外科

Volume 76, Issue 4, 2014
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特集 【Sentinel node navigation surgery】
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- Ⅰ.総論
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1.センチネルリンパ節生検の現状と今後の展望
76巻4号(2014);View Description
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Mortonらによりセンチネルリンパ節(SN)生検の有用性が報告されてから約20年近く経過した.その間,消化器癌を含むさまざまな分野でSN研究が盛んに行われ,SN生検の多くのエビデンスが確立された.外科腫瘍学は内視鏡外科手術を始め,根治性を損なわず,いかに低侵襲な手術を行うかに注目が集まっており,その中でSN生検のはたす役割は大きいと期待される.今後SN研究は,乳癌や悪性黒色腫以外の癌腫でも保険診療として収載されることをめざす時期にきたと考える. -
2.Sentinel node navigation surgeryにおける限界と課題
76巻4号(2014);View Description
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センチネルリンパ節ナビゲーション手術は,すでに悪性黒色腫や乳癌においては確立された治療となったが,消化器癌においては体腔内の癌であることやリンパ流が複雑であることなど特有の問題があり,いまだ臨床応用にはいたっていない.臨床応用するためには,偽陰性割合が許容できる範囲内におさまることが必要条件である.そのためには適応例の設定(腫瘍長径,深達度,N 因子),手技の標準化,術中迅速診断の精度の向上,術者の熟練度,微小転移の意義など解決すべき課題は多い. -
3.センチネルリンパ節の病理学的探索
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センチネルリンパ節転移の有無は,リンパ節郭清や全身薬物療法の追加などに関する重要な臨床情報である.現在,その転移診断法として凍結標本もしくはformalin固定パラフィン包埋標本による病理組織学的診断法に加え,リンパ節中のサイトケラチン19 mRNA を分子生物学的に増幅・検出し,転移の有無を判定するone-step nucleic acidamplification(OSNA)法が日常診療で使用可能である.各診断法の特徴・限界点を理解し,精度の高い転移診断を行うべきである. -
4.センチネルリンパ節同定法up to date
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早期乳癌におけるセンチネルリンパ節生検は,腋窩の転移診断における標準的手技として定着している.センチネルリンパ節の同定法には,従来の放射性同位元素法やわが国で開発されたindocyaninegreen(ICG)蛍光法などがあり,ともに高い同定率が報告されている.さらに診断機器の進歩や造影剤やトレーサーの開発によって,画像診断によるセンチネルリンパ節の同定も試みられている. - Ⅱ.各論
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1.頭頸部癌におけるsentinel node navigation surgery
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頭頸部癌におけるセンチネルリンパ節(SN)生検は,これまで特に口腔癌において研究がすすめられてきた.これまでの報告では,臨床的偽陰性率は10 %以下とするものが多く,良好な成績が得られている.現在国内においても有用性を検証するための臨床第Ⅲ相試験が進行中であり,試験の結果に大きな期待が寄せられている.一方,咽喉頭癌は近年の内視鏡技術の進歩に伴い,early stageで発見される機会が飛躍的に増加している.表在癌であっても,進達度によって潜在的リンパ節転移のリスクが高くなることが明らかにされており,咽喉頭癌に対してもSN 生検の確立に向けて各施設で研究がすすめられている. -
2.乳癌におけるセンチネルリンパ節生検と腋窩郭清
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腋窩リンパ節転移を伴わない乳癌患者に対して,センチネルリンパ節生検が標準術式として施行されている.センチネルリンパ節生検により転移が認められない場合,腋窩郭清を省略するため,腋窩郭清と比較してリンパ浮腫などの長期後遺症がきわめて少ない一方,偽陰性による局所再発率は1 〜3 %程度認められる.また近年の大規模臨床試験の結果では,転移が最小限の場合,全身治療や放射線療法が加わっていれば,腋窩郭清をした場合と予後に差がないとする報告もあり,腋窩郭清の省略の適応はさらに広がる可能性がある. -
3.肺癌におけるsentinel node navigation surgery
76巻4号(2014);View Description
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これまで肺癌において,sentinel node navigation surgery(SNNS)は必要性があまり認識されず,技術的なむずかしさもあって発展してこなかった.近年注目されている小型肺癌に対する区域切除術において,SNNS は根治性を担保するうえで重要な位置づけとなる可能性がある.また,最近のindocyanine green(ICG)法やCT リンパ管造影は特殊な薬剤を必要とせず,通常行われる手術や検査に10分程度の手間をかけるだけで行うことができる比較的簡便な手技であり,日常診療に取り入れることが容易となった. -
4.食道癌におけるsentinel node navigation surgery
76巻4号(2014);View Description
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食道癌は予後不良の疾患の一つであり,集学的治療が行われている.早期食道癌に対する根治的治療としては,これまで食道亜全摘+3領域リンパ節郭清が推奨されてきた.近年,外科手術の低侵襲化の取り組みが盛んに行われており,その一手法としてsentinel nodenavigation surgery(SNNS)が乳癌,悪性黒色腫をはじめ臨床応用がなされている.本稿では食道癌のSNNSについて,自験例のSNmappingの結果と最近の知見をもとに,現時点の問題点や今後の展望について概説する. -
5.胃癌におけるsentinel node navigation surgery
76巻4号(2014);View Description
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早期胃癌に対するセンチネルリンパ節(SN)理論の検証に関しては,ごく最近SNNS研究会/厚生労働省がん研究助成金研究班による色素・ラジオアイソトープ(RI)併用粘膜下層注入法の多施設共同試験の良好な結果が報告された.これを受けて,早期胃癌に対して術中SNの転移陰性例に対する縮小手術の臨床研究が開始される予定である.今後は内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)適応外例に対して,ESDもしくは胃壁全層切除にリンパ流域切除を組み合わせる術式も考えられる. -
6.大腸癌におけるsentinel node navigation surgery
76巻4号(2014);View Description
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大腸癌に対するセンチネルリンパ節(SN)の臨床学的意義については,多くの研究者によって検討されてきたが,現在のところ進行直腸癌の側方リンパ節に対する個別化縮小手術の有用性を示すエビデンスは乏しく,早期結腸癌に対する術後補助療法適用例の選別に有用と考えられる.最近ではindocyanine green(ICG)蛍光法を利用した新しい技術も報告され,SNの同定率も向上してきている.SN転移診断の個別化治療に向けた応用については,その適応を厳密にしたうえでのさらなる検証が必要であると考える. -
7.婦人科悪性腫瘍におけるsentinel node navigation surgery
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婦人科領域におけるセンチネルリンパ節(SN)生検の妥当性の検証は,外陰癌に始まり子宮頸癌,子宮体癌とすすめられ,外陰癌および子宮頸癌では,早期癌でSN転移陰性例での縮小手術が一部施設で臨床応用され始めている.子宮体癌については,現時点では臨床研究の段階であり,SN生検による縮小手術の導入にはさらなる検証が必要であると考える. -
8.悪性黒色腫におけるsentinel node navigation surgery
76巻4号(2014);View Description
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悪性黒色腫におけるsentinel node navigation surgery(SNNS)は,主にセンチネルリンパ節(SN)生検(SNB)について研究がされてきた.本腫瘍に対するSNBは現在ほぼ標準治療となり,より正確なstaging を可能とし,臨床的所属リンパ節転移のない症例に対して,より合理的な治療が行えるようになった.また,SN 転移は原発巣のthicknessと同様に重要な予後因子であることがわかってきた.欧米とは人種,skin typeが異なり,悪性黒色腫の病型や発生部位に特徴のある本邦におけるSNB の臨床研究は意義あるものと考えられる.最近では多施設共同研究の結果が報告され,また蛍光法は本邦では比較的広く用いられ,世界をリードできる研究がすすめられている.悪性黒色腫に対するSNB の“日本におけるエビデンス”が集積されてきている.
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