外科
Volume 78, Issue 9, 2016
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特集【HALSの意義とテクニック】
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- Ⅰ.総論
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1.HALSとは
78巻9号(2016);View Description Hide Description用手補助鏡視下手術(hand assisted laparoscopic surgery:HALS)は,鏡視下手術の困難性を克服する,いわばよいとこ取りの手術手技である.1995年にHALSを用いたはじめての脾摘出術が行われた.術野の展開が効率的であり,煩雑な操作を必要としないため,手技の定型化が容易で,アクシデントに対しても迅速な対応が可能である.左手の主たる役割は場展開となるが,小切開を用いた直視下操作を効率的に組み合わせて行う.HALS は安全に質の高い治療を提供する一つのオプションであり,今後も大きく変貌を遂げる可能性を秘めている. - Ⅱ.各論
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1.HATSとHALSによる食道癌手術
78巻9号(2016);View Description Hide Description当科では, 用手補助胸腔鏡/ 腹腔鏡手術(hand-assistedthoracoscopic surgery/hand-assisted laparoscopic surgery:HATS/HALS)を考案し,すべての胸部食道癌手術例を鏡視下手術の適応としてきた.現在は腹臥位手術が標準術式であるが,HATS/HALSは安全性と確実性を兼ね備えた優れた術式であるので,高難度手術である胸腔鏡下食道切除術におけるトラブルシューティングの「もち駒」としてその知識と経験を共有していきたい. -
2.HALSによる胃の手術
78巻9号(2016);View Description Hide Description胃癌に対する用手補助腹腔鏡下胃切除術の手術手技を,術者の左手の使い方と助手の役割を中心に解説する.用手補助腹腔鏡下手術(HALS)は開腹手術と腹腔鏡下手術の橋渡し的な術式と考えられてきたが,腹腔鏡下手術が普及した現在,HALS の合理性は見直されてきている.この手技特有の技術やコツを会得する必要があるが,HALS は腹腔鏡下手術を施行するうえで一つの選択肢となるであろう. -
3.HALSによる小腸・大腸の手術:1)HALSによる右側結腸癌
78巻9号(2016);View Description Hide Description右側結腸癌,特に進行癌においては,surgical trunk前面のリンパ節郭清が重要である.しかしこの部位は血管走行のバリエーションが多く,腹腔鏡下手術手技の難易度は高い.しかしhand-assistedlaparoscopic surgery(HALS)は腹腔鏡下手術の低侵襲性を損なうことなく手技の難易度を軽減することができる.右側結腸癌に対するHALS のポイントは,①小切開はリンパ節郭清部位を中心に6 〜7 cmの長さでおく,②タオルなどにより術野を十分に確保し,小切開からリンパ節郭清と腸管の授動を行う.できうる限りのことを行うが無理をしない,③癌の局在部位により適切なリンパ節郭清と血管処理を直視下に行う,④左手は場をつくるデバイスであることを意識するである.本稿では進行右側結腸癌に対する実際のHALS 手技を解説する. -
3.HALSによる小腸・大腸の手術:2)HALSによる左側大腸(上部直腸)癌手術
78巻9号(2016);View Description Hide DescriptionHand-assisted laparoscopic surgery(HALS)は鏡視下で片手を使用するため,術者は開腹手術に近い感覚をもって術野展開などの大半の操作を単独で行うことができる.左側大腸癌手術では,視野が不良な脾彎曲部の授動操作を行う際に有用性がもっとも発揮される.挿入した手による視野制限があるという問題はあるものの,HALS は開腹手術で培った経験と技術を鏡視下へもち込むことができる術式であるため,熟練した外科医による取り組みには,より大きな可能性が期待される. -
3.HALSによる小腸・大腸の手術:3)HALSによる下部直腸癌手術
78巻9号(2016);View Description Hide Description下部直腸癌に対する用手補助腹腔鏡下手術(HALS)手技でもっとも重要なポイントは,定型的開腹手術同様に左手操作による直腸切除部の愛護的かつ強力な頭側への牽引と骨盤底筋群までの完全郭清(TME/TSME),可能な限り十分な腫瘍後面の剝離断端(CRM ≧1 mm)および肛門側セーフティマージン(AW ≧ 20 mm)の確保に努めることである.本稿では女性に比し骨盤腔が狭い男子の超低位吻合における前立腺尖部/尿道膜様部や,直腸/ 会陰部切除における骨盤底筋群の側方切離と尾骨末端から会陰部脂肪織層までのHALS 操作を中心に述べる. -
3.HALSによる小腸・大腸の手術:4)Crohn病手術におけるHALSの応用
78巻9号(2016);View Description Hide DescriptionCrohn病に対する腹腔鏡下手術は低侵襲で整容性に優れた有用なアプローチであるが,高度な炎症や組織の脆弱化のため腹腔鏡下手術の適応になる症例は限られる.Hand-assisted laparoscopic surgery(HALS)は腹腔鏡下手術の利点を維持したまま多くの課題を解決し,安全かつ低侵襲に手術を行うことができる.Crohn病は腸管病変が多様であり手術手技を定型化することは困難であるが,用手補助による触診の感覚や視野展開を十分に生かせればHALSが非常に有用な術式となりうる. -
3.HALSによる小腸・大腸の手術:5)潰瘍性大腸炎手術におけるHALSの応用
78巻9号(2016);View Description Hide Description潰瘍性大腸炎では,重症,難治,大腸癌合併に対して,大腸全摘,回腸囊肛門(管)吻合術を行う.当科では,結腸の剝離授動をhandassistedlaparoscopic surgery(HALS)で,直腸剝離と肛門管切離を小切開創から腹腔鏡を併用した直視下手術(VIPS)で行っている.大腸全摘術は広範囲の操作が必要であるが,HALS は鏡視下手術の利点を享受しながら容易でスピーディな操作が可能であり,本術式にたいへん有用と思われる. -
4.HALSによる肝胆膵脾の手術:1)HALSを応用した肝切除
78巻9号(2016);View Description Hide DescriptionHand-assisted laparoscopic surgery(HALS)を応用した肝切除の利点としては,触覚を利用した手術が可能であること,また肝臓の愛護的圧迫や把持が可能であり,鏡視下操作中に自在なカウンタートラクションをかけることができるという点である.また,不慮の出血へも迅速な対応が可能である.以上の利点を鑑みると,たとえば手術歴があり,周囲組織と高度癒着が予測されるような症例での肝切除や肝臓の愛護的操作が重要である生体肝ドナー手術における肝授動などではHALS の応用が有用である. -
4.HALSによる肝胆膵脾の手術:2)HALSを応用した膵臓手術
78巻9号(2016);View Description Hide Description本稿ではhand-assisted laparoscopic surgery(HALS)を用いた膵尾側切除(脾温存および脾合併切除の場合)の要点について,stepby-stepに解説する.HALSでは術者の左手指5本を自由に使えるため,トロカールはカメラポートのほかに,術者右手用,助手用の計3本ですむ.脾温存手術では脾静脈からの小出血に対する処置がポイントになるが,HALS は手指によるすみやかな圧迫止血が可能であり,もっとも効果的である.止血には補助的にアルゴンビームコアギュレータやソフト凝固などを用いる.開腹手術と同じように術者の片手を使えるうえに,鏡視下手術の拡大視効果も得られるため,膵のトンネリング操作や膵実質切離に用いる自動縫合器の誘導といった繊細な手技も容易に行うことができる.脾合併切除においては,開腹手術や完全鏡視下手術ではとかくブラインドになりやすい脾周囲の操作も,用手的な術野展開によりストレスなく,きわめて安全に行うことができる.深い術野で行われるデリケートな膵手術においては,特にHALS の利点は多いと考える. -
4.HALSによる肝胆膵脾の手術:3) 腹腔鏡下胆囊摘出術困難例でのHALS移行による手術の低侵襲化
78巻9号(2016);View Description Hide Description胆石に対する腹腔鏡下胆囊摘出術(LC)において,腹腔鏡下手術完遂が困難な場合に筆者はhand-assisted laparoscopic surgery(HALS)移行を行っている.手術は4 孔式で行い,鏡視下続行困難と判断されればHALSに移行する.HALS移行例は術後経過や術後管理においてもLCと遜色のないものであり,開腹移行より手術の低侵襲化が可能である. -
4.HALSによる肝胆膵脾の手術:4)HALSを用いた脾臓摘出術
78巻9号(2016);View Description Hide Description左手を挿入する開腹手術の要素とスコープを用いる腹腔鏡下手術の要素の両方を合わせもつ用手補助下手術は,脾腫症例に対して開腹手術より術後疼痛,在院日数などにおいて優れていることが明らかになっている.今回われわれの行っている用手補助腹腔鏡下脾臓摘出術の要点を述べる.
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臨床経験
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症例
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小腸造影とCT 多断面再構成像(MPR)の同時施行が術前診断に有用であったS 状結腸間膜窩ヘルニアの1 例
78巻9号(2016);View Description Hide Description -
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書評
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