外科
Volume 78, Issue 2, 2016
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特集 【肝内胆管癌の新しい規約と治療戦略】
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- Ⅰ.総 論
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1.肝内胆管癌の疫学的動向と危険因子
78巻2号(2016);View Description Hide Description肝内胆管癌は世界的に増加傾向にある.肝内結石症,原発性硬化性胆管炎,膵・胆管合流異常,肝吸虫,B 型肝炎,C 型肝炎が発癌危険因子となる.さらに糖尿病,肥満などの生活習慣病などとの関連も報告されている.印刷労働者に胆管癌が多発した事例をふまえて,最近,職業性胆管癌として労働災害認定され,国際癌研究機関(IARC)において,1, 2- ジクロロプロパンがgroup 1(carcinogenic to humans)に,ジクロロメタンがgroup 2A(probably carcinogenic to humans)に改訂された. -
2.原発性肝癌取扱い規約第6版における肝内胆管癌の新しい進行度分類
78巻2号(2016);View Description Hide Description2015年7月に発刊された原発性肝癌取扱い規約第6版において,肝内胆管癌の進行度分類に改訂が加えられた.すなわちT因子構成項目から漿膜浸潤と静脈浸潤が省かれ,主要胆管浸潤(b3, 4)の有無が新たに加えられた.したがって,①腫瘍数(単発),②腫瘍径(≦ 2 cm),③脈管侵襲(Vp0, Va0, B0 〜2)の3項目の充足数によってT1 〜T4に分類されることになった.また,第5 版ではN1 は一律にStageⅣB であったが,第6版ではT1 〜T3N1M0 は20 %程度の術後5 年生存率が期待できるためStageⅣA に含められた.2009年に改訂された国際対癌連合(UICC)/米国癌合同委員会(AJCC)のTNM分類第7版ではperiductalinvasionがT4と分類されたが,むしろT2bに分類された多発例の予後が不良であるため,少なくとも本邦で切除された肝内胆管癌患者の予後は正しく反映していない.本邦の新規約は腫瘤形成型(MF)+胆管周囲増殖型(PI)の肝内胆管癌の予後がMF型に比較して不良であることを反映したかたちとなったが,胆道癌取扱い規約における肝門部領域胆管癌との住み分けやUICC/AJCCのTNM 分類との調整など,今後解決すべき問題が改めて提示されたと考えられる. -
3.海外における肝内胆管癌ガイドラインとステージ分類
78巻2号(2016);View Description Hide Description肝内胆管癌は比較的まれな癌腫であり,同じ原発性肝癌である肝細胞癌と比較すると診断・治療のエビデンスはいまだ不十分である.近年,国際肝癌研究会(ILCA)が中心となり,大規模な文献検索に基づく肝内胆管癌の診断・治療ガイドラインが発表された.また米国癌合同研究会(AJCC)/国際対癌連合(UICC)TNM 分類においても肝内胆管癌は独立した疾患として扱われ,改訂作業がすすめられている.本稿では海外における肝内胆管癌の扱いに関する動向を概説する. -
4.肝内胆管癌の画像診断──3D cholangiographyとPETを用いた治療開発
78巻2号(2016);View Description Hide Description肝内胆管癌の根治的治療は手術であるが,3D cholangiographyを用いたオールインワン3Dイメージが術式のプランニングに有用である.さらにPET/CT は,術前の転移巣の検索,主腫瘍のFDG の取り込みからの再発予測,リンパ節転移の診断に用いられ,PET 陽性リンパ節を伴う肝内胆管癌の予後は非常に不良であることから,PET 陽性リンパ節を伴う症例に対する術前化学療法の臨床試験が進行中である. -
5.肝内胆管癌の病理診断とその問題点
78巻2号(2016);View Description Hide Description先般,原発性肝癌取扱い規約第6 版が発刊されたが,肝内胆管癌に対する臨床病理学的解釈は第5 版から変更はなかった.一方で,肝門部領域に存在する腫瘍に関しては,2010年世界保健機関(WHO)分類,国際対癌連合(UICC)分類,胆道癌取扱い規約第6版において肝門部領域胆管癌として比較的広い範囲の肝門部領域腫瘍に適用される概念が導入された.したがって,肝内胆管癌の病理診断を行う際の大きな問題点として,肝門部領域の腫瘍に関する対応があがる.本稿では,肝内胆管癌の病理診断における基本事項を整理し,問題点について記載する. - Ⅱ.各 論
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1.腫瘤形成型肝内胆管癌の手術方針と成績
78巻2号(2016);View Description Hide Description当科における腫瘤形成(MF)型(n=54)およびMF+胆管浸潤(PI)型(n = 33)肝内胆管癌の5 年生存率は,それぞれ49. 8 %,22. 6 %と,後者で予後不良の傾向があった(p= 0. 058).多変量解析の結果,独立予後規定因子は,治癒度C,リンパ節転移陽性,多発,血管・胆管侵襲陽性の4因子であった.長期成績の向上には,治癒切除率の向上をめざすほかに,予後不良因子を有する症例に対する周術期化学療法の確立が必要と考える. -
2.胆管浸潤型および胆管内発育型肝内胆管癌の手術方針と成績
78巻2号(2016);View Description Hide Description肝内胆管癌の肉眼型分類は腫瘍の進展様式を反映し,手術成績に影響を与える.胆管浸潤型はGlisson鞘に沿った進展を特徴とし,高率にリンパ節転移を伴い,根治切除として拡大肝葉切除+肝外胆管切除+リンパ節郭清が施行されても予後不良な場合が少なくない.一方,胆管内発育型は周囲組織への浸潤傾向がとぼしく,リンパ節転移の頻度も低いため良好な予後が期待される.いずれの肉眼型においても長期生存を得るためにはR0切除が必須であるが,拡大手術は高率に合併症を伴うため,過不足のない適切な術式選択が求められる. -
3.肝内胆管癌手術におけるリンパ節郭清の意義
78巻2号(2016);View Description Hide Description肝門部付近の腫瘤形成肝内胆管癌,胆管浸潤を伴う肝内胆管癌[腫瘤形成型(MF)+胆管周囲増殖型(PI),PI type]では,拡大肝葉切除+肝外胆管切除が標準術式であり,肝門部胆管癌と同様,予防的リンパ節郭清を行う.一方,末梢型腫瘤形成肝内胆管癌に対し予防的リンパ節郭清を推奨する根拠はない.術前・術中にリンパ節転移陽性,(N1)/stage Ⅳと判明した場合には,リンパ節郭清を行っても予後不良であるが,肝切除を含めた集学的治療が奏効し,長期生存例も認められる. -
4.肝内胆管癌切除後の補助化学療法
78巻2号(2016);View Description Hide Description肝内胆管癌は,唯一の根治治療とされる肝切除を行っても再発率が高く生存率の低い難治癌である.再発してからの有効な化学療法も少ない.したがって肝切除後の補助療法が不可欠である.当施設で行った肝切除後の免疫治療は,再発予防と生存率の改善に有効なことを報告した.近年,肝切除後の化学療法も再発予防や生存率を改善している可能性が示唆された.いずれの補助療法も,予後不良なリンパ節転移例の予後を改善した.補助療法により長期生存したリンパ節転移例は単発肝内胆管癌の所属リンパ節転移であり,新しい規約のStage ⅣA であった. -
5.再発肝内胆管癌の治療
78巻2号(2016);View Description Hide Description肝内胆管癌は予後不良な原発性肝癌である.肝細胞癌に比べ症例数が少ないため,外科切除以外の治療法は確立していない.治癒切除後にも高頻度に再発がみられ,再発部位は肝内,リンパ節転移,肺転移,腹膜播種など多彩で複数の臓器に及ぶ場合も多いため,治療は困難を伴う.本稿では再発病巣に対する外科切除,化学療法,放射線療法,分子標的薬などの現状と成績について最近の文献をもとに紹介する.
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臨床経験
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症例
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直腸癌術後にdistigmine bromideによるコリン作動性クリーゼと中毒性巨大結腸症を併発した1 例
78巻2号(2016);View Description Hide Description -
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書評
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