外科
Volume 73, Issue 9, 2011
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特集【肛門疾患治療の裏技,秘伝,奥義】
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I.診察法:肛門疾患の診察の方法と留意点
73巻9号(2011);View Description Hide Description肛門疾患の大半は,特別な検査を行わなくても,適切な問診や触診などにより正確に診断できるので,正しい知識をもって診療に臨む必要がある.また肛門部は,患者の羞恥心の高い部位であるため,患者の心理にも十分留意しなければならない.なかにはCrohn 病のように,肛門疾患から全身疾患の発見につながる疾患もあるため,少ない情報による先入観にとらわれず,肛門関連疾患の総合的な知識をもって診療にあたることが求められている. -
II.痔核:1.痔核に対する結紮切除術─ aluminum potassium sulfate and tannic acid(ALTA)併用療法
73巻9号(2011);View Description Hide Description外痔核を肛門管内の外痔核,肛門管外の外痔核とに明確に分けて意識し,結紮切除後に肛門縁まで半閉鎖を行い,内痔核部にはaluminum potassium sulfate and tannic acid(ALTA)注射を行う.以上の併用療法は,あらゆる種類,程度の痔核に対応し,かつ創も直腸粘膜に及ばないため晩期出血の危惧も少ない.また創も小さいため術後管理も容易であり,痔核根治手術の,特にday surgeryの際のスタンダード治療の一つとして適している. -
II.痔核:2.痔核に対する古典的結紮療法
73巻9号(2011);View Description Hide Description筆者は,基本的に本間棗軒の『瘍科秘録』に記載されている結紮術に,若干の工夫を加えた痔核に対する分離結紮術を根治術として実施し,良好な成績をおさめてきた.この術式は古典的な非観血療法として伝承されてきたが,手技が簡便で術後の疼痛も少なく,外来手術として十分即応できる方法と考えられた.また,根治性には術者の技術による大きな差がないので普遍的な術式ともいえる. -
II.痔核:3.安全で正確に確実なaluminum potassium sulfate and tannic acid(ALTA)療法を行うために
73巻9号(2011);View Description Hide DescriptionAluminum potassium sulfate and tannic acid(ALTA)療法は近年内痔核硬化療法として登場した痔核治療で,簡便で切除を必要としない低侵襲治療である.ALTA は硫酸アルミニウムカリウムとタンニン酸を主成分とする注射剤で,ALTA 投与により痔核が硬化・退縮し,出血や脱出といった痔核による症状を消失させうる効果を有する.安全で正確に確実なALTA 療法を行うためのポイントとして, 1.Z 式肛門鏡の使用, 2.ALTA 投与直後のマッサージ, 3.無痛化ALTA 液の使用, 4.肛門管内外痔核の見極めをあげる. -
II.痔核:4.Procedure for prolapse and hemorrhoids(PPH)を用いた痔核手術
73巻9号(2011);View Description Hide DescriptionProcedure for prolapse and hemorrhoids(PPH)は,痔核そのものを切除するのではなく,口側の直腸粘膜を環状に切除縫合し肛門クッションを吊り上げ固定する手術法である.適応をしっかり守れば有効な手技であり,痛みも少なく早期退院・早期社会復帰が可能な方法である.しかし,思いもよらない重篤な合併症の報告例もあるため,ほかの内痔核治療にも習熟した術者がPPH の特性と手技を理解し,患者に十分なインフォームド・コンセントを行ったうえで施行するべきである. -
III.痔瘻:1.痔瘻に対する肛門超音波検査
73巻9号(2011);View Description Hide Description現在医療機器の開発・改良により疾患の診断法は著しい進歩を遂げている.しかし肛門疾患の診断については,いまだ視診,指診を頼りとして診断を行っている施設も多い.当院では,肛門専門施設には必要であるとの判断から2003年より肛門疾患の検査法として肛門超音波検査を導入した.以後,肛門疾患,特に痔瘻・肛門周囲膿瘍を中心に700 〜800例/年の頻度で施行しているが,非常に有効で,痔瘻,肛門周囲膿瘍の正診率や手術の治癒率向上に寄与している.現在当院では,肛門超音波検査は痔瘻の診断に際して必須の検査となっている. -
III.痔瘻:2.低位筋間痔瘻に対する括約筋温存術─ coring lay open 法を含めて
73巻9号(2011);View Description Hide Description痔瘻の手術では根治と機能の温存を両立させる必要がある.低位筋間痔瘻においては,症例により適した術式を選択することで,機能や形態を温存した根治手術を容易に行うことができる.当院の低位筋間痔瘻に対する基本術式はlay open 法であるが,瘻管の内外括約筋を通る深さと肛門縁から二次口までの距離により,coring lay open 法やcomplete coring out法を選択する.本稿では,これらの術式の選択基準と手術術式を示す. -
III.痔瘻:3.高位筋間痔瘻に対するseton 法
73巻9号(2011);View Description Hide DescriptionSeton 法は紀元前600 年ごろインドで始まり,kshara sutra が用いられた.西洋ではHippocrates が報告し,中国でも長い歴史がある.Seton 法は化学的な切離と癒合を目的とし,高位筋間痔瘻には手術的ドレナージ形成を加える.成績は60 例中再発6 例(10%)で括約不全の症例はなく,括約筋温存術,seton 法,開放の順で術後の括約筋損傷が小さい.この点を改善すればさらに良好な成績が得られ,その簡便性から大いに利用すべき術式である. -
III.痔瘻:4.坐骨直腸窩痔瘻,骨盤直腸窩痔瘻の治療
73巻9号(2011);View Description Hide Descriptionかつて,坐骨直腸窩痔瘻,骨盤直腸窩痔瘻などの深部痔瘻に対する全面開放術は根治性と引き換えに重い後遺症を残した.部分開放術のHanley 法から低侵襲術式への画期的転機を迎え,各国の肛門専門医が種々の直腸肛門機能温存術式を報告したが,標準術式は確立されていない.外科的手術に各種seton 法を付加した組み合せ手術の実践的工夫で手術成績が向上してきた.深部痔瘻局所解剖と実践的診断法,病型病態に合わせた治療戦略を解説した. -
III.痔瘻:5.再発複雑痔瘻の治療
73巻9号(2011);View Description Hide Description再発複雑痔瘻の肛門は,もともとの複雑痔瘻の変化と前回手術の手術瘢痕としての変化が併存するため,再発原因の把握は決して簡単でない.理学的診断だけでなく補助診断により状態を十分把握し,手術にあたっては肛門機能温存と根治性のため肛門括約筋への侵襲がどの程度まで許容されるのかを熟知していることが肝要である.手術術式は再開通瘻管の開放術が中心となる.長期間かけたtight seton 法や一次的人工肛門造設を考慮する場合もある.痔瘻癌の存在も忘れてはならない. -
IV.裂肛:1.裂肛に対する側方皮下内括約筋切開術
73巻9号(2011);View Description Hide Description裂肛の治療では,その多くが排便コントロールや坐剤・軟膏などの使用による保存的治療で改善をみるが,なかには症状を繰り返す症例や肛門潰瘍形成などの慢性化する症例があり,この場合は外科的処置が必要となる.特に再発を繰り返し機能的肛門狭窄例となった症例で,見張り疣,肛門ポリープなどの付随病変が目立たない症例に対しては側方皮下内括約筋切開術(lateral subcutaneous internal sphincterotomy:LSIS)が適応となる.LSIS は比較的簡単な術式であるが,minor incontinenceや感染の危険性もはらんでおり,処置には十分な熟練が必要である. -
IV.裂肛:2.裂肛に対する皮膚弁移動術
73巻9号(2011);View Description Hide Description裂肛は多くの場合保存的治療で改善するが,慢性化して狭窄をきたした症例では用手拡張や側方皮下括約筋切開術(lateral subcutaneous internal sphincterotomy:LSIS)などの外科的処置の適応となる.なかでも狭窄が高度になると皮膚弁移動術(sliding skingraft:SSG)やYV 型肛門形成術などの肛門形成術が適応となり,手術により症状は著明に改善する.本邦では根治性が高く,合併症の少ないSSG が一般に普及しているが,一部に瘢痕やびらんまた括約不全をきたすことが指摘されており,厳密な適応と正しい手技で行うことが大切である.
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連載/外科学の古典を読む[第9 回]
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臨床経験
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症例
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腸管虚血を合併した急性大動脈解離(DeBakeyIIIb)に対して緊急上腸間膜動脈バイパス術を施行した1 例
73巻9号(2011);View Description Hide Description
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書評
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