外科
Volume 73, Issue 5, 2011
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特集【胆嚢を究める】
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I.基礎:1.胆嚢の発生と解剖
73巻5号(2011);View Description Hide Description胆嚢は,粘膜筋板を欠き,Rokitansky-Aschoff 洞を有するという解剖学的特異性をもった臓器である.肝下面,総肝管,胆嚢管で囲まれたCalot 三角は胆嚢動脈が走行するため,胆嚢摘出術時に注意しなくてはならないポイントであるが,胆嚢管,胆管,肝動脈には走行異常が多いので,損傷回避のため熟知しておくことが肝要である.また,胆嚢奇形も多く,形態異常と位置異常に分類される.形態異常には重複胆嚢,二葉性胆嚢,多房性胆嚢,二房性胆嚢,憩室などがあり,位置異常には肝内胆嚢,左側胆嚢,その他の異所性胆嚢などがある.胆嚢は胎生4 〜7 週に前腸に由来する肝芽より発生し形成されるが,これらの異常はこの期間の胆嚢および胆管の発生異常によると考えられる.発生と解剖を理解することは,胆嚢,胆管の異常を理解し,手術の安全性を増すうえで重要である. -
I.基礎:2.胆嚢の生理学と胆石
73巻5号(2011);View Description Hide Description胆嚢は複雑な神経系と内分泌系の調節によって合理的な運動を繰り返している.胆嚢内に結石が生ずるのは胆汁組成の変化が主因であるが,胆嚢の収縮機能の異常によっても胆石が形成されることがある.胆嚢の機能に関して食後期と近年解明されてきた空腹期における運動について,また胆石の種類とコレステロール結石の成因について述べた. -
I.基礎:3.胆嚢の症候学
73巻5号(2011);View Description Hide Description胆嚢疾患は日常よく遭遇する疾患であり,画像診断の進歩・普及により正確な診断が容易に得られるようになってきた.症状・理学的所見はほかの上腹部疾患と類似しているが,症候学を用いることにより確実に診断に近づくことが可能となる.症候学はベッドサイドで簡単かつ安価に実用でき,初期治療にあたる一般診療医と専門医とのすみやかな連携につながることが期待できる. -
I.基礎:4.胆嚢発癌と病理(合流異常を含む)
73巻5号(2011);View Description Hide Description胆嚢癌の発癌に関連する病変として,胆石症では胆管癌の平坦型前癌病変であるbiliary intraepithelial neoplasia に相当する病変がみられ,ヒストン修飾蛋白EZH2 の発現もあり,癌化関連病変と考えられた.膵管胆管合流異常症では,胆嚢粘膜の乳頭状過形成がびまん性にみられ,細胞老化マーカーであるp16 やp21 の発現があり,細胞老化関連病変であり,癌化に直接関連する病変とは異なると考えられた. -
II.検 査:1.胆嚢の体外式超音波検査
73巻5号(2011);View Description Hide Description従来,体外式超音波検査(腹部US)は胆嚢疾患のファーストチョイスの検査として広く普及してきた.近年ではティシュハーモニック機能が装置に標準装備されることにより画質が向上し,また超音波造影剤の登場も相まって体外式超音波検査の有用性はさらに高まりつつある.本稿では胆嚢の基本走査法に加え正常像およびチェックすべき異常所見の概要を述べ,今後の胆嚢の画像診断では体外式超音波によるB モード診断が基本であることを強調した. -
II.検 査:2.胆嚢の超音波内視鏡検査
73巻5号(2011);View Description Hide Description超音波内視鏡(endoscopic ultrasonography:EUS)は空間分解能に優れ,胆嚢病変の精査には欠かすことのできないmodality である.胆嚢は大きな管腔臓器であり,EUS で胆嚢全体を観察するには多方向からの観察が必要である.また胆嚢管の観察はEUS の使命であり,常に意識して描出するようにする.胆嚢の異常所見として,胆嚢ポリープ,胆嚢腺筋腫症,胆嚢癌の症例を提示する.また胆嚢癌に対する超音波内視鏡下穿刺吸引生検法(endoscopic ultrasonography-guidedfine needle aspiration:EUS─FNA)について,症例を提示しながら紹介する. -
II.検 査:3.胆嚢のCT/MRI
73巻5号(2011);View Description Hide DescriptionMulitdetector-row CT(MDCT)の登場により,薄いスライス厚で広範囲を短時間で撮影可能となった.このことから,multiplanarreformation(MPR)などにより任意の断面で微小な病変を描出することも可能となってきた.またMRI は高組織分解能および高濃度分解能を有していることから,胆嚢疾患においてMR胆管膵管造影(MRCP)などで有用となっている.胆嚢病変の可動性や隆起性病変の性状や深達度などに関しては超音波検査に劣るが,客観的で周囲臓器を同時に評価可能なCT/MRIは胆嚢疾患に必要な検査である. -
II.検 査:4.胆嚢造影法
73巻5号(2011);View Description Hide DescriptionCTやMRI,超音波内視鏡などの画像検査が発達した今日では,胆嚢造影は腫瘍性病変の質的診断を目的とするよりも,もっぱら胆嚢炎に対するドレナージ術の一環として行われている.胆嚢造影法には,胆嚢に直接カニュレーションしてX線造影剤を注入する直接造影と,胆汁排泄性の造影剤を静脈内投与することによる間接造影がある.近年,静注後に胆汁排泄されたindocyanine greenが発する蛍光を利用し,胆嚢を含む肝外胆管の解剖を画像化する方法が開発され,X 線を使用しない簡便な術中胆道造影法として応用されつつある. -
III.手 術:1.最新の腹腔鏡下胆嚢摘出術─高難度手術に対する対策
73巻5号(2011);View Description Hide Description慢性胆嚢炎,胆道走行異常,合併疾患による易出血性などにより腹腔鏡下胆嚢摘出術の手術難易度は大きく左右される.高難度腹腔鏡下胆嚢摘出術におけるさまざまな経験・検討から,安全・確実な手術をめざして術中胆管造影を駆使した胆管ナビゲーション手術,rib-liftingmethod,術前エコーによる腹壁癒着評価などを行ってきた. -
III.手 術:2.単孔式腹腔鏡下胆嚢摘出術
73巻5号(2011);View Description Hide Description臍部の小切開創から腹腔内にアプローチする単孔式腹腔鏡下胆嚢摘出術は日本に導入され,整容性の優越性から患者満足度を充足し急速な広がりをみせている.現在,単孔式腹腔鏡下胆嚢摘出術のアプローチ法は,multi-channel port 法( 専用ポートを留置する方式) とmultitrocar法(臍部切開創からポートを複数挿入する方式)の二つの方法に大別される.われわれの行うmulti-trocar 法の具体的方法と注意点について述べる. -
III.手 術:3.Natural orifice translumenal endoscopic surgery による胆嚢摘出術
73巻5号(2011);View Description Hide Description経胃的natural orifice translumenal endoscopic surgery(NOTES)胆嚢摘出術に関するわれわれの経験や,海外・本邦におけるNOTES 胆摘臨床例の現状,NOTES の侵襲に関する問題などについて概説した.われわれが行ってきた動物実験(経胃的NOTES 胆摘)では,経胃内視鏡の位置どりの困難性,胃壁全層切開部からの胃液流出,胃壁閉鎖の困難性などが問題点として認識されたが,2 本の内視鏡を用いた方法はこれら諸問題を解決しうると考えられた.海外ではすでに3,000例を超すNOTES 臨床例の報告があるが,本邦では依然わずかである.NOTESの合併症発生率は従来の腹腔鏡下手術よりも高いとする報告が多く,また,動物実験レベルでは,NOTES は腹腔鏡下手術と比べて外科的侵襲度が低いという確証は得られていない.単孔式腹腔鏡下手術が台頭してきた現在,NOTES が一般市民権を得るには,今後も内視鏡やデバイスを中心とした多方面の努力が必要である. -
III.手 術:4.胆嚢癌に対する周囲進展度(T 因子)別の至適手術
73巻5号(2011);View Description Hide Description胆嚢癌に対する手術は,壁深達度別より周囲進展度(T 因子)別に規定するのが理解しやすい.T1 は予後良好で腹腔鏡下胆嚢摘出術の適応拡大の可能性がある.T2 に対しては,解剖学的肝S4a + S5 切除と胆管切除の適応と考えるが,肝切除範囲や胆管切除の必要性に関してはいまだ結論が出ていない.T3 以上では肝内進展(Hinf)例には積極的な肝切除が推奨されるが,胆管側進展(Binf)や血管浸潤例に対する拡大手術の適応は慎重に決定されるべきである.
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連載/外科学の古典を読む[第5 回]
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臨床経験
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直腸脱に対する硫酸アルミニウムとタンニン酸を用いた注射硬化剤(ALTA)とThiersch法の併用療法の経験
73巻5号(2011);View Description Hide Description -
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症例
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書評
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