Volume 76,
Issue 13,
2014
-
特集【外科領域のpros and cons】
-
-
Source:
外科 76巻13号, 1545-1549 (2014);
View Description
Hide Description
術前薬物療法は,癌治療の最終目標である生命予後に関しては,術後薬物療法と比較して差はない.Luminal A 乳癌に対する薬物療法の基本は内分泌療法であり,ほかのサブタイプと比較して化学療法の効果が乏しいことが明らかとなっている.また,luminal A 乳癌においては,リンパ節転移陽性の場合であっても化学療法が不要である可能性がある.閉経前,腋窩リンパ節転移陽性,luminal A乳癌の治療としては,術前薬物療法よりもまず手術先行が妥当である.
-
Source:
外科 76巻13号, 1550-1553 (2014);
View Description
Hide Description
手術可能早期乳癌に対する治療戦略は多岐にわたり,外科手術,放射線治療,薬物療法など多くのmodalityを利用する.これらのmodality は相互的に影響を及ぼしながら全体の治療を形成しており,特に術前薬物療法は術式・薬剤選択,そして閉経前患者への早期からのホルモン環境を変化させる治療的介入として役割が大きい.本稿では,腋窩リンパ節転移陽性luminal A 閉経前乳癌患者を想定し,術前薬物療法を実施する立場に立ってその意義を概説する.
-
Source:
外科 76巻13号, 1554-1558 (2014);
View Description
Hide Description
本邦ではこれまで,切除可能な進行食道癌に対して補助化学療法の有効性についての検証がなされ,術前化学療法+手術が標準治療として位置づけられるようになった.近年では,より強力な新規レジメンの開発によって,治療成績のさらなる向上の可能性が期待されている.今後,新規レジメンだけでなく化学放射線療法も含めた集学的治療の確立や治療の個別化に向け,日本発のエビデンスを世界に発信していくことが重要である.
-
Source:
外科 76巻13号, 1559-1564 (2014);
View Description
Hide Description
食道癌は,精緻なリンパ節郭清をもってしても,手術単独療法によるさらなる予後改善は限界と考えられる.現在,切除可能なStageⅡ,Ⅲ胸部食道癌に対して,術前 fluorouraci(l 5─FU)+ cisplatin(CDDP)療法+根治手術が,本邦における標準的治療として位置づけられている.しかし,StageⅢ例に対しては,パワー不足が指摘されており,さらなる強力な補助療法が望まれる.術前化学放射線療法は有望な治療戦略であり,補助療法の候補として期待される.
-
Source:
外科 76巻13号, 1565-1569 (2014);
View Description
Hide Description
噴門側胃切除は,手術手技の煩雑さや逆流性食道炎・残胃癌の問題などにより倦厭される術式の一つである.再建法も種々の報告があるが,術式の統一はなされていない.胃上部早期癌でも術後の逆流性食道炎を危惧するあまり,胃全摘を選択する施設も多い.今回われわれは,術後の逆流性食道炎を回避すべく,逆流防止弁形成腹腔鏡補助下噴門側胃切除を88 例に施行した.手術手技も簡便かつ術後成績も良好で,有用な術式である.
-
Source:
外科 76巻13号, 1570-1574 (2014);
View Description
Hide Description
上部早期胃癌に対する術式として,胃全摘(TG)と噴門側胃切除(PG)が考えられる.PGは再建の困難性,術後の食事摂取や逆流性食道炎が問題となり,適応が議論されている.本稿では,TG とPG に関して腹腔鏡手術を念頭におき,検討と考察を加えた.PG において食道─胃吻合では高度の逆流性食道炎が高頻度に認められ,やはりなんらかの逆流防止機構が必要と考えられた.また,アンケートによるquality of life(QOL)調査においても,PGは期待されるほどの良好なQOLを保持しているとはいえなかった.上部早期胃癌に対して術後短期成績が担保されればTG,PG とも選択肢になりうるが,TGは短期,長期成績で安定したシンプルな術式であった.上部早期胃癌に対する腹腔鏡手術による長期予後やPG 後の残胃癌の発生などは多施設での研究が必要であり,今後の課題である.
-
Source:
外科 76巻13号, 1575-1579 (2014);
View Description
Hide Description
進行直腸癌における根治切除術では,リンパ節郭清としてD3 郭清が求められる.中枢方向におけるD3郭清のためには,#253 の郭清,すなわち下腸間膜動脈(IMA)根部周囲のリンパ節郭清が必要となる.癌細胞を散布することなく,この郭清を遂行するためには,IMA を根部で結紮処理するhigh tieが理想的である.ただし,これまでの報告では血管の切離部位でのみ治療成績を評価していたが,実際の手術では剝離層も重要であり,今後はこの双方について検討する必要がある.
-
Source:
外科 76巻13号, 1580-1583 (2014);
View Description
Hide Description
大腸癌研究会のプロジェクト研究(腹腔鏡下大腸癌研究会)の調査で,左結腸動脈(LCA)温存が非温存より腹腔鏡下直腸(低位)前方切除術の縫合不全率が少ないことが示された.LCA温存D3郭清も多くの施設で行われており,腫瘍学的な問題点も認めない.LCA温存D3郭清を腹腔鏡下で行う際は血管走行に留意することが必要で,その画像所見を示す.直腸癌における上方向至適郭清範囲も含めて,LCA温存について一考すべきであると考える.
-
Source:
外科 76巻13号, 1585-1590 (2014);
View Description
Hide Description
根治性と機能温存の両立を追求した自律神経温存側方郭清術の歴史は30数年に及ぶ.自律神経温存側方郭清は,側方転移(局所再発)リスクの高い下部進行直腸癌に対する局所再発予防のための有効な治療モダリティである.機能と根治を両立する自律神経温存側方郭清における至適リンパ節郭清範囲にはいまだ議論の余地があり,開腹vs腹腔鏡のpros and consを論じるのはまだ時期尚早ではないか.
-
Source:
外科 76巻13号, 1591-1594 (2014);
View Description
Hide Description
直腸癌に対する側方郭清は,ガイドライン上では開腹手術が標準治療となっているが,側方郭清のような狭い骨盤内深部での操作こそ腹腔鏡手術がもっとも得意とするところである.また,骨盤内深部の解剖を鮮明な画像で多くの外科医が共有できるようになり,その教育効果はきわめて大きい.本稿では,当院における腹腔鏡下側方郭清の手技の実際と成績について概説する.
-
Source:
外科 76巻13号, 1595-1599 (2014);
View Description
Hide Description
Liver hanging maneuverは2001 年にBelghitiらに提唱されて以降,世界的に急速に導入・普及した近代肝切除の新技術の一つである.解剖学的知見からも手技の理論的妥当性が証明されている.肝切除における前方アプローチは肝周囲剝離・脱転操作を制限し,創部短縮,リンパ漏軽減,腫瘍の揉み出し予防に利点があり,巨大肝腫瘍や生体移植ドナーでの侵襲軽減などで必要性が求められている.Hanging は手指の入らない狭い空間を挙上でき,通常の脱転操作と考えれば決して特殊な手技ではない.肝腫瘍の占居部位や大きさでhangingを必要とする症例はあり,また解剖学的ランドマークが定められるため,若手肝臓外科医の修練に有用である.
-
Source:
外科 76巻13号, 1600-1603 (2014);
View Description
Hide Description
2001年Belghiti ら 1)により,右肝切除を安全に行うため,肝授動を行わずにアプローチする方法としてliver hanging maneuver(hanging)は報告された.Kokudo ら 2)は,肝移植のドナー手術でhangingを用いることのを有効性を報告しているが,通常の肝切除では施行していない.われわれも同様で,hangingとの2 群間の比較・検討ができないため,下大静脈完全剝離が必須となる尾状葉下大静脈部肝癌と,腫瘍径10 cm 以上の肝細胞癌を抽出して,肝授動と下大静脈剝離を先行した肝切除の安全性と手術成績を示し,文献的考察を加えhanging不要の理由を述べる.
-
Source:
外科 76巻13号, 1604-1607 (2014);
View Description
Hide Description
膵頭十二指腸切除術における膵腸吻合と膵胃吻合の優劣評価として,膵液瘻をはじめとする短期成績の比較は7篇のランダム化比較試験(RCT)を含め多く報告されており,膵胃吻合のほうが膵腸吻合よりも膵液瘻の頻度は低く,短期成績からみると優れていることが示唆された.一方,長期成績を比較した報告はきわめて少なく,今回膵腸吻合を標準術式とする当教室と,膵胃吻合を標準術式とする広島大学の共同研究として,膵頭十二指腸切除術後の残膵機能評価を行った.その結果,膵腸吻合のほうが膵胃吻合よりも残膵機能が良好であった.したがって,長期予後が期待される疾患に対しては,膵腸吻合のほうが膵胃吻合よりも適している可能性がある.
-
Source:
外科 76巻13号, 1608-1611 (2014);
View Description
Hide Description
本邦のNational Clinical Database 8, 575例の解析によると,膵頭十二指腸切除術後の短期成績は全合併症40 %,術死1 %,在院死亡3 %であった.本術式における最重要課題は臨床的膵液瘻対策であり,残膵再建における「膵腸」か「膵胃」か,というテーマは長年にわたり議論されてきた.近年,質の高い臨床試験により術後短期成績における膵胃吻合の優位性が明らかとなってきている.今後は膵内外分泌機能評価,予後などを含む前向き試験による,さらなる長期成績の比較解析が肝要である.
-
Source:
外科 76巻13号, 1612-1616 (2014);
View Description
Hide Description
左葉グラフトによる成人生体肝移植は,右葉グラフト移植に比べてレシピエントにとって不利であることに相違ないが,左葉グラフト移植の最大のメリットは,ドナーの残肝容積が大きくドナーの安全性が高い点である.初期の成績が不良であったため右葉グラフトの使用が一般的となっていたが,最近は左葉グラフトを見直す傾向が認められる.左葉グラフトの選択基準として,グラフト容積標準肝容積比30 %以上,あるいはグラフトレシピエント体重比0. 6 %以上が提唱され,門脈血流量調節として脾摘,門脈下大静脈シャントを併施した,あるいは併施しない左葉グラフトの良好な成績が報告されている.
-
Source:
外科 76巻13号, 1617-1620 (2014);
View Description
Hide Description
生体ドナーの安全性からは,ドナーの残肝が大きい左葉グラフトが望ましいことはいうまでもない.それでは,左葉グラフトを用いることができない場合,移植でしか救命できない患者を目の前にしてどうしたらよいのであろうか? われわれは,①より多くの患者に肝移植の機会を提供可能,②ドナー手術の短期長期成績は左葉グラフトと同等,③レシピエント成績(生存率・合併症)も右葉・左葉で同等の三つの根拠から,右葉グラフトの使用は妥当であると考える.
-
連載
-
-
Source:
外科 76巻13号, 1621-1623 (2014);
View Description
Hide Description
-
臨床経験
-
-
Source:
外科 76巻13号, 1624-1629 (2014);
View Description
Hide Description
-
Source:
外科 76巻13号, 1630-1635 (2014);
View Description
Hide Description
-
症例
-
-
Source:
外科 76巻13号, 1636-1639 (2014);
View Description
Hide Description
-
Source:
外科 76巻13号, 1640-1642 (2014);
View Description
Hide Description
-
Source:
外科 76巻13号, 1643-1648 (2014);
View Description
Hide Description
-
Source:
外科 76巻13号, 1649-1652 (2014);
View Description
Hide Description
-
Source:
外科 76巻13号, 1653-1655 (2014);
View Description
Hide Description
-
Source:
外科 76巻13号, 1656-1659 (2014);
View Description
Hide Description
-
Source:
外科 76巻13号, 1660-1663 (2014);
View Description
Hide Description
-
Source:
外科 76巻13号, 1664-1666 (2014);
View Description
Hide Description
-
書評
-
-
Source:
外科 76巻13号, 1584-1584 (2014);
View Description
Hide Description