外科
Volume 78, Issue 6, 2016
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特集 【十二指腸乳頭部癌のすべて】
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- Ⅰ.総論・診断
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1.発生母地からみた十二指腸乳頭部腫瘍の治療戦略
78巻6号(2016);View Description Hide Description十二指腸乳頭部は,Oddi 筋に囲まれた部分と定義され,乳頭部胆管,乳頭部膵管,共通管部および大十二指腸乳頭で構成されている.この4部位は二つの異なる粘膜(intestinal mucosa, pancreatobiliary-type ductal mucosa)でおおわれていることから,乳頭部腫瘍には二つの腫瘍発生母地が存在する.発生母地を同定・分類する方法として組織形態学的分類法と免疫組織学的分類法があるが,いずれの分類においてもintestinal typeの乳頭部癌(ampullary carcinoma:AC)はリンパ節転移が少なく,もっとも予後が良好である.治療方針として,intestinal type の上皮内癌(T1a)は乳頭切除術などの縮小手術が考慮されるが,それ以外のAC は膵頭十二指腸切除術が標準治療となる. -
2.十二指腸乳頭部癌の胆道癌取扱い規約における位置づけと問題点
78巻6号(2016);View Description Hide Description現行の胆道癌取扱い規約第6 版では,国際対癌連合(UICC)/ 対癌米国合同委員会(AJCC)staging system との整合性を保つために大きな改訂が行われたが,乳頭部の解剖学的範囲を明記している点,T1,T3 に細分類を設けた点などに前規約からの継続性が認められる.発刊から2年が経過し,検証作業が今後必要であるが,最近公表されたわが国の胆道癌登録のデータからはその有用性および妥当性が示されている.T 因子の細分類の必要性,N 因子のもつインパクトの検証,N因子の細分類の必要性など,わが国のデータ解析のみならず,欧米のデータを用いたvalidation studyを行って,新規約のあり方について発信していくことが求められている. -
3.十二指腸乳頭部腫瘍の画像診断── CT・MRI・FDG─PET/CTの見方
78巻6号(2016);View Description Hide Description乳頭部癌は,その発生部位の特徴から腫瘤が小さいうちに閉塞性黄疸を発症することが多い.CT,MRI においては乳頭部の原発巣は腫瘤として同定できることもあれば,むずかしいこともある.腫瘤描出の有無にかかわらず原因不明の胆管膵管拡張をみた場合には乳頭部癌の存在を疑うべきであるが,結石などの良性疾患で類似の画像所見を呈することもあるため慎重な画像解釈が必要となる.CT,MRI,FDG─PET では原発巣の診断には限界があることも知りつつ,診療方針に有用な所見を読み出してゆく必要がある. -
4.十二指腸乳頭部腫瘍の内視鏡診断・超音波内視鏡診断
78巻6号(2016);View Description Hide Description乳頭部腫瘍の内視鏡検査は,内視鏡的乳頭切除の普及に伴い,その適応を検討するために有用な検査である.乳頭部腫瘍を疑って検査を行う場合は,側視鏡による通常観察が重要である.生検は推奨されるが,生検と最終診断が一致しない場合もあり,乳頭切開や穿刺吸引細胞診(FNA)などが有用である.管腔内超音波(IDUS)や超音波内視鏡(EUS)は筋層や胆膵管への浸潤,進展を診断するうえで有用である. - Ⅱ.治療・手術
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1.十二指腸乳頭部腫瘍に対する内視鏡的治療の適応と成績
78巻6号(2016);View Description Hide Description近年,内視鏡診断の進歩により,十二指腸乳頭部腫瘍の発見機会が増えている.腺腫に対する完全生検および根治を目的とした内視鏡的乳頭切除術は施行されている.癌に対する基本治療は外科的手術であるが,近年早期癌に対する内視鏡的乳頭切除術の報告も増えている.しかし術前の早期癌の診断が完全ではなく,術後局所再発の問題などもあり早期癌に対する内視鏡的乳頭切除術は慎重に検討する必要がある. -
2.十二指腸乳頭部腫瘍に対する経十二指腸的乳頭部局所切除の実際と成績
78巻6号(2016);View Description Hide Description十二指腸乳頭部腫瘍に対する経十二指腸的乳頭部局所切除術(経十二指腸的乳頭切除術)は,リンパ節転移や周囲進展のない乳頭部腫瘍(腺腫や腺腫内癌)が対象である.近年内視鏡的切除も行われているが,経十二指腸的乳頭切除術は,胆管と膵菅断端の迅速病理診断が可能であること,重篤な合併症の危険性が少ないなどの点で優れている.ポイントは十二指腸の切開部位の把握と,乳頭部周囲粘膜の支持糸による適切な牽引で,良好な視野と組織の適度な緊張を得ることである. -
3.十二指腸乳頭部癌に対する膵頭十二指腸切除とその成績
78巻6号(2016);View Description Hide Description十二指腸乳頭部癌は根治切除が可能な段階で発見されることが多く,膵頭部領域癌の中では比較的予後が良好な疾患である.治療法は外科治療の重要性が高く,基本術式は膵頭十二指腸切除術となる.十二指腸乳頭部癌はリンパ節転移を高頻度にきたし,非硬化膵で胆道感染を伴うことが多く,術後感染性合併症も多い.その特性や進展形式を理解したうえで手術を行うことが,この疾患の治療における重要なポイントである. -
4.乳頭部癌に対する膵頭十二指腸切除におけるリンパ節郭清と神経叢郭清のポイント
78巻6号(2016);View Description Hide Description乳頭部癌は膵頭部領域癌の中でも比較的予後良好の疾患ではあるが,リンパ節転移率は必ずしも低くはない.乳頭部癌では上腸間膜動脈(SMA)周囲リンパ節に転移を認めても長期生存する症例が報告され,同部のリンパ節郭清は特に重要である.一方,SMA神経叢浸潤はまれであり,神経叢温存からなるSMA周囲リンパ節郭清が必要であることを進展様式と解剖学的観点から述べた.根治性を損なわずに生活の質(QOL)を考慮したリンパ節郭清の手技について解説した. -
5.十二指腸乳頭部癌に対する放射線療法・光線力学療法の可能性
78巻6号(2016);View Description Hide Description十二指腸乳頭部癌に対する耐術不能な場合および局所再発についてガイドラインでの記載はなく,その新たな治療の可能性として,放射線療法もしくは光線力学療法があげられる.術後補助療法としての放射線療法はT2 ステージ腫瘍において施設無作為試験が期待される.また,光線力学療法(PDT)は術後の補助療法光線力学療法において早期病変においては奏効する可能性もあり,低侵襲であることを考慮すると再発患者の生活の質(QOL)の向上や予後延長を期待したpalliativeな選択肢の一つと考えられる. -
6.十二指腸乳頭部癌に対する化学療法──切除不能・再発癌に対する治療と補助療法
78巻6号(2016);View Description Hide Description十二指腸乳頭部癌は胆管の十二指腸開口部に発生した癌であり,胆道癌に含まれる.乳頭部癌のみでの化学療法の臨床試験は実施されておらず,通常胆道癌として治療が行われる.切除不能胆道癌に対してはgemcitabine+ cisplatin併用療法(GC療法)が国際的な標準治療として位置づけられている.乳頭部癌を含む胆道癌に対する術後補助療法はいまだその有用性は確立していないが,現在,gemcitabineやS─1 などによる第Ⅲ相試験が実施されている.
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臨床と研究
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臨床経験
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手術手技
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完全ロボット支援下胃全摘術におけるRoux-en Y再建法──電動リニアステープラーを用いたブレのない安全な吻合
78巻6号(2016);View Description Hide Description
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症例
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書評
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