外科

Volume 74, Issue 6, 2012
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特集【最新のヘルニア手術─アプローチから修復まで】
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Ⅰ.鼠径部ヘルニア:1.鼠径部の局所解剖
74巻6号(2012);View Description
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腹壁の構造は,筋層を中心と考えると皮膚側の外筒と腹膜側の内筒を構成する成分は対照的に配列していると考えられ,かつそれらが腹腔全体を包んでいると考えると理解しやすい.これらの層解剖を前方から行う手技手術を想定して,皮膚,皮下筋膜(Camper 筋膜,Scarpa筋膜),無名筋膜,筋層,横筋筋膜,腹膜前筋膜浅葉,腹膜前筋膜深葉,腹膜の順に解説した.それらは同一組織であっても部位により特殊な名称がつけられていることがあるので,局所解剖と層構成を理解できるように解説した.さらに実際の手術時に解剖学的に注意を要する点を強調して解説した. -
Ⅰ.鼠径部ヘルニア:2.鼠径ヘルニア:1) McVay 法
74巻6号(2012);View Description
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McVay 法に関しては,原著・原論文から逸脱して記載された文章が多い.なぜなら,McVay 法が鼠径・大腿部の解剖の解明に従い変遷してきた手術術式であり,そのためMcVayの原著・原論文に用いた用語を現代の解剖学用語に置き換えないと理解がむずかしいからである.さらに,McVay 法が本来は大腿ヘルニアの手術方法ではないからでもある.本稿では,解剖学者であり外科医であるMcVayの鼠径・大腿ヘルニアへのかかわりあいを1940年代からの論文を追求することにより検証する. -
Ⅰ.鼠径部ヘルニア:2.鼠径ヘルニア:2) 腹腔鏡下修復
74巻6号(2012);View Description
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本稿では,腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術を行うにあたって熟知しておくべき鼠径床の解剖や膜構造をまず記述した.本法にはアプローチ法の異なるtransabdominal preperitoneal approach(TAPP)法とtotally extraperitoneal approach(TEP)法の二つがあるので,各々の標準的な手術手技・手順を解説するとともに,再発と合併症の予防対策や今後の展望についても述べた.腹腔鏡下修復術は腹膜前腔の剥離を十分に行うことで併存病変の見落としを防ぎ,適切なメッシュを正しい層に展開・固定することで,再発や合併症のない治療となり,この術式が本来もっている最小侵襲手術というメリットを最大限発揮できる. -
Ⅰ.鼠径部ヘルニア:2.鼠径ヘルニア:3) メッシュを用いた修復:a) 吸収性マイクログリップ付きpolyester meshを用いたLichtenstein法
74巻6号(2012);View Description
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Parietex Progrip(Covidien社)を用いたLichtenstein法を紹介する.Parietex Progrip は,polyester mesh の裏面に吸収性マイクログリップがついた半吸収性メッシュで,セルフグリップ機能によりメッシュの縫合固定は不要である.間接および直接鼠径ヘルニアを修復した後,精管・精巣動静脈とともに,外精巣動静脈と陰部大腿神経陰部枝を鼠径管後壁から遊離し,鼠径管後壁から内腹斜筋前面にParietexProgrip を展開し鼠径管後壁の補強を行う.縫合固定が不要なため,簡便で痛みや違和感の少ないLichtenstein法となることが期待される. -
Ⅰ.鼠径部ヘルニア:2.鼠径ヘルニア:3) メッシュを用いた修復:b) Mesh plug 法
74巻6号(2012);View Description
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本邦において,mesh plug法はもっとも多く行われている術式である.当科での適応と手術手技について解説する.Mesh plug 法においてもっとも重要な点は,内鼠径輪での横筋筋膜の全周切開を確実に行い,プラグを確実に腹膜前腔に挿入することである.また,前方アプローチでは,腸骨下腹神経と腸骨鼠径神経を確実に視認し,温存または結紮切離することが重要である. -
Ⅰ.鼠径部ヘルニア:2.鼠径ヘルニア:3) メッシュを用いた修復:c) Kugel 法
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Kugel 法は腹腔側からヘルニア門にパッチをあてるunderlay法という点で,腹腔鏡下修復法と同じコンセプトに基づいた合理的な手技である.腹腔鏡下手術と併せて学ぶことで解剖の理解が深まり,より安心感のある手術が可能となるであろう.とっつきにくく敬遠されがちであった原法よりも,従来のmesh plug 法と共通する手技の多いダイレクト法をまずはマスターしていただきたい. -
Ⅰ.鼠径部ヘルニア:2.鼠径ヘルニア:3) メッシュを用いた修復:d) Bilayer patch device 法
74巻6号(2012);View Description
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成人の鼠径部ヘルニアの修復術においてbilayer patch deviceは,腹膜前腔からmyopectineal orifice全体を補強し,さらにonlaypatch により内腹斜筋の外側である鼠径管後壁,内鼠径輪を含む外側三角を広く補強する方法である 1, 2).特に腹膜前腔の補強のため,後壁はヘルニア嚢に連続する腹膜と腹膜前筋膜深葉の間を,後壁以外は腹膜前腔である腹膜前筋膜深葉と浅葉の間を剥離しなければならない. -
Ⅰ.鼠径部ヘルニア:3.小児鼠径ヘルニア
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小児外鼠径ヘルニアは,小児外科手術の中で最多を占める疾患であり,治療は発生学的な原因に基づきヘルニア嚢の高位結紮が基本である.筆者らの施設では,Potts法と腹腔鏡手術(laparoscopic percutaneousextraperitoneal closure:LPEC法)を,小児外鼠径ヘルニアに対する標準術式として行っている.Potts法では鼠径管を開放し,ヘルニア嚢の高位結紮とヘルニア嚢の切離を行う.一方,近年急速に広まったLPEC 法では,腹腔鏡観察下にヘルニア嚢の高位結紮のみを行う.それぞれの詳細に解説を加える. -
Ⅰ.鼠径部ヘルニア:4.再発鼠径ヘルニアの臨床
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鼠径ヘルニア根治手術は,合理的術式の探求と再発ゼロをめざした手技の追求の歴史をたどってきている.さまざまなデバイスの開発があり,tension-free 術式の時代となったが,術後再発を克服できていない.当科での再発鼠径ヘルニア例を検討して,再発形式などについて検討した.再発例の手術の難易度は高い.術中の的確な臨床解剖の把握と適切な修復が肝要である.術式やデバイスにより,再発形式には特徴があり,そのピットフォールを理解して,初回の「根治」手術に徹底的にこだわることが,最大の再発防止策となる. -
Ⅰ.鼠径部ヘルニア:5.大腿ヘルニア
74巻6号(2012);View Description
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大腿ヘルニアは鼠径部ヘルニア全体に占める割合は低いが,いったん発症すると嵌頓率が高く,緊急手術を要する可能性の高い疾患である.ヘルニア内容はほとんどが小腸と大網であり,高齢女性に多い.そのため治療の遅れが致命的となりうるため,早期診断・早期治療が必要である.近年の画像診断の進歩で診断は容易となったが,術式についてはメッシュの使用,腹腔鏡下手術の選択,修復術の選択など議論が分かれる.本稿では,大腿ヘルニアの診断,治療について概説する. -
Ⅱ.腹壁ヘルニア:腹壁瘢痕ヘルニア
74巻6号(2012);View Description
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腹壁瘢痕ヘルニアに対するメッシュによる修復術は,癒着に伴ったイレウスなどの合併症が問題である.近年,癒着を少なくするexpanded polytetrafluoroethylene(ePTFE)から構成されるメッシュが開発され,軟らかく丈夫であることから,腹腔鏡下腹壁瘢痕ヘルニア修復術にも使用されるようになった.腹腔鏡手術は,従来の開腹術と比較し術後疼痛および合併症,在院日数といった点で良好であるが,本邦では保険収載がなされていないため,あまり普及していないのが現状である. -
Ⅲ.骨盤部ヘルニア:閉鎖孔ヘルニア
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閉鎖孔ヘルニアは小腸が嵌頓する症例が多く,従来は開腹手術が主流であった.しかし近年早期診断例が増加し,治療が多様化している.術前に用手的あるいはエコーガイドでの腸管還納を安全に行える症例が増え,また手術では腹腔鏡手術や,全身麻酔を用いない鼠径法,大腿法手術などが広まっている.ヘルニア門の補強もメッシュの使用が一般化してきた.それがゆえに,標準的手術は存在せず,自己の技量と施設の設備などに基づいた選択が必要とされる.
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連載/外科学の 古典 を読む[第18回]
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臨床経験
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症例
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二次治療として行ったS─1 + irinotecanhydrochloride hydrate+ bevacizumab 療法で著効を得た直腸癌術後肺転移・大動脈周囲リンパ節転移の1 例
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