外科

Volume 76, Issue 9, 2014
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特集 【乳癌に対するoncoplastic surgery】
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Oncoplastic surgery とは
76巻9号(2014);View Description
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1990 年代に根治性と整容性を両立させる乳癌手術の新たな概念として,oncoplastic breast surgery(OPBS)が欧州を中心に登場し世界に広がり,近年,日本にも急速に定着しつつある.本稿では,OPBSの概念および乳癌手術への応用について概説する.2012年の日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会設立,2013 年の人工乳房(シリコンインプラント)の保険適用などが,今後日本におけるOPBS 発展の追い風になるものと思われる. - Ⅰ.Oncoplastic surgeryを考慮した乳癌手術
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1.乳房部分切除
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乳房温存術においては以下の7 項目(①乳房の形状,②乳腺密度,③切除量が乳房に占める割合,④切除部位,⑤乳頭乳輪の対称性の維持,⑥手術創,⑦ volume displacementとvolume replacementの組み合わせ)について考慮し工夫することで,整容性を向上させることができる.すべての乳房に適応できる手技というのではなく,その乳房・患者に合った方法を選択することが重要である. -
2.皮膚温存乳房切除術
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皮膚温存乳房切除術は,同時再建を前提とした術式である.適応は皮膚浸潤を伴わないⅢA期までの乳癌で,腫瘍から乳頭乳輪へ伸びる広範な乳管内進展を認める症例である.術前薬物療法の有無は問わない.再建術は自家組織,シリコンインプラント,エキスパンダーなどさまざまである.いずれにせよ,整容性の高い乳房再建をめざすのであれば,習熟した形成外科医とのチーム医療が望ましい. -
3.乳頭温存乳房切除術の実際と課題
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早期乳癌に対する標準手術は乳房温存手術となっているが,広範な乳管内進展を伴う症例や多発癌例では乳房切除が適応とされる.その際に乳頭乳輪および皮膚に浸潤・進展のない場合には,乳頭温存乳房切除術が適応となる.一次乳房再建が併施されることが多く,その際は高い整容性が得られる.乳房喪失感もなく,患者満足度は高い.一方,問題点として乳頭乳輪部の局所再発や乳頭壊死があげられるが,諸家の報告では許容範囲内とされる.今後,乳房再建術の普及とともに採用される機会が増える可能性がある術式と考えられる. -
4.Oncoplastic breast surgery(OPBS)としての乳癌に対する内視鏡手術
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乳癌に対する内視鏡手術はoncoplastic breast surgery(OPBS)手技の一つと考えられる.両者の適応例は重なり合うものがある.適応診断には画像診断,特に乳房 MR(I MR)は重要な役割をはたす.内視鏡手術開始から18 年経過し,手技は変化してきた.内視鏡手技をOPBS に応用するとともに,OPBSで用いられる手技を内視鏡手術に取り込み,両者は相補いつつ今後も変化をしていくと思われる. - Ⅱ.乳房再建術
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1.自家組織移植による乳房再建:a) 有茎広背筋皮弁による乳房再建
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広背筋皮弁は,乳房温存手術後や乳房の比較的小さい乳房全摘術後の乳房再建患者に適応される.広背筋皮弁は胸背動静脈により栄養され血行が良好である.広背筋採取による筋の脱落症状が重篤ではなく,採取創も目立たない.広背筋皮弁は位置的に乳房欠損部に移動させやすく,前腋窩線の再建も可能である.多くの利点を有しさまざまな形の乳房欠損に利用可能であり,乳房再建におけるたいへん有用な再建材料の一つである. -
1.自家組織移植による乳房再建:b) 遊離皮弁を用いた自家組織移植
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遊離皮弁による乳房再建術の手術の実際について解説した.最初に深下腹壁動脈穿通枝(DIEP)皮弁を含む遊離腹直筋皮弁を用いて,乳房マウンド形成を行う.次に,前回移植した皮弁を修正して対称的な乳房マウンドを形成した後,乳頭乳輪形成を行い,乳房再建を完成する.DIEP皮弁による乳房再建例を供覧し,遊離腹直筋皮弁での乳房再建術の利点と欠点,および患者に説明すべきリスクについても述べた. -
2.インプラントを用いた乳房一次再建術
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2013年7月,乳房再建に用いるtissue expander(TE)と乳房インプラントが保険収載された.これにより,乳房切除術と同時にTE を挿入する一次再建が全国的に可能となり,より根治的で整容的な治療をめざすべく,選択肢として加えられた.これと呼応するように乳腺外科と形成外科が中心となり,日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会が設立され,術式に関するガイドライン,資格医の認定や施設・患者登録などが始まり,全国的な広がりをみせている. -
3.脂肪移植を用いた乳房再建
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脂肪組織は,その内包する幹細胞の効能で,注入移植することにより移植部位の形態,大きさだけでなく,組織の血行や治癒能を改善することができる.複数回の手術とはなるが,適切に行われれば,放射線治療後の虚血組織や人工物の弱点を補い,自家組織ならではの効能があり,乳房再建において欠かせない重要な手法である.一方,適切な手技でなければ脂肪壊死から囊胞形成し,長期的な後遺症となる. - Ⅲ.その他
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1.再建後の乳癌再発の問題
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乳房再建後の局所再発は,癌の予後はもとより,整容性を求めて作製した再建乳房の存続にかかわる大きな問題である.近年増加しつつある再建手術が乳癌患者に貢献するためには,oncologic safetyの維持が重要である.乳房再建は再発リスク増加の直接的な原因ではないが,治療の方針決定や内容に影響を与える可能性がある.その一面を理解し,乳腺外科医は形成外科医と緊密なコミュニケーションをとって,個々の患者に対してより安全性の高い再建を施行しなくてはならない.また,安全性に関する十分な評価と検討が,今後継続して行われることが必要である. -
2.乳癌に対する放射線療法の位置づけ
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Oncoplastic breast surgeryに放射線療法が関与するのは,術後(乳房温存術後や乳房形成術後)の照射,乳房温存療法後(照射後乳房)の変形における再建や再建乳房の局所再発に対する照射である.前者は一般的にoncoplastic surgeryといわれる分野になるが,後者は実臨床において,放射線療法がかかわる諸問題も含んでいる.放射線療法の有害事象である線維化と整容性について十分に考慮したうえで,oncoplastic breast surgeryとのかかわりを検討することが重要である.
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連載
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臨床経験
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手術手技
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症例
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壁在血栓を有する脾動脈瘤に対しtranscatheter arterial embolizationが有効であった1 例
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書評
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