外科

Volume 76, Issue 5, 2014
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特集 【超高齢者に対する外科治療の問題点】
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- Ⅰ.総 論
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1.人口動態に基づいた日本医療の未来予測── 高齢多死社会の到来
76巻5号(2014);View Description
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日本医療の将来像を人口動態に基づき検討した.2010 年に比べ2035年の総人口数が12 %減少する一方,総死亡者数は42 %,75歳以上死亡者数は88 %増加し,「高齢多死社会」が到来する.75歳未満総医師数は37 %増加するが,高齢・女性医師の増加寄与分が大きく,外科医師数は22 %,60歳未満男性外科医師数は6 %の増加にとどまる.外科医不足継続が懸念される.需給予測データに基づいた議論と制度設計が急務である. -
2.超高齢者とは── その定義と外科治療の問題点
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超高齢者の身体的・精神的多様性に見合った外科治療という問題は,医学的のみならず社会的な関心となっている.手術に際しては合併疾患に留意し,本人の意思,身体能力,家族の協力などを判断する必要がある.また,術前に本人・家族に対し退院後の生活や介護についても説明が必要である.この問題に対するパターン化した解答はなく,患者・家族との間で個別解を模索していくしかない.本稿では医療者と患者家族の間で合意形成にいたるまでの一般的な問題点について概説する. -
3.認知症患者に対する手術適応と術後せん妄への対処法
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高齢認知症患者においては,認知症を有することのみでは手術適応阻害要素にはならないと考えられる.ただその手術適応には,術後の日常生活機能(ADL)や生活の質(QOL)についても考慮しなければならない.患者を高齢者総合的機能評価(CGA)などの科学的な視点でとらえ,退院後の生活や社会因子も考慮したうえで,患者家族との連携を保ちながら包括的に治療方針決定を行うべきである.高齢者術後せん妄に関しては,睡眠・覚醒リズム是正などの非薬物的介入とともに,術前の認知機能と術前・術後のNEECHAM confusion scale(NEECHAM)を評価して,せん妄を早期発見し,早期からその重症化予防のための薬物介入を開始することが必要である. -
4.超高齢者に対する緊急手術の問題点
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超高齢者に対する手術療法のポイントは,疾患を早期に診断し,本人・家族とよく相談して状態のよいうちに手術へ持ち込むことである.ところが,緊急手術の場合は病状が進行してから来院するケースが多く,すでに重篤な状態で,術前の相談もままならない.また,家族や介護者がおらず,またはいても同じく高齢や認知症で病歴を聴取できない場合もあり,術前の併存疾患が多いにもかかわらず,術前の評価や処置が十分できないまま緊急手術となることが多い.術式の選択では予後とquality of life(QOL)のバランスの考慮が重要であり,術後は特に呼吸器合併症とせん妄に注意が必要である.最終的には在宅や施設など退院後を見据えた管理,ケアが大切となる. -
5.超高齢者に対する腹腔鏡手術の問題点
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高齢化に伴い超高齢者に対する腹部外科手術例も増加している.腹腔鏡手術は低侵襲であり,高齢者においても術後合併症の発生を減少させ,早期に社会復帰できることが多くの疾患で報告され,超高齢者で併存疾患を有する症例にこそ適応されるべき術式と考えられる.しかし,超高齢者では諸臓器の予備能力の個人差が大きく,合併症を生じると重篤化しやすいため,症例ごとに状態を把握し綿密な術前準備,熟練したチームによる定型化された手術操作,慎重な術後管理を行う必要がある. - Ⅱ.各 論
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1.超高齢者に対する弁膜症手術の問題点
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85歳以上超高齢者の外科治療を考察するに際し,心臓血管外科領域の弁膜症治療例を用いて検討を行った.その結果,①高齢者は緊急手術が多く,その手術危険因子である再手術を除いてもその暦年齢に応じた手術死亡率は高い傾向を示し,また,②動脈硬化症による異常高血圧のための出血性合併をきたす症例が認められた.したがって,超高齢者は85歳以上まで生き延びたという優秀個体である事実と,反面,暦年齢相当の臓器,組織劣化が考えられ,その手術成績向上には,高齢者手術に対する一般論と,加えて個々の症例について検討し慎重なる管理を行う必要があると考えられた. -
2.超高齢者に対する食道癌手術の問題点
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高齢化が急速にすすむわが国では,超高齢者への食道癌治療に直面する機会が増加してきている.周術期管理の進歩や低侵襲手術の普及に伴い,超高齢者においても耐術者を選択すると比較的安全に手術を行える.すなわち癌の進行度のみならず,performance statusや併存疾患により食道癌の治療方針を決定することが重要である.また治療計画に基づき,術後合併症や術後のquality of life(QOL)についても十分患者・家族へ説明し,インフォームド・コンセントを得ることは必須である.当施設では手術治療に関しては,年齢にかかわらず腹臥位胸腔鏡手術と腹腔鏡手術を併用している.超高齢者においても,低侵襲な内視鏡外科手術は根治的食道癌治療として有用であると考えられる.また,当教室ではロボット食道癌手術を導入しているが,高齢者においても合併症の低減とそれに伴うQOL の改善の可能性が期待される. -
3.超高齢者に対する胃癌手術の問題点
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1991 〜2011年に当科で行った胃癌手術例において,85歳以上の超高齢群78例と75歳以下の対照群4, 494例との間で,種々の臨床病理学的事項について比較・検討を行った.超高齢者では,周術期合併症や術後経過中の他病死のリスクが高率であること,再発予防や再発時の治療が限定されることが問題点として明らかになった.術前リスクを考慮して適応を判断し,状況に応じて合理的な手術を行うことが肝要である. -
4.超高齢者に対する大腸癌手術の問題点
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超高齢者大腸癌の頻度は増加しているが,患者は種々の臓器の機能低下や合併症,手術既往,認知症などを有していることが多い.超高齢者大腸癌でも根治切除が可能ならば,非高齢者とほぼ同等の予後が得られることも報告されている.術前に十分なリスク評価と機能改善の対応ならびに治療を行い,可能ならばより低侵襲で根治的な治療を施行する.術後にはせん妄や種々の機能低下に注意して術後管理を行う必要がある. -
5.超高齢者に対する胆道手術の問題点
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超高齢者に対する胆道癌手術においては,日常生活動作(ADL)低下を招く術前胆道ドレナージの必要性や手術の過大侵襲などからその適応・治療方針が問題となるが,自験例を含めたこれまでの検討では,非高齢者と同様に安全かつ根治的な肝切除・胆管切除再建が可能であることが示されてきている.ただし,あくまで“適切な患者選択”が前提であり,術前機能評価,基礎疾患の治療状態,患者希望など個々の症例で治療方針を決定することが肝要である. -
6.超高齢者に対する肝・膵手術の問題点
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消化器手術の中でも侵襲度の高い肝膵手術が,近年高齢者さらには80歳以上の超高齢者で増加傾向にある.高齢者手術では,術前全身状態や臓器機能が良好であっても,併存疾患や回復力の遅れによって術後合併症頻度や在院日数ならびに長期のquality of life(QOL)維持への影響が大きく懸念される.肝膵手術における高齢者適応基準が確立していない現状で,客観的なリスク評価が必要である.高齢者における肝膵手術の自験例を検討しその現状と問題点について述べる.
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連載
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臨床と研究
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鼠径ヘルニア根治術後の簡便な創管理を目的とした創部被覆材に関する検討──切開創surgical site infection 発生防止を基軸とした簡便な創管理の実践
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臨床経験
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症例
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腹部MRI 検査およびカプセル内視鏡検査で術前診断しえた小腸gastrointestinal stromal tumorの1 例
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書 評
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