手技(金属ステント留置術と経肛門的減圧チューブ挿入術)により減圧し手術を待期的に行うと,緊急手術を施行した群と比較して手術成績を向上させることが報告されており,患者の生活の質(QOL)の向上が図られている.今後左側大腸癌による狭窄・閉塞に対する第一選択的な手技として普及していくと思われる. -
3.骨盤内再発腫瘍からの出血に対する動脈塞栓術
71巻7号(2009);View Description
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直腸癌をはじめとする骨盤内再発腫瘍からの出血は保存的治療や内視鏡的治療でコントロール困難なことが多く,難治性で生活の質(QOL)を著しく低下させる.このような症例に対してわれわれは選択的に動脈塞栓術を行ってきた.奏効率は約60 %で,複数回の治療を要する場合もあるが,長期コントロールが可能な症例もみられた.重篤な合併症はみられず,難治性出血に対する有用な治療法と考えられる.
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V.肝臓癌
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肝癌破裂~下大静脈腫瘍栓
71巻7号(2009);View Description
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肝細胞癌(HCC)に関連するoncologic emergencyとして,破裂および下大静脈(IVC)内腫瘍栓を採り上げた.HCC 早期発見例の増加に伴い破裂例の頻度は減少しているが,破裂例の予後は依然として不良で,特に初期治療による救命率はほぼ横ばいのままである.肝動脈塞栓術(TAE)による止血と二期的な肝切除が長期予後を期待できる最善のストラテジーと考えられるが,出血を契機とした肝不全への進行を抑止し,肝切除につなげる症例を増やすための方策が必要である.IVC 腫瘍栓に対しては突然死の予防,生活の質(QOL)の確保の観点から積極的切除が行われる.手術の侵襲をなるべく抑え,かつ安全に切除を行うためのさまざまな工夫がなされているが,腫瘍栓の進展の程度によっては体外循環などの大きな侵襲を伴う手技が必須となる場合がある.集積症例がまだ少ないこともあり,長期生存の観点からみた切除の意義はまだ十分には示されておらず,今後の課題である.
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VI.胆道癌・膵癌
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1.胆道癌・膵癌による閉塞性黄疸
71巻7号(2009);View Description
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膵頭部癌,胆管癌では閉塞性黄疸をしばしば伴い,初診のきっかけとなる代表的な徴候である.原因となる癌の治療に対するあらかじめの減黄の必要性については多くの論議が重ねられている.閉塞性黄疸時の臓器あるいは組織相関の存在が注目されてきており,各種組織内でのトランスポータの分布に大きな消長を生じていることなどは明白な事実となっている.したがって,侵襲の少ない減黄法の発達・普及をみた今日,潜在する胆管炎の術前制御も含めて,侵襲の大きな手術に対してほど減黄処置を導入していただきたい. -
2.膵頭十二指腸切除例の術後合併症
71巻7号(2009);View Description
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膵頭十二指腸切除は時としてその合併症により重篤な経過をたどる.本稿では膵頭十二指腸切除後に緊急処置を行う合併症とその対策につき概説した.緊急処置を要した膵頭十二指腸切除後の合併症は膵液瘻,腹腔内出血,腹腔内膿瘍,胆汁瘻であった.これらの合併症に対し,最近では外科的な処置ではなく,interventional radiology(IVR)手技を用いた処置を行うようになった.これにより膵頭十二指腸切除後の合併症は重篤な経過は回避できるようになってきた. -
3.膵炎合併膵腫瘍
71巻7号(2009);View Description
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急性膵炎はしばしば遭遇する疾患であるが,膵腫瘍がその成因となることがある.近年,膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm:IPMN)に起因する急性膵炎の報告例が多くみられる.当科における急性膵炎合併と急性膵炎非合併例におけるIPMNの臨床病理学的因子について検討を行ったところ,急性膵炎例でIPMNを発見した場合,それが悪性である頻度が通常よりも高い可能性が示唆された.急性膵炎の診療の際,その成因として膵腫瘍があることを念頭におき,膵腫瘍が疑われる場合は急性膵炎が治癒した後にあらためて精査・治療を行わなければならない.
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