外科

Volume 74, Issue 2, 2012
Volumes & issues:
-
特集【肝細胞癌update 2012】
-
-
I.総論:1.肝細胞癌の疫学
74巻2号(2012);View Description
Hide Description
わが国における肝細胞癌(以下,肝癌)の死亡数の増加は,C型慢性肝炎の増加に起因する.近年はウイルス性肝炎患者の減少とアルコール性肝炎および非アルコール性脂肪性肝炎に起因する非B非C型肝癌の増加が顕著である.現在わが国や欧米ではこれら肝癌の背景因子の推移をふまえ,肝癌高リスク群に対するサーベイランスが治療戦略の一環として展開されている -
I.総論:2.肝発癌機構の最新の知見
74巻2号(2012);View Description
Hide Description
C型およびB型慢性肝炎における肝発癌にかかわる因子として,炎症とウイルス自体の働きが想定される.ウイルス肝炎の高頻度かつ多中心性という特徴ある肝発癌は,炎症のみでは説明しがたい.ウイルス因子としては,ウイルスゲノムの組み込み,ウイルス蛋白の働きなどがある.肝炎ウイルスの存在は,多段階発癌のステップを昇らせると考えられる.近年,年齢因子の重要性が認識されている.70歳以上のC型慢性肝炎患者では,肝硬変の有無による肝癌リスク絞り込みは成立しない. -
I.総論:3.肝細胞癌病理診断の最近の話題
74巻2号(2012);View Description
Hide Description
近年,早期肝細胞癌や異型結節に代表される肝細胞癌の初期病変に対する国際的理解がすすみ,これらの疾患概念や用語がおおむね整理されつつある.一方,悪性度の高い肝細胞癌を特徴づける分子がいくつか報告される中で,肝前駆細胞に発現しているサイトケラチン(CK)19 が悪性度の高い肝細胞癌を簡便に検出できる有用なマーカーであることに注目が集まっている.本稿では,改訂されたWHO分類による「早期肝細胞癌と異型結節の病理診断」,最近のトピックスである「CK19 陽性肝細胞癌」について解説する. -
I.総論:4.肝細胞癌取扱い規約とTNM 分類─ 日本と欧米の違い
74巻2号(2012);View Description
Hide Description
肝細胞癌の進行度分類について『原発性肝癌取扱い規約』(第5版補訂版) 1)とthe American Joint Committee on Cancer(AJCC)─Union for International Cancer Control(UICC)のTNM分類(第7版) 2)とを比較した.病期を規定するT因子のカットオフ値は日本2 cm,欧米5 cmと大きく差があり,地域性や根拠となるデータベースの違いに基づくものと考えられた.病期と肝予備能を合わせた統合ステージングは予後判定に有用であり,現在はJapan integrated staging(JIS)スコアが優れている. -
II.診断:1.肝細胞癌の腫瘍マーカー
74巻2号(2012);View Description
Hide Description
現在本邦で臨床使用されている肝細胞癌の腫瘍マーカーはαフェトプロテイン(AFP),AFP─L3,protein induced by vitamin Kabsence or antagonist─Ⅱ(PIVKA─Ⅱ)である.これらの診断能の優劣についての報告の結果はまちまちであるが,これらは相関のない互いに独立したマーカーであることを考えると,3マーカーの同時測定が診断能を上昇させると考えられる.これらのマーカーは脈管侵襲,肝内転移,あるいは低分化肝細胞癌の症例で高値を示すが,いずれかの病理的な因子に対する特異的な代替指標ではない.しかし,術前測定可能な予後予測因子としての役割は大きい.ほかにはGP3,GP73などが肝細胞癌のマーカーとして提唱されている. -
II.診断:2.肝細胞癌の超音波検査法
74巻2号(2012);View Description
Hide Description
超音波検査は低侵襲で簡便であり,肝細胞癌患者において欠かせない検査となっている.通常の超音波検査は肝結節のスクリーニングとして有用であるが,肝結節の鑑別診断としての精度は高いとはいえなかった.しかし第二世代超音波用造影剤Sonazoid の登場は,血流動態評価を可能にし,さらに安定した肝細胞癌スクリーニングも行えるため,超音波検査のブレイクスルーであったといえる.外科医にとって術中超音波は必須であるが,新しい手技である術中造影超音波も有用な武器となる. -
II.診断:3.肝細胞癌のCT,MRI
74巻2号(2012);View Description
Hide Description
多段階発癌の過程で前癌病変および肝細胞癌は多彩な組織所見を示し,画像診断には前癌病変と肝細胞癌の鑑別および分化度の推定が求められる.これまで,血管造影下CT を用いた血流動態解析が肝細胞癌の画像診断におけるゴールドスタンダードとして発展してきた.一方,近年のmultidetector-row CT(MDCT)の普及や高磁場MRIの登場と組織特異性造影剤により,非侵襲的検査法は血管造影下CT に迫る診断能を獲得しつつある.今後は肝特異性造影剤(ガドキセト酸ナトリウム:Gd─EOB─DTPA)による造影MRI (EOB─MRI)が肝細胞癌の画像診断の中核をなすと思われるが,EOB─MRIのみならず,CTや従来のMRIで得られた知見を生かす総合的な診断アルゴリズムを構築していくことが望まれる. -
II.診断:4.肝細胞癌の診断法─ ICG 蛍光法,エラストグラフィ
74巻2号(2012);View Description
Hide Description
肝臓外科領域において術中診断,特に術中超音波はもっとも精度が高く,最後の切除前診断としてなくてはならない検査法である.しかし近年のmultidetector-row CT(MDCT),ethoxybenzy(l EOB)─MRI の進歩により術前診断能も飛躍的に向上しており,術中ならではの新しい診断法が望まれている.本稿では,indocyanine green(ICG)蛍光法,エラストグラフィという二つの新しい手法につき解説する.ICG 蛍光法はテレビモニターを通して観察する過程に新しい付加価値を与え,エラストグラフィは触らない触診法として,どちらもやがてくる鏡視下肝切除術における術中診断の新たな担い手として発展しうるとともに,開腹手術でもより精緻かつ客観的な診断を実現する可能性を秘めている. -
III.治療:1.最新の外科治療
74巻2号(2012);View Description
Hide Description
肝細胞癌(HCC)に対する診療ガイドラインが出版され,外科治療の適応に関しては一般化したと考えられる.しかし,外科治療の方法に関しては日進月歩で,最近では腹腔鏡下あるいは腹腔鏡補助下での肝切除も普及してきた.また,小肝細胞癌に対する肝切除とラジオ波焼灼療法のランダム化比較試験(RCT),コホート試験も開始され,症例が蓄積されているところである.本稿では肝細胞癌に対する外科治療(切除,移植)の最近の進歩につき概説した. -
III.治療:2.最新のラジオ波治療
74巻2号(2012);View Description
Hide Description
経皮的ラジオ波焼灼療法(RFA)が本邦に導入されてから12 年が経過し,現在では肝細胞癌(HCC)局所療法の中心的な役割を占めるようになった.RFA は経皮的エタノール注入療法(PEI)やマイクロ波凝固療法(MCT)と比較して広範囲の壊死効果が得られることがわかってきており,その適応を3 cm,3 個以下とする施設が多い.その中で肝動脈塞栓療法(TACE)併用や狙撃方法の改良などで適応拡大を図る報告が多く認められるようになってきた.一方で,切除との比較・優劣についての見解は得られていない. -
III.治療:3.最新の肝動脈塞栓療法
74巻2号(2012);View Description
Hide Description
以前は肝動脈塞栓療法の効果について否定的意見が多勢であったが,ランダム化比較試験(RCT)によって肝動脈塞栓療法は無治療群と比べて有意に生命予後の延長に寄与したと報告されたことにより,現在では肝動脈塞栓療法は世界中で多発肝癌治療の重要な役割を担っている.一方で,study of heart and renal protection(SHARP)trial によるsorafenibの治療成績はそれまでの進行肝細胞癌の治療のあり方を大きくかえた.肝動注療法も有用であるとする報告はあるものの,sorafenib を対象としてその有用性と安全性を証明するためにsorafenib in combination with low-dose fluorouracil/cisplatin(FP)international infusion chemotherapy(SILIUS)trial が進行中である. -
III.治療:4.最新の分子標的治療
74巻2号(2012);View Description
Hide Description
肝細胞癌は,典型的な血管新生を呈する腫瘍である.2008 年,血管新生に対する分子標的治療薬sorafenibを用いた肝細胞癌の第Ⅲ相ランダム化臨床試験sorafenib hepatocellular carcinoma assessmentrandomized protoco(l SHARP)studyにより,全身化学療法としてはじめて全生存期間への有意性が報告され,わが国でも臨床使用が始まっている.本稿では肝細胞癌における分子標的治療の現状と新しい展開について解説する. -
III.治療:5.肝癌治療ガイドラインについて
74巻2号(2012);View Description
Hide Description
『科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン』はevidencebasedmedicine(EBM)の手法に従って作成され,きわめて簡便なガイドラインである.日本肝臓学会提唱の「コンセンサスに基づく肝癌治療アルゴリズム2010」は,現在本邦で広く行われている治療法を示したものである.欧米の治療アルゴリズムは本邦での日常臨床にそぐわず,あまり用いられていない.現在進行しているsurgery vs. radiofrequencyablation(SURF)trial などによって明確なエビデンスを築き,ガイドラインの内容を改訂していく必要がある.
-
-
連載/外科学の古典を読む[第14 回]
-
-
-
臨床経験
-
-
-
症例
-
-
-
-
Gastrointestinal stromal tumorを合併した腹部食道憩室に対し腹腔鏡下切除を施行した1 例
74巻2号(2012);View Description
Hide Description
-
-