外科

Volume 76, Issue 2, 2014
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特集 【膵切除をめぐる最近の話題】
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- Ⅰ.膵頭十二指腸切除の再建法
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1.膵頭十二指腸切除後の膵再建── 胃膵吻合
76巻2号(2014);View Description
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当施設では,膵断端陥入式膵胃壁マットレス縫合法を用いた胃膵吻合を施行している.本法の特徴は,①膵断端嵌入法であること,②結紮に際しては結紮糸の張力を胃壁で緩衝させ,直接膵実質に剪断力がかからないようにすること,③直針を用いて膵を刺通すること,④膵の刺通は最小限にすることであり,縫合操作による膵実質損傷が最小化された安全な膵吻合法である. -
2.膵頭十二指腸切除後の膵再建── Blumgart変法
76巻2号(2014);View Description
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当教室における膵空腸吻合は,膵管粘膜膵実質─空腸全層縫合に加え,膵実質─空腸漿膜筋層密着縫合としてBlumgart 変法を独自にmodify し,また術中偶発症,手術部位感染を極力避けるべく,細かい手順の工夫・配慮をしている.Blumgart変法は,針穴からの膵液の漏出,結紮による膵裂傷を防止でき,線ではなく面で膵断端を確実にラップさせられることが利点である. -
3.膵頭十二指腸切除後の消化管再建法── antecolicかretrocolicか? PrPDかPPPDか?
76巻2号(2014);View Description
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幽門輪温存膵頭十二指腸切除術(PPPD)の合併症の一つである胃排泄遅延は,食事摂取の遅延やNG チューブの挿入が必要となり,術後患者のquality of life(QOL)を著しく損ねる.そこで当教室では,PPPD術後の胃排泄遅延に関する二つの無作為化比較試験(RCT)を施行した.その結果,胃空腸吻合再建は結腸後よりも結腸前で吻合するほうが胃排泄遅延の頻度は低下し(50 % vs 5 %,p = 0. 0014),幽門輪のみを切除するpylorus-resecting PD(PrPD)のほうがPPPDよりも胃排泄遅延の頻度を低下させることがわかった(4. 5 % vs 17. 2 %,p=0. 0244). -
4.膵頭十二指腸切除後の消化管再建法── Roux-en-Y かBillroth─Ⅱか?
76巻2号(2014);View Description
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膵頭十二指腸切除(PD)は高い術後合併症率を有する高難度手術である.技術と周術期管理の進歩した現在においても依然合併症は高率である.その合併症の一つに,胃排泄遅延(delayed gastric emptying:DGE)がある.DGE の大きな誘因は消化管吻合法であり,現在までさまざまな方法が施行されているが,一定の見解が得られていなかった.われわれは、2008年からRoux-en-Y(R─Y)法とBillroth─Ⅱ(B─Ⅱ)法の前向き試験を実施した.結果は,B─Ⅱ群で5. 7 %,R-Y 群で20. 4 %と,有意にB─Ⅱ群で低い傾向が認められた.特にGrade CはB─Ⅱ群で1例しか発症しなかった. - Ⅱ.膵切離法
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1.最善の膵切離法はあるのか── 臨床試験について
76巻2号(2014);View Description
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膵切離は膵切除を構成する重要な手技の一部である.最近ではさまざまな膵切離法が開発されてきた.ステイプラーによる膵切離は有用であるが,科学的根拠に基づいた評価はなされていない.メタアナリシスによる解析では,ステイプラー膵切離は膵液瘻発生の頻度を減少させる傾向はあるものの,ほかの膵切離に比較し優れているという証明はなされていない.最近ドイツで行われたDISPACT trialの結果では,膵液瘻の発生においてステイプラー膵切離は手縫い閉鎖を凌駕することはできなかった.現時点では理想的な膵切離法はなく,今後の革新的な技術に期待したい.膵液瘻の危険因子をよく理解し,確実なドレナージをおくことが重要である. -
2.デバイスを用いた膵切離法
76巻2号(2014);View Description
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デバイスを用いた膵切離は尾側膵切除術で多くの報告がある.最近は自動縫合器(ステイプラー)の進歩とともにその使用頻度が増加している.手縫い縫合閉鎖との大規模無作為比較試験(DISPACT trial)で,膵瘻発生率に関して有意差を認めなかったため,手技が簡便で切離と断端処理が同時にできるステイプラーは今後さらに汎用されると思われる.その他にも有用あるいは有望なデバイスが報告されている. - Ⅲ.腹腔鏡下膵切除
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1.腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術の適応と実際
76巻2号(2014);View Description
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内視鏡手術が驚異的な進化を遂げながら普及している今日においても,腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術に関しては懐疑的な意見が多く,いまだ開腹手術に遠く及ばないのが現状である.しかし腹腔鏡の拡大視効果や多彩な角度からの視野により,Treitz靱帯アプローチによる上腸間膜動脈の確保(SMA first)や下膵十二指腸動脈の先行処理などは,開腹手術より精緻な手術ができる可能性がある.本稿では腹腔鏡下幽門輪温存膵頭十二指腸切除術におけるSMA first の手術手技を中心に述べる. -
2.腹腔鏡下膵体尾部切除の適応と実際
76巻2号(2014);View Description
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腹腔鏡下膵体尾部切除術(LDP)は保険収載に伴って今後の普及が予想される.その適応はリンパ節郭清を伴わない膵良性または低悪性病変と定められているが,欧米の動向をみると,今後は浸潤性膵管癌を含めた悪性腫瘍にも適応拡大されていく可能性がある.本稿ではLDPの代表的な適応疾患と術式の実際を,脾合併切除,脾温存(SpLDP),Warshaw手術に分けて解説した. - Ⅳ.縮小手術と拡大手術
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1.膵頭十二指腸切除にかわる縮小手術
76巻2号(2014);View Description
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膵頭十二指腸切除術は切除を必要とする膵頭部領域疾患に対する標準術式であるが,低悪性度の腫瘍には,臓器温存を目的とした縮小手術も行われてきた.しかし,縮小手術の短期・長期的成績については不明な点が多い.十二指腸温存膵頭切除術では,十二指腸や胆管を温存できる利点がある反面,術後の十二指腸や胆管の虚血性合併症や膵液瘻に対する対策が問題である.一方,膵頭温存十二指腸切除にはさまざまな変法が報告されている.われわれは十二指腸に限局した消化管間質腫瘍に主乳頭を温存した膵頭温存十二指腸切除を行っており,良好な短期・長期成績が得られた.縮小手術は膵頭部の詳細な解剖を熟知したうえで,安全性と長期予後について十分検討しながら適応していく必要がある. -
2.下膵頭切除の適応と実際
76巻2号(2014);View Description
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下膵頭切除は,十二指腸と胆管を温存して膵頭下部を切除する術式である.この術式の重要なポイントは,前・後下膵十二指腸動脈(AIPDA,PIPDA)の温存と胆管の温存,そして膵管空腸吻合である.主な適応疾患は, 膵頭部の分枝型膵管内乳頭粘液性腫瘍,solidpseudopapillary neoplasm,1 cm以下の神経内分泌腫瘍低悪性腫瘍などの低悪性度腫瘍と慢性膵炎である.術後に膵液瘻の発生頻度が高いので,十分注意が必要である. -
3.膵頭十二指腸切除における前方アプローチによる動脈先行処理
76巻2号(2014);View Description
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膵頭十二指腸切除(PD)ではさまざまなアプローチ,手順が存在する.手術には立体的な解剖の理解が要求される.動脈先行処理は切除の原則であるが,PD の場合,動脈先行処理は標準化されていない.今回,当院で行っている下膵十二指腸動脈(IPDA)先行処理によるPD の手順について解説する. -
4.腹腔動脈合併尾側膵切除におけるR0切除の方法
76巻2号(2014);View Description
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腹腔動脈合併尾側膵切除術(DP─CAR)は従来の術式では切除不能とされる腹腔動脈や総肝動脈,脾動脈根部,あるいはそれらの周囲神経叢に浸潤した局所進行膵体部癌に対し,癌遺残のない(R0)切除を可能にする術式である.その特徴として術野が後腹膜腔の深部にいたり,大動脈周囲や腹腔動脈,上腸間膜動脈(SMA)の根部での操作を必要とする点で従来の膵切除と比較して難度が高い.本術式で確実にR0切除を行うには,三次元的な術野に対応可能な多段階の系統的切除法を行うことが有用であると考えられる.
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