外科

Volume 76, Issue 3, 2014
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特集 【ディベート 炎症性腸疾患の外科治療】
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- Ⅰ.潰瘍性大腸炎に対する外科治療
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1.開腹手術 vs 腹腔鏡補助手術:a)潰瘍性大腸炎に対する外科手術── 開腹手術
76巻3号(2014);View Description
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潰瘍性大腸炎患者数は毎年増加の一途をたどっている.緊急手術では開腹術を選択されることが多い.重症・劇症型,穿孔,中毒性巨大結腸症では,以前のような上中下腹部正中切開による開腹術が選択される.このような症例の場合,術前の全身管理が重要となり,特に穿孔や大量下血などの緊急手術では状況に応じて輸血などを行いながら,すみやかに手術に移行する.適切な術式を選択し,術後の全身や局所管理も怠らないことが重要である. -
1.開腹手術 vs 腹腔鏡補助手術:b)潰瘍性大腸炎に対する外科手術── 腹腔鏡補助手術
76巻3号(2014);View Description
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潰瘍性大腸炎に対する外科治療は,手術に時間を要することなどから腹腔鏡手術に不向きとされた時代があった.Hand-assistedlaparoscopic surgeryは,手術時間やラーニングカーブの短縮が得られるだけでなく,すべてを腹腔鏡下に行う場合と比較して,低侵襲度に差がないことが明らかになっている.うまく活用すれば開腹手術より手術時間の短縮が可能であり,本疾患に対する手術手技として有用な手段と考える. -
2.回腸肛門吻合vs 回腸囊肛門管吻合:a)回腸肛門吻合
76巻3号(2014);View Description
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潰瘍性大腸炎に対して直腸粘膜抜去を合わせて行う回腸肛門吻合(IAA)は,回腸囊肛門管吻合(IACA)と比較して難度が高い手術である.特に吻合にかかる緊張の点で,IAA 施行時には適切な回腸の血管処理が要求される.二つの術式間で術後合併症の発生率や術後排便機能には明確な優劣はないとされる.一方で,残存直腸の炎症や,dysplasia,癌の予防や治療の観点からはIAA が有利である.患者にとって適切な術式を判断し,どちらの術式にも対応可能であることが求められる. -
2.回腸肛門吻合vs 回腸囊肛門管吻合:b)回腸囊肛門管吻合
76巻3号(2014);View Description
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潰瘍性大腸炎に対する回腸囊肛門管吻合術は,肛門管上部のsensory zone を温存して回腸囊を肛門管上縁と器械吻合する方法で,double stapling techniqueを用いれば肛門管内での吻合が可能である.本術式は漏便が少なく,一期手術が可能であり術後quality of life(QOL)も良好であることから,潰瘍性大腸炎合併大腸癌(coliticcancer),再回腸囊肛門吻合術が必要な症例などの回腸囊肛門吻合術の適応例を除いて,幅広い症例に適応があると考えられる.術後は低い頻度であるが肛門管粘膜からの発癌の可能性があることから,定期的な内視鏡検査が必要である. -
3.Pouch の選択── J 型回腸囊vs W 型回腸囊
76巻3号(2014);View Description
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潰瘍性大腸炎(UC)や家族性大腸腺腫症(FAP)に対する大腸全摘,回腸囊肛門(管)吻合術に用いられる回腸囊の形状には,S 型,J 型,W型,H型,K型などが報告されてきたが,排便機能の点ではJ型とW型が良好であるといわれている.W型回腸囊は容量を大きくし排便回数を少なくすることを目的に開発された回腸囊であるが,J型回腸囊との比較試験においてその差は小さく作製にも手間がかかるため,現在多数の施設ではJ 型回腸囊が用いられている. -
4.Diverting ileostomy は必要か
76巻3号(2014);View Description
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潰瘍性大腸炎(UC)に対する手術は二期分割手術が主流ではある.しかし,大腸全摘後のloop ileostomyは,高頻度に排泄障害によるイレウスを生じる.そのためわれわれは,症例を選んで一期的な手術を行ってきた.基本的には待機手術であることと,術中条件としてpouchが十分肛門まで到達し,吻合に緊張がかからないことが条件となる.ただし無理をする必要はなく,全身状態と吻合部の状態を正確に評価し,一期的手術を予定していても条件を満たさなければストーマを造設すべきである. - Ⅱ.Crohn病に対する外科治療
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1.切除吻合法(手縫い吻合vs器械吻合):a)東北大学法
76巻3号(2014);View Description
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Crohn 病は再燃寛解を繰り返す慢性疾患であり,複数回の手術を要することが多く,術後長期経過例では腸管不全(短腸症候群)などの危険が高まる.再発形式としては,吻合部近傍の狭窄が原因となることが多いことが知られており,外科サイドからは,狭窄しづらい吻合法を開発することで,症状再発(symptomatic recurrence)までの期間を延長させることが検討されている. -
1.切除吻合法(手縫い吻合vs器械吻合):b)Kono─S法
76巻3号(2014);View Description
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2003 年に考案された手縫い機能的端々吻合(Kono─S 吻合)は,10年間で国内外で数百例以上行われ,吻合部再狭窄による再手術が起きないという画期的な成績がもたらされている.今日の標準術式である器械吻合による機能的端々吻合に比べると,その手技の特色は,吻合部再発による変形を防ぐ工夫の存在,吻合部の血流や神経再生に配慮した腸間膜切除,大きな吻合口などでの点で,Crohn病腸管における標準的吻合術となる可能性がある. -
1.切除吻合法(手縫い吻合vs器械吻合):c)機能的端々吻合法
76巻3号(2014);View Description
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Crohn 病の腸管病変に対する外科治療では,術後早期合併症予防のための高い安全性と,長期経過における再発・再手術抑制を視野に入れた術式選択が求められる.これらの点から腸管切除後の再建法として,近年自動縫合器を用いた機能的端々吻合が広く行われ,その有用性が期待されている.本稿では,機能的端々吻合の手技の実際について紹介し,その特徴と治療成績および問題点について概説する. -
2.腸切除vs 狭窄形成
76巻3号(2014);View Description
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Crohn病の狭窄病変に対する手術療法には腸切除術と狭窄形成術がある.両術式を比較すると,術後再発率は狭窄形成のほうが高い傾向にあったが,手術部位の再発はむしろ狭窄形成のほうが少ないとの報告がある.また術後早期合併症は両者で同等であった.狭窄形成の術式間では,もっとも頻繁に行われるHeineke─Mikulicz法より,ほかの術式で有意に再発率が低かった.いずれにせよ,エビデンスレベルの高い研究が少ないため,術式間の優劣は今後の検討を要する. -
3.難治性直腸肛門病変に対して── 直腸切断vs減圧ストーマ
76巻3号(2014);View Description
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Crohn病における難治性直腸肛門病変に対する治療はまだ確立されていない.局所治療だけではなかなか改善が得られず,繰り返されるこの病態の愁訴は日常生活におけるquality of life(QOL)の著明な低下を招き,若年者であればなおのこと,直腸切断術を選択するか,それとも減圧ストーマでしのぐか担当医は迷うところである.永久的ストーマか一次的かだけではなく,病変切除か空置か,自律神経損傷か温存か,悪性化へのサーベイランスはどのようにするべきかなど問題は多い.各々の治療方法の長所・短所をあげてディベートした. -
4.肛門病変の治療── seton法vsその他の治療
76巻3号(2014);View Description
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自験例におけるCrohn病肛門病変の長期経過を検証し,もっとも頻度の高い痔瘻膿瘍の管理が重要になることを示した.外科治療としては痔瘻切除術の長期経過は不良で,高率の再発とともに複数回の手術が肛門機能の低下を招くリスクとなっていた.Seton 法ドレナージは症状軽減効果に優れ,肛門機能を保持しながらやり直しのできる外科治療であり,時間は要するが若年者が対象となるCrohn 病の痔瘻膿瘍に適した治療法であると考える.
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