外科

Volume 76, Issue 7, 2014
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特集 【ドレーンは必要か】
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- Ⅰ.総 論
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1.外科手術におけるドレーンの意義── 臨床問題の解決法
76巻7号(2014);View Description
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臨床現場で疑問が生じたら,まず教科書を読んで正解を探し,次に論文を探して臨床研究を調べる.臨床試験は信頼性が高く,系統的レビューは有用であるが,すべてがエビデンスで解決するわけではない.医師の行動基準は,「性格や好み,経験や習慣,エビデンス」であり,臨床現場の意思決定は,「患者の考え,医師の考え,エビデンス」である.「ドレーンは必要か」というような臨床問題は,多角的に評価して総合的に判断しないといけない. -
2.ドレーンの種類と目的別使用法
76巻7号(2014);View Description
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消化器外科領域におけるドレナージは,疾患の周術期管理においてきわめて重要な役割をはたしている.近年,海外からの報告などにより,予防的ドレーンの使用に関して各施設間で差異があると考えられるが,ドレーンの種類とその特性を熟知しドレナージに精通することは,術後管理を行ううえで非常に重要であると考えられる.本稿では,ドレーン管理の総論として基本的なドレーンの種類と分類,その使用法につき概説する.本稿が実臨床の一助となれば幸いである. -
3.手術部位感染からみたドレーン留置の功罪
76巻7号(2014);View Description
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ドレーンを挿入しておくことで患者の術後経過にメリットがあると信じられていた.しかし,ほとんどの無作為化比較試験において,予防的ドレーンはアウトカムに影響していない.ドレーンを長期に留置することでドレーン感染が発生し,医療関連感染としても対策が求められている.サーベイランスの結果を含めてドレーンと手術部位感染(SSI)の関係について解説する. -
4.術後回復強化プログラムからみたドレーン管理
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欧州で提唱され本邦でも浸透しつつあるenhanced recoveryafter surgery(ERAS)〔術後回復強化プログラム〕では,手術患者の早期回復のために17 の主要なelements の遂行を推奨している.そのelements の一つに“ドレーンをルーチンに使用しない”がある.このプログラムは,従来大腸手術を対象としたものであったが,現在はほかの術式にも対象が広がりつつあり,術式ごとにERAS のガイドラインも発表されている. - Ⅱ.各 論
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1.呼吸器外科手術にドレーンは必要か
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胸腔は陰圧の空間で,術後のドレナージは他部位とは異なる.肺切除において肺瘻がある場合は必須の手技である.肺瘻がなく,感染巣手術でない場合,かつ止血が十分な場合,ドレーンは省略できる可能性がある.胸腔鏡下縦隔腫瘍や小児の胸腔鏡手術などでは省略するメリットは大きいと考えられる.ただし,肺は拡張させなければならない.一時的にカテーテルを留置し,閉胸時に肺の加圧を行いつつ気密な状態で抜去する.フィルム閉鎖によるドレーン抜去法は,苦痛のない,外科医以外でも可能な方法であり普及が望まれる. -
2.食道癌手術にドレーンは必要か
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食道癌手術では,頸部・胸部・腹部の3 領域にわたって手術操作が加わるため,それぞれの部位の特徴に応じてドレーン留置を考慮する必要がある.胸部では肺の虚脱を防止し再膨張を促進するために,頸部では皮下の死腔減少による創傷治癒促進のためにドレーンを留置する.一方,腹部では通常の消化器外科手術と同様にルーチンのドレーンは必要ない.いずれの部位においても,ドレーンを留置する場合,閉鎖式のドレーンの使用,短期間での抜去を心がける. -
3.胃癌手術にドレーンは必要か
76巻7号(2014);View Description
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胃癌手術の標準術式であるD2リンパ節郭清を伴う胃切除には,膵周囲の愛護的かつ精緻な術中操作が必要であるが,エネルギーデバイスによる膵実質の損傷がある一定の割合で生じうる.膵液瘻からの重篤な二次的合併症を回避するために,ドレーン性状の丹念な観察と適切な抜去時期を日常臨床で身につけていくことが重要である. -
4.大腸手術にドレーンは必要か
76巻7号(2014);View Description
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大腸手術における術後管理の向上や手術部位感染への関心から,ドレーン留置の考え方も変化してきている.結腸手術では,本邦でも欧米と同様に情報や予防的ドレーンの留置は行わない施設が増加してきている.一方,直腸手術に関しては,解剖学的に深部での操作であることや縫合不全などの合併症の発生が結腸と比べると高いことから,予防的ドレーンは多くの施設で用いられている.ドレーンの留置はその利点と欠点をよく理解し,目的に応じて活用,管理することが肝要である. -
5.肝切除にドレーンは必要か
76巻7号(2014);View Description
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肝切除術後のドレーン留置の是非に関して,海外から報告されているランダム化比較試験でもドレーン留置は不要であると報告されている.しかしわが国においては,大量肝切除,肝硬変例および多臓器合併切除などの高リスクと考えられる症例においては,依然として多数の施設がドレーンを留置しているようである.本稿では,肝切除後ドレーン留置に関する現在のエビデンスを示すとともに,自験例を含めて肝切除後のドレーンの必要性について述べる. -
6.胆道手術にドレーンは必要か
76巻7号(2014);View Description
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胆道手術におけるドレーン挿入の功罪を臨床試験の結果から検討した.膿瘍・穿孔などの合併症がない胆囊摘出術では,開腹・腹腔鏡下ともにドレーンの挿入は創感染,呼吸器感染といった術後の合併症を増やし,それに見合う利点がないとされる.胆道切開や胆管切除・吻合でも同様に,ドレーンの利点が乏しいという結果が得られている.ルーチンワークとして行われがちなドレーンの挿入であるが,evidencebasedmedicine(EBM)に基づき再考すべきである. -
7.膵手術にドレーンは必要か──膵手術における遅発性膵液瘻と腹腔内腸内細菌感染
76巻7号(2014);View Description
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膵手術におけるドレーン管理を中心とした周術期管理について概説した.これまで膵手術後腹腔内感染症の要因として逆行性感染やバイオフィルムの形成が指摘され,ドレーン早期抜去が推奨されてきた.しかし,ハイリスク例の増加と手術手技の高難度化に対応して,遅発性膵液瘻や腸内細菌の腹腔内漏出に注意する必要がある.小腸を強化するとともに,適切なドレーン管理を行うべきである.
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