外科

Volume 72, Issue 3, 2010
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特集【外科医が気を使う高齢者手術の周術期管理】
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I.総論:1.高齢者消化器外科手術における併存疾患管理
72巻3号(2010);View Description
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周術期管理の進歩により高齢者の消化器外科手術は以前より安全に施行できるようになったものの,一般的に主要臓器機能の予備能が低下しており,併存する基礎疾患の有無により手術リスクはきわめて高いものとなる.ひとたび術後合併症を併発すれば,臓器不全から致命的となる場合もある.高齢者では個々の症例において,各主要臓器の予備能やリスクの評価を十分に行い,より安全性を重視した治療法の選択と緻密な周術期管理が必要である.特に併存疾患として頻度の高い心疾患,慢性閉塞性肺疾患,腎機能低下例,耐糖能異常を有する患者については十分な注意が必要である. -
I.総論:2.高齢者のリスク評価
72巻3号(2010);View Description
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高齢手術患者のリスク評価に用いられる指標としては米国麻酔医学会(American Society of Anaesthesiology:ASA), physiological and operative severity score for the enumeration of mortality morbidity(POSSUM), Charlson 加重併存疾患指数,estimation of physiologic ability and surgical stress(E-PASS)などがある.最近報告されている“虚弱性(frailty)”の評価は,高齢者の手術リスクにおける新たな指標である.これらのリスク評価法を用いて術前の評価を行うと同時に,麻酔科医,循環器,呼吸器,内分泌,腎などの内科専門領域の医師との円滑な協力関係をもって高齢者手術患者の診療にあたることが重要である. -
I.総論:3.高齢者外科の栄養管理
72巻3号(2010);View Description
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高齢者では耐糖能が低下する.一方,脂肪酸の酸化能は比較的正常に保たれる.したがって,高齢者には非蛋白カロリーとして炭水化物より脂肪が好ましい.さらに高齢者では,筋蛋白を維持するために蛋白質の摂取量を若年者より増やすべきである.高齢者の周術期管理および術後の栄養指導では,このような事実を念頭におかねばならない.不適切な栄養管理は患者の生活の質(QOL)を低下させ,医療行為の価値そのものを損ねることになる. -
II.各論:1.高齢者穿孔性腹膜炎手術の合併症と対策
72巻3号(2010);View Description
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高齢者穿孔性腹膜炎の合併症を考える際には,高齢者に特有なものと腹膜炎に特有な感染性合併症の両方を考慮する必要がある.前者としては呼吸器合併症とせん妄,後者としては敗血症とそれに伴う多臓器不全が重要である.特に呼吸器合併症と敗血症は在院死亡と深くかかわっており,その対策が救命するためのポイントと考えられる.エビデンスやガイドラインに基づいた治療を行うことが基本であるが,個々の病態に対して柔軟に対応していくことも必要である. -
II.各論:2.高齢者胸部食道癌症例における周術期ステロイド投与
72巻3号(2010);View Description
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75歳以上を高齢者と定義して,高齢者胸部食道癌に対する周術期ステロイド投与の有用性について概説する.周術期ステロイド投与により,胸部食道癌周術期の炎症性メディエータの過剰産生を抑制することで全身性炎症反応症候群(systemic inflammatory response syndrome:SIRS)を制御して,特に高齢者で致命的となりうる呼吸器合併症の発症率を軽減できる可能性が示唆される. -
II.各論:3.高齢者食道切除術の周術期管理と治療成績
72巻3号(2010);View Description
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食道癌は高齢者に多い一方で,食道切除術の侵襲は大きい.高齢者では癌の根治性と全身状態に配慮した厳密な手術適応,二期手術などの侵襲軽減に留意した手術,早期離床をめざす術後管理が特に重要である.これらを厳密に行うことにより,高齢者(75〜79 歳)・超高齢者(80 歳以上)でも合併症の発生,予後の面で対照群と有意差は認めず,外科的切除も高齢者食道癌に対する治療法の一つとして妥当なものと考えられた. -
II.各論:4.高齢者胃癌の周術期管理
72巻3号(2010);View Description
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高齢者胃癌の周術期管理は,呼吸器・循環器・腎機能などの予備能低下を十分考慮し,高齢者において比較的頻度の高い呼吸器合併症などに配慮した対応が必要である.今回,高齢者の臓器機能の背景と術後合併症を述べ,その対策・治療について文献的考察を加え提示した. -
II.各論:5.高齢者胃全摘術後の経腸栄養
72巻3号(2010);View Description
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わが国の人口動態は確実に高齢化へと向かい,内科疾患の有病率も増加している.加齢に伴う生理機能や免疫能の低下を認識し,胃切除術に比して侵襲の大きな胃全摘術リスクを評価しなければならない.当院では高齢者やハイリスク例の合併症対策として術後早期から経腸栄養による管理を導入している.高率に発生する合併症から離脱し,なかなか経口摂取がすすまない症例への術後栄養補助としても役割も担う経腸栄養は簡便な術後管理方法の一つである. -
II.各論:6.高齢者大腸癌化学療法時の注意点と対策
72巻3号(2010);View Description
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欧米の数少ない臨床試験の結果から,高齢者大腸癌に対する標準化学療法の効果は非高齢者と同等であるが, FOLFOX 療法では骨髄抑制,FOLFIRI 療法では骨髄抑制・下痢の頻度が高齢者に高いことに注意すべきである.実地臨床では, performance status,臓器機能,サポート体制などを総合的に評価し,可能であれば高齢者でも標準治療を選択するのが妥当であるが,有害事象のきめ細かなチェックと早めの支持療法の導入により,生活の質(QOL)を低下させない配慮が重要である. -
II.各論:7.高齢者の大腸内視鏡時の注意点と対策
72巻3号(2010);View Description
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近年,高齢者人口の増加に伴い癌罹患数が増加している.特に大腸癌は増加傾向にある癌である.高齢者の大腸癌では右側大腸に頻度が高いため深部大腸までの検査が必要であり,平坦・陥凹型腫瘍が多いことを意識し注意深く検査をすることが必要と考えられる.高齢者の大腸癌に対しては,可能であればより非侵襲的な内視鏡などの治療が望まれるが,高齢者では基礎疾患などにより,いったん偶発症をきたせば重篤な状態に陥る可能性がある.したがって,高齢者に対してはより慎重な態度での内視鏡検査・治療が必要である. -
II.各論:8.高齢者肝細胞癌の周術期管理
72巻3号(2010);View Description
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肝細胞癌(HCC)の切除について,高齢者特有の適応基準や周術期管理の方法が確立されているわけではない.肝機能に基づく切除許容範囲で根治手術が行われれば,高齢者に対するHCC の切除は安全に施行可能であり,非高齢者とほぼ同等の長期成績が期待できる.ただし,高齢者では冠動脈疾患や腎機能障害が高率に併存し,術前から貧血や低アルブミン血症を認めることも多い.慎重に耐術能を評価するとともに,術後の輸液管理に細心の注意を払うべきであることは論をまたない. -
II.各論:9.高齢者膵癌治療の注意点と対策
72巻3号(2010);View Description
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膵癌は高齢者に好発し,近年では周術期管理の進歩により手術成績も向上しているが依然として予後不良である.膵切除術は侵襲が大きいため周術期管理にあたっては,高齢者の身体的背景と膵切除手術の特殊性を十分に理解することが必須である.本稿では加齢による変化と基礎疾患や膵切除による膵内外分泌機能の変化と栄養状態,膵十二指腸領域主要動脈の動脈硬化性変化による術式の問題などを中心に解説した. -
特集関連トピックス:高齢者消化器外科手術後音楽療法
72巻3号(2010);View Description
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消化器外科手術対象として高齢者が増加しており,周術期精神機能障害を最小限に抑えることが求められている.消化器外科領域における音楽療法は今なお臨床研究のレベルであるが,今回光ガイドキーボード装置を用いた周術期音楽療法の試みについて紹介する.消化器外科手術患者20 例を対象に手術前および術後1 日目に光ガイドキーボード装置を用いた音楽療法を施行した.トーンはピアノ,使用曲は「ムーンリバー」とし,1 回10 分/ 日,光ガイドにより患者が能動的にキーボードを押して演奏するように指導した.血圧,脈拍数,経皮的酸素飽和度,唾液中クロモグラニンA を手術前および術後1 日目に各々,安静臥床時,消毒後起座位,音楽療法施行直後,音楽療法終了15 分後に測定し評価した.幸福感イメージによる気分評価もイメージスケールを用いて同時に施行した.外科的ストレスにより,術前と比べて術後1 日目の唾液中クロモグラニンA は増加し,幸福感イメージスコアは低下した.光ガイドキーボード装置を用いた音楽療法により,血圧は安定し,幸福感イメージスコアは改善し,唾液中クロモグラニンA は減少した.光ガイドキーボード装置を用いた音楽療法は術後も安全に導入でき,周術期ストレスの軽減や気分改善に貢献するものと思われた.
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連載
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臨床と研究
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症例
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腹腔鏡下直腸固定術後に残存した直腸粘膜脱に硫酸アルミニウムカリウム・タンニン酸注射液硬化療法を施行した直腸脱の1 例
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書評
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