外科

Volume 72, Issue 9, 2010
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特集【術前・術後に要注意 併存疾患の手術リスクと対策】
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I.基礎疾患併存例の手術:1.糖尿病
72巻9号(2010);View Description
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近年,糖尿病患者数が増加の一途をたどり,糖尿病を併せ持った患者に対する手術を行う機会も増えている.われわれ外科医は,糖尿病の病態を十分に理解したうえで,各患者における術前の血糖コントロール状況ならびに全身合併症の有無を正確に評価しなければならない.また,同患者群が周術期合併症のハイリスク群であることを常に意識しながら,緻密な血糖管理のもと安全な周術期管理を心がけることが重要である. -
I.基礎疾患併存例の手術:2.循環器疾患
72巻9号(2010);View Description
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われわれ外科医が手術を行う患者においても,心疾患を合併する患者の頻度は増加している.潜在的に,もしくは明らかに心臓疾患をもっている場合には,その侵襲により致命的な心不全に陥る可能性もある.The American College of Cardiology/the Americn Heart Association(ACC/AHA)の非心臓手術患者の周術期心血管系評価ガイドライン(Guidelines for perioperative cardiovascular evaluation for noncardiac surgery)を中心に,非心臓手術の周術期のリスク判定と対策について論じる. -
I.基礎疾患併存例の手術:3.脳血管障害
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近年,周術期管理は進歩してきているが,一方で高齢者に対する外科手術も増加し,複数の併存疾患や重篤な併存疾患を有する患者に対する外科手術例が増えている.個々の症例に対して併存疾患を十分に把握しておかなければ,手術のリスクを高めてしまうことになる.脳血管障害を併発している患者では,高血圧,糖尿病,心房細動などの危険因子を複数有していることが多い.脳疾患だけにとらわれることなく,全身に注意を向けて小血管・大血管障害の併発を防ぐように周術期管理を行うことが肝要である. -
I.基礎疾患併存例の手術:4.呼吸器疾患─ 慢性閉塞性肺疾患の手術リスクと対策
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慢性閉塞性肺疾患(COPD)は潜在的な場合も多く,手術による生体反応の著しい低下に伴い術後合併症としてさまざまなかたちで出現してくることが多い.日本呼吸器学会の『COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン』(第3 版)によれば,COPD は単独の呼吸器疾患としてのみ理解するのではなく,全身の炎症性疾患としての概念をもつ必要性が示されている.術前・術中・術後をとおしての慎重なマネジメントを常に心がけておくことが最善の方法と思われる. -
I.基礎疾患併存例の手術:5.慢性肝疾患
72巻9号(2010);View Description
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慢性肝炎,肝硬変などの慢性肝疾患患者は門脈圧亢進症に加え,網内系機能の低下が認められ手術リスクが上昇する.さらに肝障害などの宿主防御能が低下した状況では術後の治癒機転が遅延する可能性もある.肝障害患者のmajor surgeryでは術前に肝予備能を的確に評価し,その予備力に応じた術式の選択がきわめて重要である.全身状態,肝機能を十分に把握し,homeostasisを保ち,注意を怠らないことが慢性肝疾患患者の周術期管理には必要である. -
I.基礎疾患併存例の手術:6.腎疾患
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血液浄化療法の発達に伴い,腎機能障害のある患者への消化器外科手術の適応の禁忌はほとんどないといってよい.血液浄化療法の導入されていない腎機能障害を伴う患者では,急性腎不全の予防のため術前腎予備能のチェックと,術中・術後の腎保護を行う必要がある.術中・術後は溢水または脱水となりやすく,電解質異常をきたしやすいため十分モニタリングをして管理を行うことが大切である.また糖尿病や心血管疾患を合併しやすく,術前に評価を行っておくことが重要である.腎臓内科医,麻酔科医との連携も必須である. -
I.基礎疾患併存例の手術:7.自己免疫疾患
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自己免疫疾患の病態は免疫過剰発現であり,病因や治療方法が確立されておらず治療に手術が選択されることも多い.手術に際して注意すべきは標的臓器機能の低下,副腎皮質ホルモンや免疫抑制薬による副腎機能や免疫力低下による易感染性などであり,日和見感染や胸腺,甲状腺クリーゼは致命的である.原疾患の病勢を術前に十分にコントロールし術後にも治療を継続すること,合併症が発生した場合には慎重かつ適切な対処を迅速に行うことが肝要である. -
II.特殊薬剤服用中の手術:1.抗血小板薬・抗凝固薬
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抗血小板薬を中止することが危険な病態は,薬剤溶出性ステント留置後にそれらを投与されている患者である.一方,抗凝固薬を中止することがきわめて危険な病態は,脳梗塞発症のリスクの高い心房細動,人工弁置換,血栓塞栓症の既往などの理由で投与されている患者である.深部静脈血栓症や合併症のない心房細動は,上記の病態に比べれば血栓塞栓症のリスクは低いと考えられる.リスクの高い患者に対して外科大手術を行う場合や,内視鏡において出血の危険度が高い手技を行う場合はこれらの薬剤を中止せざるをえない.また,硬膜外麻酔や脊椎麻酔を行う際にも抗血小板薬を中止する必要がある.リスクの高い患者の抗血栓薬をやむをえず中止する際には適切な代替療法を行う必要がある. -
II.特殊薬剤服用中の手術:2.副腎皮質ホルモン剤─ステロイド投与患者における周術期管理
72巻9号(2010);View Description
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手術侵襲は生体にとって大きなストレスであるため,生体機能を調節する重要なホルモン系である視床下部─下垂体─副腎皮質系が大きく反応する.長期ステロイド投与患者では視床下部─下垂体─副腎皮質系が抑制されているため,侵襲下における急性副腎不全発症の高リスク群である.ステロイドカバーの目的は,このような患者の周術期にグルココルチコイドを追加ないし補充投与することで急性副腎不全を防止し,手術や麻酔に起因する低血圧,ショック,死亡などを回避することであるが,その副作用である創傷治癒遷延と易感染性を念頭におき,患者の全身状態に応じた必要最小限のステロイドを投与する必要がある. -
II.特殊薬剤服用中の手術:3.向精神薬
72巻9号(2010);View Description
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向精神薬服用中患者の周術期管理について述べた.向精神薬は抗精神病薬と抗うつ薬に代表される.最近は精神疾患の悪化を避けるために,術前にこれらの投薬を制限しない傾向である.術後も早期に服薬を再開し,休薬期間を最小限にすることで精神疾患の安定を保つようにする.以前問題とされた突然死を含む術後死亡は実際にはまれとなっているが,原因不明の発熱から発症する悪性症候群には注意が必要である.また術後低血圧や腸管麻痺が遷延する場合は状況により向精神薬の一時的休薬も考慮して対応する.実際に問題となるルート,ドレーン管理は,ナースや家族の協力を得たうえでの対応が必要である. -
II.特殊薬剤服用中の手術:4.免疫抑制薬(副腎皮質ホルモン剤を除いて)
72巻9号(2010);View Description
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免疫抑制薬と外科手術との関連について,現時点で内容のある結論を導くことはむずかしい.しかしながら,多くの研究で免疫抑制薬が術後合併症を増加させるという明らかな証拠はなかった.免疫抑制状態の患者では創傷治癒が遅延する可能性がある一方,関節リウマチ患者ではむしろ,免疫抑制薬を周術期に休止することで疾患の活動性が再燃し,また術後の合併症が増加する可能性もある.Infliximab(IFX)がCrohn病の術後再発の予防に有用である可能性が示唆されるが,これを確認するさらなる研究が必要である.潰瘍性大腸炎ではIFXが術後の合併症を増加させる可能性がある.
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連載
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臨床と研究
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臨床経験
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直腸脱に対するprocedure for prolapse and hemorrhoids(PPH)+Thiersch 法の検討
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症例
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書評
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