外科

Volume 75, Issue 3, 2013
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特集 【局所高度進行直腸癌のすべて】
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- Ⅰ.総論
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1.局所高度進行直腸癌の歴史
75巻3号(2013);View Description
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進行直腸癌の治療においては,局所再発をいかに制御するかが重要である.根治性の確保および機能の維持という困難な課題に対して,欧米における標準治療である術前化学放射線療法(CRT)と本邦における側方郭清の利点を生かしつつ治療をすすめる必要がある.直腸癌でも広く鏡視下手術が用いられるようになり,機能温存手術の普及とともにますます広がりをみせている.このように進行直腸癌の手術治療を中心とした歴史と今後の展開について述べる. -
2.局所進行直腸癌の病理学的諸問題
75巻3号(2013);View Description
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大腸癌の深達度分類では,その症例分布に偏りがあり,特に直腸癌では深達度pA 例の占める割合が高い.近年,固有筋層からの浸潤距離を基準としたpA 癌の亜分類の有用性が指摘されているが,具体的な分類方法は定まっていない.また,直腸固有筋膜が組織学的に同定できず,total mesorectal excision(TME)の完成度や,側方領域への直接浸潤の判定が困難なこと,さらに術前化学放射線療法の効果判定の基準が癌の変性像により規定されており,線維化を主体とする組織像の判定に適さないことも臨床病理学的な問題点としてあげられよう.これらはいずれも予後予測や術後補助療法の選択などに影響する診断項目であり,今後解決のための取り組みが不可欠である. -
3.局所高度進行直腸癌の画像診断
75巻3号(2013);View Description
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局所高度進行直腸癌の画像診断について解説した.診断のポイントとして,肛門機能温存術式適応決定のための肛門側進展範囲の評価,側方リンパ節転移の評価などがあげられるが,なかでも腫瘍の周囲進展の評価が重要であり,剝離面に癌が露出しないようcircumferentialresection margin(CRM)を確保した切除が可能か否か,隣接臓器合併切除が必要か否かなどを評価する.また,術前補助療法の効果判定にも画像検査所見が用いられる.局所高度進行直腸癌の治療方針決定に画像診断は不可欠であり,正確な診断のもと至適な治療を行うことが重要である. -
4.大腸癌治療ガイドラインからみた局所高度進行直腸癌
75巻3号(2013);View Description
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局所高度進行直腸癌に対する大腸癌研究会(JSCCR)ガイドラインの治療方針について,米英のガイドラインを参照しながら概説した.切除可能なSI/AI 直腸癌に対する標準的治療方針は,D3 郭清を伴うR0切除である.直腸進行癌に対する術前化学放射線療法は臨床試験として実施すべきことが推奨されているが,SI/AI 直腸癌を特定した推奨は明示されていない.切除不能例にはdownstaging による切除可能性を考慮した化学放射線療法が推奨されている. - Ⅱ.各論
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1.局所高度進行直腸癌に対する外科治療:a)隣接臓器合併切除を伴う拡大切除
75巻3号(2013);View Description
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下部直腸進行癌では,隣接臓器浸潤を示す症例もときどき存在する.男性では前立腺浸潤の場合が問題となり,従来では骨盤内臓全摘術(TPE)が標準とされてきた.しかし,下部直腸癌の手術と前立腺全摘を組み合わせることにより,TPE の回避は可能と考えられる.そして,尿路および排便路の積極的な再建手術を行うことにより,術後の機能確保とquality of life(QOL)の改善に大きく貢献するものと思われる.このような手術は理論的には可能であるが,現在までに十分なデータは示されなかった.本稿では,本手術法の現状を提示する. -
1.局所高度進行直腸癌に対する外科治療:b)骨盤内臓全摘(仙骨合併)術
75巻3号(2013);View Description
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局所高度進行直腸癌に対する骨盤内臓全摘術(TPE)は膀胱・前立腺への浸潤例が適応であり,肛門括約筋を温存する括約筋温存・骨盤内臓全摘術(SP─PE),仙骨を合併切除するTPE with sacral resection(TPES)も行われる.当施設でのTPE 施行46 例において,手術時間,出血量,合併症率などは比較的良好な結果であり,在院死は認めなかった.また,治癒切除例の5年生存率は64. 4 %(StageⅡ100 %,Stage Ⅲ 59. 4 %)であった.以上より,同術式は高い根治性を有する安全な手術として推奨される. -
2.局所高度進行直腸癌に対する化学療法:a)術前化学放射線療法
75巻3号(2013);View Description
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欧米の進行直腸癌に対する標準治療は,術前化学放射線療法(CRT)または放射線療法(RT)を用いた集学的治療である.その局所再発率は5 〜7 %と低率で,本邦の拡大郭清手術単独療法と比較し同等以上の成績が得られている.当院では2002 年より術前CRT を導入し,予防的側方郭清を省略し,良好な成績を得てきた.本稿では欧米の術前CRT について解説し,本邦におけるCRT の導入に際し問題となる側方郭清の位置づけなど,諸問題について考察する. -
2.局所高度進行直腸癌に対する化学療法:b)放射線照射を併用しない術前化学療法
75巻3号(2013);View Description
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局所高度進行直腸癌に対しては,欧米では術前放射線照射とtotal mesorectal excision(TME)の概念の導入,本邦ではTME および側方リンパ節(LN)郭清を含めた必要十分な拡大手術の施行により,局所コントロールの強化が行われてきた.しかしながら,両アプローチとも局所制御の改善がある程度達成された今日,予後改善のためには遠隔転移の抑制が課題となっている.本邦で最近注目されつつある放射線治療を併用しない術前化学療法は,新規抗癌薬や分子標的薬を用いることにより局所制御の改善が得られるのみならず,遠隔転移の抑制も同時に得られる可能性を秘めた治療選択肢であり,そのコンセプトと治療法の実際を解説する. -
2.局所高度進行直腸癌に対する化学療法:c)切除不能例に対する化学療法
75巻3号(2013);View Description
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直腸周囲には多くの隣接臓器があるため,進行直腸癌では周囲臓器へ直接浸潤をきたし技術的・解剖学的に切除不能となることがある.近年,切除不能進行再発大腸癌に対する化学療法の進歩はめざましいものがあり,無増悪生存期間および全生存期間の延長が期待できるようになってきている.本稿では,切除不能局所進行直腸癌に対する化学療法について,その適応と施行上の留意点,治療法選択の根拠について概説する. -
3.局所高度進行直腸癌に対する放射線治療:a)術中照射
75巻3号(2013);View Description
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術中照射の最大の利点は,正常臓器を照射野からはずすことが可能であることと,20 Gy前後の術中単回照射の治療効果が2 Gy×25回の低線量長期照射のそれとほぼ同等であることである.正常臓器の被る放射線障害を最小限にとどめることができ,また患者の肉体的・経済的負担を軽減することができる.一方,国内外を問わず術中照射設備を有する施設がいまだ少数であること,従来の固定型では手術室から放射線治療部まで患者を搬送する手間がかかることなどが欠点である.進行直腸癌治療における術中照射の意義については,質の高い臨床試験を施行することが必要である. -
3.局所高度進行直腸癌に対する放射線治療:b)直腸癌局所再発に対する重粒子線治療
75巻3号(2013);View Description
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重粒子線は陽子線の優れた線量分布に加えて,より強力な殺細胞効果を有する放射線である.この特性により,癌の周囲にある放射線感受性の高い臓器を避けて腫瘍のみを狙い撃ちにすることが可能であると同時に,従来X 線や陽子線に抵抗性であった癌細胞(腺癌や肉腫など)にも殺細胞効果が高い.当施設では2001年から直腸癌術後局所再発に対する重粒子線治療を開始した.73. 6 GyEで治療した153例では,5年局所制御率92 %,5 年生存率48 %と,外科的治療法に匹敵する成績であった.さらに最近ではスペーサーを用いたり,X 線治療後の再発例に対しても重粒子線治療を施行し,高い安全性と抗腫瘍効果が示されている.
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