外科

Volume 76, Issue 1, 2014
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特集 【消化器外科術後合併症の治療】
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- Ⅰ.総論
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1.術後循環不全の診断と治療
76巻1号(2014);View Description
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術後管理は外科医にとって避けては通れない道である.高齢化に伴い基礎疾患罹患率は増加し,手術の多様化もあってより高度な循環管理が要求される.近年,低侵襲かつ簡便に新しい循環動態をモニタリングすることが可能となった.術後急性循環不全といっても多岐にわたる.今回は術後管理の要点と心機能の評価,術後急性循環不全における一般的な治療を述べる.本稿が読者の実臨床の一助となれば幸いである. -
2.術後呼吸不全の治療
76巻1号(2014);View Description
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術後呼吸器合併症が手術後の死亡率や在院日数を上昇させることが報告されており,その病態について正しく理解する必要がある.肺合併症の高リスク患者をなるべく早く同定し,それらの患者に対して適切な予防策を講じることが重要であり,術後肺合併症が起きた場合はできるだけ早期に発見し,最善の人工呼吸器管理,抗菌療法,栄養管理など集学的治療を施す必要がある. -
3.術後腎不全の治療
76巻1号(2014);View Description
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術後の急性腎不全(acute renal failure:ARF)は呼吸不全や消化管出血,敗血症を合併しやすく,その死亡率は高い.現時点では術後ARF の予防効果が確立されている薬物は存在していないが,術前の腎機能障害,高血圧,心疾患,糖尿病,高齢などは術後急性腎障害の危険因子であり,周術期管理において循環血漿量・腎血流量の減少を避けるなどの輸液管理や腎毒性物質の使用制限などが肝要である.ARFを発症した場合には,高カリウム血症,アシドーシス,肺水腫など致死的な合併症の治療を優先し,早期から血液浄化療法を行うことでARF の救命率が改善する可能性がある.今後,術後急性腎障害を予測する血行動態パラメータの具体的な基準の確立,バイオマーカーの検討や,周術期の腎保護効果が期待できる薬物の研究開発がまたれる. -
4.術後血栓・塞栓症の診断と治療
76巻1号(2014);View Description
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静脈血栓塞栓症(VTE)はすべての診療科で発生し,外科系主治医はその予防,診断,初期治療を的確に行わなければならない.VTEによる死亡率は理学的予防が普及しても高く,抗凝固療法による予防が重要である.一方,VTE の症状は非特異的であることから,まず疑い,造影CTなどの画像検査ですみやかに診断することが重要である.治療ではVTEの重症度と出血リスクの双方を考慮して,抗凝固療法,線溶療法,カテーテル治療,外科的血栓摘除術などを選択する. -
5.術後感染症の診断と治療
76巻1号(2014);View Description
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術後感染症は,手術部位感染症(surgical site infection:SSI)と遠隔感染症(remote infection:RI)に分類される.SSI とは手術操作が直接及ぶ部位の感染症で,術野感染とも呼ばれている.これには,切開創感染と臓器/体腔感染(腹腔内膿瘍)が含まれる.RIとは術野外感染とも呼ばれ,手術操作が直接及ばない部位の感染症で,呼吸器感染症や血管内カテーテル感染,尿路感染症,抗菌薬関連性腸炎が含まれる.欧米では医療費の支払い方法が日本とは異なり,RI は手術代金とは別会計になる.このため,SSIしかサーベイランスの対象になっていない.しかし,日本では外科医がすべての術後感染症を最後まで治療してきた経緯があり,このために多くのことが手術や周術期管理にフィードバックされ,手術関連死亡率も欧米の1/5 〜1/10 ときわめて少ない.日本では,多少エビデンスに欠けるとはいえ承認されている治療は最後まで積極的に治療する姿勢が望まれる. -
6.胃癌術後合併症発生時の栄養管理
76巻1号(2014);View Description
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術後合併症発生時の治療の原則は感染や炎症のコントロールであり,そのためには適切なドレナージと栄養管理が必要である.合併症によって引き起こされた炎症が創傷治癒を遷延させる.創傷治癒における栄養のもつ意義は大きく,当院では腸管を使用した周術期栄養管理により,合併症治療を効果的に行うようにしている.膵液瘻,縫合不全,腹腔内膿瘍,創傷治癒において当院で実際に行っている周術期管理について紹介する. - Ⅱ.各論
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1.食道癌術後合併症の治療
76巻1号(2014);View Description
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食道癌術後の特徴的な合併症として,消化器癌手術に共通する縫合不全以外に,反回神経麻痺,乳び胸,術後肺炎などがあげられる.胃癌や大腸癌と違い,食道癌における吻合部縫合不全あるいは再建臓器の虚血壊死は時に気道瘻を形成し致死的となる場合がある.致死的な合併症にいたらせないためには,正確な情報収集を迅速に行い,個々の症例に対する至適な治療戦略を立てることが重要である.再手術が必要かどうかの決定には,気管支鏡による気管・気管支の炎症波及程度の観察,消化器内視鏡による再建臓器の虚血範囲の観察がもっとも有用である. -
2.胃癌術後合併症の予防と対策
76巻1号(2014);View Description
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胃癌手術後には約20 %の頻度で術後合併症が発生する.特に重篤な合併症として縫合不全,膵液漏,腹腔内膿瘍などがあげられる.合併症を発生させないためには,慎重な手術操作はもちろんのこと,術前からの対策が重要である.一方,術後合併症が発生した場合には迅速な診断,治療により迅速に治癒させることが必要となる.本稿では術後合併症の予防対策ならびに対応について概説する. -
3.大腸癌術後合併症の治療
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大腸癌術後合併症のうちもっともよくみられるものは縫合不全,創感染,イレウスである.縫合不全では適切なドレナージが必須であり,人工肛門造設のタイミングを逃さないことが重要である.創感染は早期発見による創開放により軽症ですむことが多い.術後イレウスは麻痺性で保存的に改善するものが多いが,遷延すると強固な癒着性となるので器質的狭窄では再手術が必要となる.このほか直腸癌術後の排便・排尿障害,ストーマ合併症について述べた. -
4.肝細胞癌肝切除後の合併症対策── 危険因子に関する検討
76巻1号(2014);View Description
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肝細胞癌肝切除後の合併症率は依然高率であり,その発症危険因子の解明が必要である.今回自験例530 例において合計33 項目の臨床病理学的因子で検討を行ったところ,感染性合併症発症の危険因子は手術時間・術中胆汁漏,非感染性合併症の危険因子は血小板数・肝硬変・出血量であった.術中胆汁漏を回避し,特に血小板数が減少している肝硬変例においては,極力出血をきたさぬよう丁寧な肝切離を心がけることが重要と考えられた. -
5.膵切除後合併症の治療
76巻1号(2014);View Description
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術後膵液瘻は膿瘍,後出血をきたし,命にかかわる合併症である.Soft pancreasでは誰でも多少の膵液瘻が生じるものと考え,予防的ドレナージを行う.膵周囲にドレーンをいくつかおき,アミラーゼ低値,きれいなものから抜いていく.またアミラーゼ高値や感染例ではドレーン内の持続洗浄が有効である.後出血例ではまずドレーンを圧迫し,CT 室へ搬送する.仮性動脈瘤などが認められれば,コイル塞栓を試みる.それでも止血できない場合には再手術を行う.
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連載
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臨床経験
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症例
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膵頭部癌術後に腹腔鏡用手補助下脾臓摘出術を施行したsclerosing angiomatoid nodular transformationの1 例
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書評
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