外科
Volume 78, Issue 7, 2016
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特集 【非浸潤性乳管癌(DCIS)の診断と治療】
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1.DCISの歴史・疫学と検診
78巻7号(2016);View Description Hide Description非浸潤性乳管癌(ductal carcinoma in situ:DCIS)についてのはじめての記述は,1893年にさかのぼる.米国では1990年ごろよりマンモグラフィの普及に伴いDCISの頻度は著明に増加した.DCISのおよそ半数は浸潤癌に進展するものの,生涯顕在化しえない症例の存在も認識されており,その生物学的特性に合わせた治療方針の確立が望まれる. -
2.乳腺非浸潤癌の病理
78巻7号(2016);View Description Hide Description乳腺の非浸潤癌には非浸潤性乳管癌と非浸潤性小葉癌がある.非浸潤性乳管癌は多彩な病理像を示し,形態の差は発癌様式や浸潤癌への進展過程に影響する.核グレードと壊死の有無を基盤とする亜分類法は,局所再発推定の一助となりうる.最近では,治療せず経過観察可能な非浸潤癌があるか,研究がすすめられている.非浸潤性小葉癌は浸潤癌発生のリスク因子ととらえられ,浸潤癌の前駆病変としての意義については今後の検討を要する. -
3.DCISの診断
78巻7号(2016);View Description Hide Description近年非浸潤性乳管癌(DCIS)の頻度が増加しているが,DCISは腫瘤を触知せず画像上明らかな腫瘤像を呈さない症例も多く,通常の乳癌とは異なる特徴がみられる.本稿では診断に必要な画像所見の特徴をマンモグラフィ,超音波,MRI,乳管内視鏡を取り上げて解説した.所見に対応する病理像を正しく理解し読影することにより,DCIS の早期発見,および適切な治療法や切除範囲の決定が可能となる.画像診断技術に十分習熟する必要がある. -
4.DCISの治療:1)DCISに対する手術
78巻7号(2016);View Description Hide Description非浸潤性乳管癌(DCIS)に対しても乳房温存術は標準術式の一つであり,nipple sparing mastectomy(NSM),skin sparing mastectomyも行われている.術式によらずDCISの生存率は良好であるが,乳房温存術での浸潤性乳房内再発は予後に影響する可能性があり,乳房内再発の低減のためDCISのバイオロジーに基づき術式,術後補助療法についても症例を考慮し検討する必要がある.NSMでもnippleinvolvement,extensive DCISの評価のため,画像診断が重要である.DCISに対するセンチネル生検の省略は,DCIS から浸潤癌へのアップグレードの可能性に留意するべきである. -
4.DCISの治療:2)DCISにおけるセンチネルリンパ節生検の意義
78巻7号(2016);View Description Hide Description非浸潤性乳管癌(DCIS)は乳癌が乳管内にとどまっている状態であり,理論的には転移することはない.しかし術前にDCISと診断されても潜在性浸潤癌の存在などにより,数%にセンチネルリンパ節転移が発見されている.センチネルリンパ節生検は,低侵襲な検査であるが,合併症もあり本来必要ない患者群への施行はつつしむべきである.腫瘤径大,高グレード,コメド壊死の存在など,潜在性浸潤癌が疑われる病態がみられた場合には,センチネルリンパ節生検を原発巣切除と同時に行うことをすすめるべきである. -
4.DCISの治療:3)DCISの放射線療法
78巻7号(2016);View Description Hide Description非浸潤性乳管癌(DCIS)に対する乳房部分切除術後放射線療法は,同側乳房内の再発を有意に抑止し,国内外のガイドラインでも推奨されている.その際の照射方法としては全乳房照射が標準である.一方,生存率への寄与については示されておらず,再発低リスク患者における再発率も低いことから,安全に照射省略できる症例を見いだすための研究が続いている. -
4.DCISの治療:4)再発,転移をきたしたDCISの検討
78巻7号(2016);View Description Hide Description非浸潤性乳管癌(ductal carcinoma in situ:DCIS)の局所再発の危険因子として腫瘍径,切除断端からの距離,組織学的グレード,年齢,エストロゲンレセプター(estrogen receptor:ER),プロゲステロンレセプター(progesterone receptor:PgR),ヒト上皮成長因子受容体2(human epidermal growth factor receptor2:HER2),Ki67 があげられる.局所再発はその後の遠隔転移,乳癌死亡の危険因子となるため,DCIS 患者における再発,転移,死亡を予防するために,これらの因子を考慮して適切な手術術式,放射線治療,内分泌療法を施行することが望まれる. -
5.わが国と諸外国におけるDCISの診断と治療の違い
78巻7号(2016);View Description Hide Description乳癌の診療はほかの臓器と比較し欧米との差が小さい領域と認識されているが,非浸潤性乳管癌(DCIS)の診断・治療に関してはエビデンスの解釈の違いなどを背景に,若干の差が認められる.本稿ではわが国と諸外国でDCISの診断や治療がどの程度一致しているのか,あるいは何が違うのか,ガイドラインの根拠などにも触れつつ現状に着目する. -
6.DCISの診断と治療における今後の展望
78巻7号(2016);View Description Hide Description乳管上皮過形成から非浸潤性乳管癌(DCIS)を経て浸潤性乳管癌へと進展することが,一般的な乳癌の自然史である.形態学的組織診断は時に困難な場合があり,生物学的マーカーを用いた診断も試みられているがいまだ不十分である.治療の基本は完全切除であるが,高危険群でホルモン依存性のあるDCISでは内分泌療法が有用で,同側だけではなく対側乳癌の発症リスクも低下させる.高危険群選別には多遺伝子発現検査が有用であろう.
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臨床と研究
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臨床経験
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症例
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可逆性脳血管攣縮症候群に起因するくも膜下出血を同時に発症したsegmental arterial mediolysisによる腹腔内出血の1 例
78巻7号(2016);View Description Hide Description -
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書評
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