外科
Volume 78, Issue 3, 2016
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特集 【進行大腸癌に対する内視鏡外科手術の限界】
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- Ⅰ.総 論
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1.進行大腸癌に対する内視鏡外科手術の限界
78巻3号(2016);View Description Hide Description2004年以降,主に海外から大腸癌に対する開腹手術と腹腔鏡下手術を比較した大規模臨床試験が報告されて,短期成績が良好なこと,長期成績が同等であることが示されてきた.こうした結果や手術手技,デバイスの進歩を受け,現在では結腸癌,直腸癌の多くが腹腔鏡下手術で治療されるようになってきている.しかし,腹腔鏡下手術では治療が困難な例も存在している.本稿では,臨床試験を紐解き腹腔鏡下手術の限界について検討する. - Ⅱ.各 論
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1.局所進行右側結腸癌に対する腹腔鏡下手術
78巻3号(2016);View Description Hide Description結腸癌に対する腹腔鏡下手術の割合は年々増加しており,進行癌に対しても広く行われている.海外の臨床試験で短期成績は腹腔鏡で良好であり,長期成績は開腹手術と同等であるという報告が多い.本邦からも進行大腸癌に対する腹腔鏡下手術のエビデンスが発信されつつある.リンパ節郭清範囲は,上腸間膜静脈(SMV)左縁に沿ったD3郭清を標準とする施設が多いが,リンパ節転移が高度な症例に対しては,通常より郭清範囲を広げた手術が要求される. -
2.進行横行結腸癌に対する腹腔鏡手術手技
78巻3号(2016);View Description Hide Description腹腔鏡下大腸癌手術の中で横行結腸癌,特に中結腸血管根部郭清が必要となる進行癌の手技の難易度は高いと考えられている.また,これまでの開腹手術との大規模臨床比較試験においても横行結腸癌は対象外とされ,エビデンスにもとぼしい部位である.しかし,手技を工夫することで腹腔鏡手術特有の内側アプローチからの良好な視野,そして拡大視効果によりこれまでの開腹手術を凌駕する精緻で安全な手術ができると確信する.本稿では進行横行結腸癌,特に中結腸血管根部郭清を伴う腹腔鏡手術手技とポイントを解説する. -
3.局所進行脾彎曲部近傍結腸癌に対する内視鏡外科手術
78巻3号(2016);View Description Hide Description脾彎曲部近傍の結腸癌の手術は,胃結腸間膜や横行結腸間膜の構造・周囲臓器との癒着や剝離,血管の分岐形態の多様性のため,難易度が高い.局所進行癌の場合は,さらに高度のリンパ節転移や癌細胞の漿膜面露出,あるいはbulky腫瘍のため,視野展開や腫瘍のとり回しが困難となり,さらに難易度が上がる.したがって腹腔鏡手術を行う際には,①術前3D─CTAによる支配動脈の同定,②浸潤部位に向けて多方面の非浸潤部からの剝離操作,③拡大視野による正しい剝離層への到達,癌の浸潤範囲の正確な認識などの工夫が必要である.これらの工夫を行い,技術的,腫瘍学的に安全な腹腔鏡手術を実践し,内視鏡外科手術の低侵襲性を最大限に生かすことが重要である. -
4.局所進行左側結腸癌に対する内視鏡外科手術
78巻3号(2016);View Description Hide Description局所進行左側結腸癌に対する腹腔鏡下手術の安全性・妥当性については,十分なエビデンスがない.腹腔鏡下手術の限界に影響する因子として,腫瘍径や局在によって視野展開や手術操作が制限される場合,また隣接臓器浸潤のため正常組織との境界が確認できなかったり合併切除後再建が技術的に困難な場合があげられる.安全にR0手術を行うために,症例ごとに術前評価と術中判断を冷静に行っていくことが重要と考えられる. -
5.局所進行直腸癌に対する内視鏡下手術
78巻3号(2016);View Description Hide Description腹腔鏡下直腸癌切除は,狭い骨盤腔内での剝離操作や腸管の切離・吻合の難易度が高く,さらには自律神経を温存させ根治性と機能温存を両立させなければならない.海外における大規模臨床試験の結果から,短期・長期成績は開腹手術と比較して遜色のない結果となっているが,本邦においては標準術式となっていない.一方,腹腔鏡下手術の最大の利点である拡大視効果によってより精密な手術が可能となり,画像解析の向上やデバイスの進歩によって徐々に普及している.しかし,その難易度ゆえ習得するには多くの症例数を経験する必要があり,技術力の高い指導者のもとで習熟し,より安全で根治性の高い手技を獲得する必要がある. -
6.他臓器合併切除を要する局所進行大腸癌に対する内視鏡外科手術
78巻3号(2016);View Description Hide Description当院における2005 年以降の初発大腸癌の切除例は4, 802 例で,肉眼的他臓器浸潤として合併切除を腹腔鏡下に行ったものは158例であった.これらのうち婦人科系臓器は20 例,尿路系臓器は34 例で,尿路系臓器の内訳は膀胱筋層まで12 例,膀胱全層部分切除12 例,膀胱全摘(骨盤内臓全摘含む)が8 例,尿管が2 例であった.腫瘍辺縁では本来の解剖学的層を越えた剝離層で手術を行い,高画質内視鏡画像のもと腫瘍からの剝離距離を的確に判断する必要がある.病理検索において剝離面はすべて陰性であった.手術時間は,膀胱全摘を必要とする症例は長時間を要したが,出血量はいずれの術式でも少なく,安全に施行可能であった. -
7.肝転移,肺転移,腹膜播種を伴う大腸癌に対する内視鏡外科手術
78巻3号(2016);View Description Hide Description肝転移や腹膜播種を認めるStageⅣ大腸癌に対する腹腔鏡手術は,さまざまな原発巣や転移臓器の状況下での手術となり,原発巣および転移巣を含めた切除可能,不可能の判断を含め,十分な治療経験と腹腔鏡手術の手術手技が求められる.大規模臨床比較試験による検証がむずかしい領域であり,少なくとも腹腔鏡手術の予後改善への寄与は証明されていない.最新のガイドラインや文献による情報の把握と各施設での十分な検討のもと行われる手術である. -
8.再発大腸癌に対する内視鏡外科手術
78巻3号(2016);View Description Hide Description再発大腸癌に対して,慎重な症例選択により腹腔鏡手術が可能となってきた.本稿では再発大腸癌の中でも,結腸癌の吻合部再発と播種再発,直腸癌の局所再発に対する内視鏡外科手術について概説する.初回手術が腹腔鏡手術の場合,再度腹腔鏡手術を考慮するが,手術の難度は高く,再発巣の状態や術者の技量により慎重に導入すべきである.また合併症に対する周術期管理も重要であり,チームでの包括的な対応が必要である.
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