外科
Volume 79, Issue 1, 2017
Volumes & issues:
-
特集【外科医が知っておくべき最新の集中治療管理】
-
-
1.術後急性期の循環器診療
79巻1号(2017);View Description Hide Description非心臓病手術の周術期管理においては,適切な術前循環器リスク評価とそれらに基づく合併症予防を講じることがきわめて重要であるものの,少なからず発生する術後循環器合併症に対しては,迅速に診断し対応することが求められる.したがって,高リスク患者においては心電図,肺動脈カテーテルなどを駆使したモニタリングおよび循環管理を行いながら,緊急性の高い急性冠症候群,急性心不全および不整脈に対しては,適切な系統的アプローチと循環器内科医へのコンサルトが肝要である. -
2.最近の呼吸管理
79巻1号(2017);View Description Hide Description近年,呼吸管理の手法として酸素療法でのオープンマスク,鼻カニューレから高流量酸素療法が普及しつつある.また,非侵襲的人工呼吸(NIV)のエビデンスが確立されてきた.さらに,2012 年急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の新たな定義が提唱されて以来,肺保護を視点とした人工呼吸が予後を改善してきている.腹臥位療法,筋弛緩薬,経肺圧とdriving pressureの制御,自発呼吸下では神経調節補助換気(NAVA)と比例補助換気(PAV),さらにV─V ECMO,呼吸理学療法,鎮痛鎮静など,病態に合わせた総合的な呼吸管理が求められている. -
3.ビデオ喉頭鏡あるいは軟性気管支鏡を用いた気管挿管
79巻1号(2017);View Description Hide DescriptionFentanylによる軽度の鎮静とlidocaineによる表面麻酔のみで施行する,ビデオ喉頭鏡(経口)または気管支鏡(経鼻)を用いた気管挿管について概説する.麻酔導入薬や筋弛緩薬による気道閉塞を起こさず,自発呼吸を保ち,安定した血行動態のもとに,気道の防御反射を維持したまま挿管可能な本法は,救急・集中治療領域の重症患者にも広く適応可能である.安全かつ快適に実践するための私的工夫を紹介する. -
4.定型的な外科的気管切開法
79巻1号(2017);View Description Hide Description近年集中治療室(ICU)における経皮的気管切開術が増えているが,本稿では成人に対する外科的気管切開の手技について述べる.気管切開手技の要点は総頸動脈,腕頭動脈損傷を避ける,短時間かつ最小限の出血で,輪状軟骨を傷つけずに安全に行うことである.われわれ頭頸部外科医は,さまざまな上気道障害に対する気管切開術を経験しながら術式を確立してきており,他領域の外科医にも参考にしていただけると幸いである. -
5.急性腎傷害の診断と治療
79巻1号(2017);View Description Hide Description近年,急性の腎傷害による血清クレアチニンのわずかな上昇でも死亡リスクが増加することが明らかとなり,腎傷害の早期発見・早期治療が重要視されている.急性腎傷害(AKI)を早期に察知して原因を検索し,可逆的な原因に対しては適切な治療を迅速に行うことが重要である.適切な原因治療や全身管理にもかかわらずAKIが改善しない場合には,血液浄化療法を施行する.必要時には腎臓内科医や血液浄化療法に精通した集中治療専門医などにすみやかに相談できるよう,日ごろから連携を深めておくことが望ましい. -
6.PMX,サイトカイン除去療法
79巻1号(2017);View Description Hide Description本邦では重症敗血症に対する血液浄化療法として,PMX─DHPとサイトカイン吸着膜を用いた持続的血液濾過透析(CHDF)が存在する.PMX─DHP は広く臨床利用されてきたが,そのエビデンスに確固たるものは存在しない.多施設ランダム化比較試験(RCT)としてEUPHAStrial,ABDOMIX study が報告されているが,相反する結果を示しており,現在三つめのRCT であるEUPHRATES trialの報告がまたれている.サイトカイン吸着膜にはPMMA膜および敗血症を適応として新規保険収載されたAN69ST膜が存在するが,現状では両者ともRCT は皆無であり,そのエビデンスはとぼしい. -
7.急性肝不全およびショック肝の管理
79巻1号(2017);View Description Hide Description肝不全は,広範な肝細胞死から蛋白合成や解毒能が低下し,生命維持に障害をきたす病態である.急性肝不全の診断基準は,2011 年に厚生労働省「難治性の肝・胆道系疾患に関する研究班」より公表され,2015年に改定されている.急性肝不全やショック肝では,意識や全身の管理としてhigh volume high flow HDF などの血液濾過療法の工夫がある.さらに呼吸に対しては,high flow nasal cannulaを使用することができる.集中治療管理においては,意識,呼吸,循環を早急に安定化させ,免疫,栄養,リハビリテーションを含めた全身管理を適正化できるとよい. -
8.ECMOの適応と管理の実際
79巻1号(2017);View Description Hide Description膜型人工肺(extracorporeal membrane oxygenation:ECMO)は,生命の危機に瀕した呼吸・循環不全患者の原疾患の病態が改善するまでのブリッジとして利用される.一般的に心補助で利用される場合はveno-arterial ECMO,肺補助で利用される場合はvenovenousECMOと呼ばれる.本稿では,成人におけるECMOの適応,管理上重要なパラメータの意味やその評価法, 管理指針についてextracorporeal life support organizationのガイドラインをもとに解説する.注意深い観察・評価・介入を繰り返して行い,原疾患の病態改善まで安全にECMO患者を維持することが重要である. -
9.ICUにおける抗菌薬の使用と院内感染
79巻1号(2017);View Description Hide Description抗菌薬の登場は,大勢の人々の命を救うこととなった.しかし近年は,毎年のように抗菌薬の相次ぐ乱用や不適切な使用により,耐性菌の増加や院内感染の増加といった新たな問題がいたる所で報告されている.抗菌薬の適正な使用のためには,指導,教育,啓蒙活動などがきわめて重要であり,特に重症度の高い集中治療室(ICU)において各医師がすべからく基本技能として適切な抗菌薬使用をできるようになるために,本稿では院内感染対策について最近の話題を中心に概説する. -
10. 術後せん妄対策── ICUのせん妄管理は医原性リスク管理である
79巻1号(2017);View Description Hide Descriptionせん妄は,多彩なリスクファクターを背景とする急性脳機能障害である.その対策には原疾患・病態の治療による全身状態の安定化に加え,ABCDEFバンドル(2010年)に代表される包括的医原性リスク管理が重要である.またPADガイドライン(2013年)は,事後対応から予防管理への移行を具体的に促している.集中治療室(ICU)のせん妄管理は,医療者の固定観念を含めた医原性リスクからの解放(liberation)と包括的患者生活管理の促進(animation)である. -
11.ICU-acquired weakness
79巻1号(2017);View Description Hide Description集中治療室(ICU)退室後の亜急性期・慢性期の身体的・心理的な諸問題が注目される中,ICU-acquired weakness(ICU─AW)という概念が提唱された.ICU─AW とは,ICU入室後に発症する急性の左右対称性の四肢筋力低下を呈する症候群である.近年,ICU─AW が亜急性期〜慢性期の病態がICUにおける重症敗血症患者にも密接に関与しているという報告がなされるようになり,2016年度版日本版重症敗血症診療ガイドラインにも独立した章としてとり上げられることになった.本章ではこれらの新しい病態の概要を解説するとともに,診断や予防に関する最新の知見をまとめ報告する. -
12.ICUにおける栄養の評価と管理
79巻1号(2017);View Description Hide Description重症患者に対する栄養の評価と管理について,エビデンスに基づいて国内外でガイドラインが作成され,その重要性が広く認識されるようになったといえる.実際に治療ツールとして用いるには,静脈栄養に比して経腸栄養が治療に優位であるということ以外にはいまだ不明確な点もあり,また実施上の困難も考慮すれば,症例ごとに個別の対応が必要になるであろうが,栄養療法を開始する際の基本的な戦略を,エビデンスとともに概説する.
-
-
連載
-
-
-
症例
-
-
-
-
-
遺伝子組換えトロンボモジュリン投与後に手術を施行したKasabach─Merritt症候群合併巨大肝血管腫の1 例
79巻1号(2017);View Description Hide Description
-