外科

Volume 76, Issue 6, 2014
Volumes & issues:
-
特集 【骨盤臓器脱診断・治療のすべて】
-
- Ⅰ.診 断
-
1.骨盤臓器脱に対する造影検査
76巻6号(2014);View Description
Hide Description
骨盤臓器脱の診断には排便造影検査や骨盤内多臓器造影が利用される.排便機能障害や脱出,腟部違和感などの症状が検査の適応となる.検査は便に近い粘性をもたせたbarium造影剤を疑似便として直腸内に注入して,透視下に直腸からの排泄を観察する.小腸造影を同時に行うと小腸瘤も診断できる.骨盤内多臓器造影の場合は,腟と膀胱も同時に造影することで通常の排便造影では診断できない膀胱瘤や子宮脱,腟脱の診断にも有用である. -
2.骨盤臓器脱に対するダイナミックMRI
76巻6号(2014);View Description
Hide Description
2010 年より直腸脱の病態評価や骨盤底機能異常が疑われる排便障害の患者の診断にダイナミックMRI検査を行ってきた.1回の検査で同時に骨盤臓器脱,排便機能,骨盤底構造について情報が得られる利点は大きい.ダイナミックMRIは,直腸脱の術式の選択や,潜在した高齢者女性の骨盤底機能異常を診断するのに有用であった.今後低侵襲性の本検査が広まっていくことを期待し,実際の方法と症例を報告する. - Ⅱ.治 療
-
1.直腸瘤の手術
76巻6号(2014);View Description
Hide Description
直腸瘤は直腸前壁が腟側に突出した形態異常で,便秘,残便感,肛門痛,脱出,狭窄感などさまざまな症状を認める.直腸指診や排便造影で形態学的異常を診断し,患者の訴えを引き起こす病態を診断,治療することが重要である.治療法は,排便障害に対して薬物療法,食事療法,バイオフィードバック療法,手術方法には,経腟的手術,経肛門的手術,経会陰的手術,経腹的手術などが行われる. -
2.直腸脱に対するALTA 多点法
76巻6号(2014);View Description
Hide Description
直腸脱に対する硬化療法は,安全で簡便なため主に小児で行われてきた.ALTA による組織線維化は,従来の硬化剤より強力かつ長期間持続するため,ALTAを用いた硬化療法(ALTA 多点法)は成人の直腸脱にも効果が期待できる.ALTA の効果で,余剰な直腸粘膜は硬化・短縮するが,肛門が高度に弛緩した症例は再発しやすい.このようなケースには伸縮性ポリエステルテープを用いたThiersch 法の併用が有効である. -
3.直腸脱に対する会陰式肛門管形成手術──内肛門括約筋後方形成手術
76巻6号(2014);View Description
Hide Description
内肛門括約筋後方形成手術は会陰式の手術方法であり,Thiersch法の改良型である.この術式の要点は,弛んだ肛門管の後壁側の内肛門括約筋を肛門管内腔側に粘膜とともに大きく翻転させて,肛門管の内腔を狭くして,かつ肛門管後壁の位置を腹側に偏位させることにある.また,その補強として恥骨直腸筋,浅・外肛門括約筋などを寄せて縫合する. -
4.直腸脱に対するDelorme 手術
76巻6号(2014);View Description
Hide Description
直腸脱はquality of life(QOL)を著しく不良にする疾患である.これに対し,会陰式アプローチのDelorme手術は低侵襲で術後QOL の改善が期待できる.2008 年1月〜2013年10月に済生会千里病院で行った直腸脱の初回手術例37例の中で,Delorme手術は19例あった.再発は5例(26. 3 %)にあったが,低侵襲でかつ従来のGant─三輪/Thiersch 手術よりも術後排便愁訴の改善が期待できる術式であるので,ぜひ習熟しておきたい手技である. -
5.直腸脱に対するAltemeier手術
76巻6号(2014);View Description
Hide Description
Altemeier 手術は,会陰式直腸S 状結腸切除術に前方肛門挙筋形成術を付加した術式で,直腸脱に対する会陰式術式として米国で第一選択となっている.再発率の面では経腹式手術と比べ劣るものの,より低侵襲で合併症の少ない術式であり,肛門挙筋形成術により術後便失禁の改善効果が期待できる.本稿では,本術式を安全に施行するうえでのポイントを示しつつ,手術の流れと周術期管理について概説する. -
6.直腸脱に対する腹腔鏡下縫合直腸固定術
76巻6号(2014);View Description
Hide Description
直腸固定術は,Delorme 法やAltemeier法に代表される経肛門的手技に比べて根治性の高い術式である.再発防止に向けた本手技のポイントは,骨盤底筋まで直腸を十分剝離・授動し,直腸を確実に縫合固定することである.当教室の経験からも本術式は根治性が高く比較的安全に行えると考えるが,多くの併存疾患を有する高齢者に多い患者背景を考えると,治療法の選択は患者の全身状態と病態から総合的に判断すべきである. -
7.骨盤臓器脱に対するtension-free vaginal mesh(TVM)手術
76巻6号(2014);View Description
Hide Description
骨盤臓器脱は,膀胱・子宮・直腸・小腸などが腟口から脱出する疾患である.昔から行われてきた術式としてnative tissue repair があるが,この術式は高い再発率をはじめとして多くの短所があった.これらの短所を克服する術式として,メッシュを用いた経腟手術であるtension-free vaginal mesh(TVM)手術が開発された.TVM手術はわが国で急速に普及し定着したが,最近になって「経腟メッシュ手術は婦人科と泌尿器科の専門医に限定する」という取り決めがなされ,この手術を手がけてきた外科医は先行きがみえない状況におかれてしまっている.
-
連載
-
-
-
臨床と研究
-
-
-
手術手技
-
-
-
症例
-
-