外科
Volume 78, Issue 4, 2016
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特集 【StageⅣ胃癌に対する外科治療戦略】
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- Ⅰ.総論
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1.進行胃癌に対する審査腹腔鏡検査の適応と臨床的意義
78巻4号(2016);View Description Hide Description進行胃癌の転移再発形式として腹膜播種性転移はもっとも頻度が高く,正確な診断が治療方針を決定するうえで重要であることはいうまでもない.しかしCT,PET/CT などの画像診断では診断に限界があり,かなり進行した状態でのみ診断が可能である.近年,腹膜播種の有無を診断するために審査腹腔鏡検査を積極的に行う施設が増えてきている.初診時に根治切除が可能かどうかを診断するため,高度進行胃癌に対し化学療法後のconversion surgeryの適応決定のため,あるいは術後再発を診断するために使用される.本稿では胃癌に対する審査腹腔鏡検査の適応とその臨床的意義についてわれわれのデータを含めて報告するとともに,将来展望についても考察する. -
2.StageⅣ胃癌に対する基本的治療方針(化学療法,コンバージョン手術)
78巻4号(2016);View Description Hide Description非治癒因子が単一の限られた症例(#16a2/b1転移/腹腔洗浄細胞診陽性/少数の肝転移)を除き,stageⅣ胃癌に初回治療として外科治療が選択されることは少ない.一方,化学療法が奏効し,非治癒因子が消失した場合には,コンバージョン手術を行う対象となりうる.化学療法を継続するかコンバージョン手術を行うかは症例ごとに慎重な判断が必要で,手術を選択する場合には新規抗癌薬の特徴も理解したうえで行う必要がある. - Ⅱ.切除可能なStageⅣ胃癌に対する外科治療
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1.腹部大動脈周囲リンパ節転移例に対する外科治療
78巻4号(2016);View Description Hide Description大動脈周囲リンパ節転移を伴う胃癌症例は領域外リンパ節M1─LYM Stage Ⅳとされ,手術単独では予後不良である.大動脈周囲リンパ節転移陽性例と,celiac arteryとその分枝の周りのbulkyなリンパ節腫脹を伴う胃癌症例に対する術前化学療法および拡大リンパ節郭清を伴う胃切除術の臨床試験の結果,少数のリンパ節腫大がNo.16a2, b1に限局して認められ,ほかの非治癒因子を有さない場合,術前化学療法後に大動脈周囲リンパ節郭清を伴う胃切除術が提案されうる.現時点での術前化学療法としては,S─1/cisplatin(CDDP)療法が標準的と考えられる. -
2.CY1のみのStageⅣ胃癌に対する外科治療
78巻4号(2016);View Description Hide DescriptionCY1 のみが非治癒因子であるStage Ⅳ胃癌に対する至適な治療戦略を考察する目的で,CY1胃癌切除例の治療成績について検討した.P1CY1切除例では生存期間中央値(MST)は13. 1 ヵ月,3年生存率0 %であったのに対し,P0CY1 切除例では24. 4 ヵ月,3 年生存率は40 %と有意に良好であった.また,P0CY1に対するR1 切除例では術後S─1投与例が多く,生存に関する多変量解析の結果,化学療法施行の有無が独立した予後因子であった.R1切除,化学療法が施行されたP0CY1症例のMST は26. 3 ヵ月,3年生存率は47. 6 %であった.CY1 以外に非治癒因子を有さない胃癌に対しては,現時点では肉眼的根治切除となる胃切除術に加えてS─1を含む化学療法を行う集学的治療がもっとも治療効果が期待できると考えられる.今後,至適な治療戦略について前向きに検討することが望まれる. -
3.胃癌肝転移の外科治療
78巻4号(2016);View Description Hide Descriptionわれわれは,胃癌肝転移に対する外科治療の適応を,「単発かつN0/N1」としている.それ以外はすべて化学療法を適応する.胃癌肝転移の外科治療適応のボーダーラインと考えられる症例(肝転移個数が少数かつN2までなど)に対しては,化学療法で病勢コントロールが得られた症例[著効(CR)/有効(PR)/安定(SD)]に対して,R0切除が見込める場合は外科治療が適応されうると考えている. -
4.胃癌肺転移の外科治療
78巻4号(2016);View Description Hide Description胃癌の肺転移の形態としては,多発肺転移,癌性リンパ管症,癌性胸膜炎などがあり,一般的に外科切除の適応となる症例はまれである.しかし,転移性肺腫瘍に対する外科治療の適応基準であるThomfordの条件を満たす胃癌の肺転移については,治療的な手術適応となりうる.孤立性肺転移や無再発期間が長い症例では長期生存が得られる症例も存在するため,適応基準を厳格に満たすことが必要である. - Ⅲ.切除不能胃癌に対する外科治療
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1.腹膜播種に対する腹腔内化学療法を伴う外科治療
78巻4号(2016);View Description Hide Description胃癌腹膜転移に対する全身化学療法の効果は不十分で,これまでは手術の対象外と考えられていた.しかし,全身および腹腔内の化学療法と手術を組み合わせ,術後も同じ化学療法を継続する治療戦略により予後の向上が期待できるようになった.近い将来,腹腔内化学療法を含む集学的治療が日常診療でも施行可能になると期待される. -
2.幽門狭窄胃癌に対するバイパス術
78巻4号(2016);View Description Hide Description幽門狭窄部の近位に単純に空腸を吻合する従来の胃空腸バイパス術(conventional gastrojejunostomy:CGJ)では,術後の胃内容停滞により十分な経口摂取が得られないことがある.Partial stomachpartitioning gastrojejunostomy(PSPGJ)は,胃小彎に2 〜3 cmほどの径の孔を残して狭窄部と健常部の間で胃を大彎側から不完全離断を行うことにより,狭窄部への食物の流れを防ぐと同時に完全離断した場合に生じうるblow-out をも防ぐというもので,CGJ に比べ術後の胃内容停滞が少ないことが報告されている.巨大腫瘍により胃の可動性が制限されることが多い悪性幽門狭窄において,腹腔鏡下にPSPGJ を行うのは簡単ではないが,相応の鏡視下手術の技術,経験と,PSPGJ 特有のピットフォールを心得れば安全かつ有用な方法である. -
3.胃癌腹膜播種による腸管狭窄に対する手術
78巻4号(2016);View Description Hide Description臨床現場においてしばしば経験する胃癌腹膜播種に伴う腸管狭窄の急性発症は,経口摂取困難による栄養障害だけでなく,誤嚥性肺炎などによる全身状態悪化を容易に引き起こす.その一方で,腸管狭窄に対する経鼻的減圧処置は,チューブの長期留置による患者の生活の質(QOL)の低下や,術後化学療法の妨げになりやすい.保存的治療が奏効しない場合は緩和手術が原則的に必要となる.しかし症状緩和,QOL改善に加えて,全身状態の早期改善や次期化学療法の迅速な導入実現への期待も多く,正確な術前・術中診断に基づいた適切な術式選択が必要とされる. -
4.出血・狭窄のないStageⅣ胃癌に対する減量手術
78巻4号(2016);View Description Hide Description切除不能胃癌に対する外科治療には,腫瘍量を減らすことで予後の延長をめざす減量手術と症状の改善を主目的とした緩和手術がある.減量胃切除術の意義が日韓共同の前向き臨床試験(REGATTA試験)により明らかにされた.主要評価項目である全生存期間では,化学療法単独に対する減量胃切除術後に化学療法を行う治療の優越性を示すことはできなかった.減量胃切除に伴う合併症はgrade 2以下のものがほとんどで,手術は安全に施行された.化学療法の毒性は,grade 3 以上の好中球減少・低Na血症・食思不振・悪心が減量胃切除群で多かった.この試験の結果から非治癒因子をもつ切除不能StageⅣ胃癌に対し減量胃切除術を行うことは否定され,標準治療は化学療法単独であることが確立された.
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臨床と研究
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臨床経験
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症例
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繰り返す重積により術前inflammatory fibroid polypとの鑑別に苦慮した下行結腸脂肪腫の1 例
78巻4号(2016);View Description Hide Description -
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書評
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