外科
Volume 73, Issue 6, 2011
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特集【消化器手術における抗菌薬の適正使用】
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I.総論:抗菌薬の選択と投与法
73巻6号(2011);View Description Hide Description抗菌薬はpharmacokinetics─pharmacodynamics(PK─PD)を考慮して投与しなければならない.それゆえβ─ラクタム系薬,アミノグリコシド系薬,ニューキノロン系薬などで投与方法は異なる.本稿ではβ─ラクタム系薬,アミノグリコシド系薬,テトラサイクリン系薬,マクロライド系薬,リンコマイシン系薬,ニューキノロン系薬,抗メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)薬,抗真菌薬の特徴および選択と投与方法について概説する. -
II.周術期における抗菌薬の適正使用:1.食道癌,胃癌
73巻6号(2011);View Description Hide Description食道癌,胃癌の周術期に抗菌薬を投与する状況は大きく2 とおりに分かれる.手術部位感染症(surgical site infection:SSI)対策としての予防的抗菌薬投与と感染性合併症の治療のための投与である.予防的抗菌薬投与は,あくまでも術中の細菌曝露に対する感染を,術中をとおして組織中の抗菌薬濃度を維持することにより予防するものである.上部消化管手術では術中曝露される菌はブドウ球菌や連鎖球菌であることが多く,第1 世代のセファロスポリン系薬剤の投与が行われることが多い.一方で治療的抗菌薬投与では,縫合不全や腹腔内膿瘍を含めたSSI 発生時,あるいは肺炎や尿路感染といった遠隔臓器の感染や敗血症などの全身感染時に投与されるものである.特に食道癌手術では術後肺炎や人工呼吸器関連肺炎(ventilator-associated pneumonia:VAP)は致死的合併症となる危険性があり,十分な病態,感染源の把握のもと適切な抗菌薬の投与が望まれる.また,VAP では耐性菌感染の危険性も高く,より慎重な抗菌薬投与をしなくてはならない. -
II.周術期における抗菌薬の適正使用:2.結腸癌,直腸癌
73巻6号(2011);View Description Hide Description大腸癌術後感染予防抗菌薬療法は,最近では経口抗菌薬を術前1日投与し,第2 世代セファマイシン系薬を皮膚切開直前30 分以内と,術後は手術日も含めて1 〜3日間経静脈的に投与することがすすめられている.一方,術後感染発症時の起因菌の70 %は予防抗菌薬に耐性菌である.腹腔内膿瘍ではドレーン排液のGram 染色により抗メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)薬,第3,4 世代セフェム系薬,注射用ニューキノロン系薬などを使い分け,起因菌同定後はすみやかに最適な抗菌薬に変更する.閉鎖腔の重症感染ではカルバペネム系薬の投与を行う. -
II.周術期における抗菌薬の適正使用:3.肝癌,胆道癌,膵癌
73巻6号(2011);View Description Hide Description肝癌,胆道癌,膵癌に対する手術は,概して長時間で出血量も多く,術後耐糖能異常をきたすためsurgical site infection発生の高リスク群である.肝切除・膵切除の術後抗菌薬予防投与に関するランダム化比較試験は少ないが,われわれは肝切除・膵切除ともに,術直前と術中3 〜4 時間ごとの抗菌薬追加投与,さらに術野への抗菌薬局所散布を行い,術後は5 日目まで抗菌薬投与を行っている.今後多施設研究によるガイドラインの作成が必要である. -
II.周術期における抗菌薬の適正使用:4.炎症性腸疾患
73巻6号(2011);View Description Hide Description炎症性腸疾患の重症例や難治例は炎症で全身状態が低下しており,また,ステロイド製剤などの内科治療が行われていることが多く,周術期に日和見感染を生じる場合がある.細菌,ウイルス,真菌,原虫などさまざまな微生物が感染源となりうるため,European Crohn’sand Colitis Organisation(ECCO)からのガイドラインなどを参考にして,適切に診断し治療を行う必要がある. -
II.周術期における抗菌薬の適正使用:5.胆嚢・胆管炎,膵炎
73巻6号(2011);View Description Hide Description急性胆嚢炎・胆管炎,急性膵炎ともに抗菌薬の選択は重症度によって決定される.急性胆囊炎・胆管炎では軽症は第1世代セフェム系,中等症は第2 世代セフェム系や広域ペニシリン製剤,重症では第3,4世代セフェム系を投与する.急性膵炎では,軽症に対する予防的抗菌薬投与の必要はなく,重症ではカルバペネム系を投与する.動注療法,選択的消化管除菌療法は現在オプションとしての位置づけであるが有望な治療法である. -
III.特殊な感染症に対する抗菌薬の適正使用:1.メチシリン耐性黄色ブドウ球菌
73巻6号(2011);View Description Hide Descriptionメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症を発症した場合には抗MRSA 薬を用いて治療を行うことになるが,単なる保菌(定着)は治療の対象とはならない.本邦で使用可能な抗MRSA 薬はvancomycin,teicoplanin,arbekacin,linezolid である.Linezolid 以外は治療薬物モニタリング(TDM)により投与量調整を行う必要がある.抗MRSA 薬治療ではよい治療効果を得るとともに,副作用が少なく,さらに耐性菌をつくらない投与法を実践することが重要である. -
III.特殊な感染症に対する抗菌薬の適正使用:2.多剤耐性Gram 陰性桿菌感染症
73巻6号(2011);View Description Hide DescriptionGram 陰性桿菌感染症は重篤化すると致死率の高いエンドトキシンショックに陥るため,消化器手術の術後感染症としても重要である.第2,第3 世代セフェム系抗菌薬やカルバペネム系抗菌薬によりGram陰性桿菌感染症の頻度は減少したが,多剤耐性緑膿菌(MDRP),基質特異性拡張型β─ラクタマーゼ(ESBL)産生多剤耐性菌などの多剤耐性Gram 陰性桿菌感染症が増加している.多剤耐性Gram 陰性桿菌の多くはβ─ラクタム系薬,カルバペネム系薬,キノロン系薬などに耐性で,抗菌薬療法には限界がある.これらの菌種による感染症に対する抗菌薬療法では早期に起炎菌を同定し,抗菌薬感受性,薬物動態,併用効果を考慮のうえ使用薬を選択することが肝要である.また,場合によっては本邦で市販されていない薬剤(colistin)を個人輸入するなどして入手のうえ使用せざるをえない. -
III.特殊な感染症に対する抗菌薬の適正使用:3.Clostridium difficile
73巻6号(2011);View Description Hide DescriptionClostridium difficileは抗菌薬関連下痢症・腸炎の主要な原因菌である.Clostridium difficile関連性腸炎は,抗生物質投与後の菌交代現象によって感染した毒素産生株Clostridium difficileの増殖により発症する.重篤な基礎疾患を有し長期入院中の高齢者に発生しやすいという特徴がある.また,発症後重篤な経過をたどるおそれがあり,すみやかな対応が必要である. -
III.特殊な感染症に対する抗菌薬の適正使用:4.真菌感染症
73巻6号(2011);View Description Hide Description深在性真菌症に消化器外科領域で遭遇することは比較的まれであるが,治療が遅れると重篤化し,予後不良となるので注意が必要である.確定診断が困難な場合も多いが,特に中心静脈カテーテル留置などのハイリスク患者では,臨床所見や血清β─D グルカン値から早期に抗真菌薬による治療を開始する必要がある.本稿では,主にカンジダ症に対する診断や治療についてわが国および米国のガイドラインを参考に述べる.
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連載/外科学の古典を読む[第6 回]
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論説
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痔核根治術におけるaluminum potassium sulfate andtannic acid(ALTA)療法併用の有用性
73巻6号(2011);View Description Hide Description
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手術の工夫
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臨床経験
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症例
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小腸内視鏡で確認し腹腔鏡補助下に切除した小腸gastrointestinal stromal tumorの1 例
73巻6号(2011);View Description Hide Description -
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書評
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