外科
Volume 79, Issue 2, 2017
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特集【進行肝細胞癌に対する治療戦略(集学的治療を含めて)】
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- Ⅰ.総論および最新の内科的治療
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1.進行肝細胞癌とは?── 世界の肝癌ステージングと治療アルゴリズムの現況と疫学について
79巻2号(2017);View Description Hide Description肝細胞癌は,腫瘍の進行度に応じた適切な集学的治療が求められる.肝細胞癌の予後や治療方針選択には,ほかの癌腫と異なり腫瘍の進行度のみならず肝予備能が関与するが,世界で共通した予後予測のためのステージングや治療アルゴリズムはいまだ確立されていない.本稿では日本肝臓学会の提唱する肝癌診療ガイドラインを中心に,海外における治療アルゴリズム,ステージングシステムの現況を概説する. -
2.進行肝細胞癌の分子病理診断の最前線
79巻2号(2017);View Description Hide Description進行肝細胞癌に対する治療戦略を考えるうえで,肝細胞癌の分子病理学的メカニズムを理解することはきわめて重要である.本稿では,近年明らかになりつつある肝細胞癌の多様性について,および個別化医療に向けた取り組みを概説する. -
3.進行肝細胞癌における肝動脈化学寒栓術(TACE)
79巻2号(2017);View Description Hide Description現在,Barcelona Clinic Liver Cancer(BCLC)分類intermediatestage B が肝細胞癌(HCC)に対する肝動脈化学塞栓術(TACE)の適応としてあげられているが,stage B は非常に多様性の強い集団であり,その後stage B をさらにB1 〜4 の4 段階に細分化したBolondiらの分類も報告され,stage B1で,よりTACE が推奨されている. -
4.進行肝細胞癌に対する動注化学療法の進歩
79巻2号(2017);View Description Hide Description肉眼的門脈内腫瘍栓を伴う症例や肝内多発症例といった高度進行肝細胞癌は,既存の局所治療に対し抵抗性であり,動注化学療法(HAIC)が重要な選択肢となる.レジメンは低用量5─FU+ CDDP療法,動注用CDDP 製剤,IFN 併用療法などがあり良好な治療成績が報告されている.またVp3 〜4症例に対するHAICの術後補助療法による残肝再発抑制効果も期待される.さらなる成績向上のためには,HAIC のresponderの検索,集学的治療の確立が必要である. -
5.進行肝細胞癌に対する経皮的肝灌流化学療法(PIHP)
79巻2号(2017);View Description Hide Description進行肝細胞癌に対する肝全体を標的とした強力な抗癌治療を目的として,われわれは独自のバルーンカテーテルを用いた経皮的肝灌流化学療法(PIHP)を開発し,これまで多数の臨床例を重ねてきた.当初,進行・再発多発例に対する単独治療で開始したPIHP は,減量肝切除後にPIHP を加える2 段階治療へと発展し,治療成績の飛躍的な向上を達成した.近年は切除不能・困難例に対する術前治療としてPIHP を導入するなどその適応はさらに拡大している. -
6.進行肝細胞癌に対する分子標的薬治療の最新情報
79巻2号(2017);View Description Hide Descriptionこれまでに肝細胞癌に対して延命効果が示された薬剤はsorafenibのみであり,進行肝細胞癌の標準的治療と位置づけられている.現在さらなる延命効果を期待して,sorafenib に続くべくさまざまな新規分子標的薬の開発が行われており,新規薬剤の一次治療,二次治療,および補助療法の有効性についての臨床試験の結果が注目されている. - Ⅱ . 外科的治療
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1.多発肝細胞癌に対する外科治療
79巻2号(2017);View Description Hide Description多発肝細胞癌に対しては,種々の治療法が選択される.多発肝癌例には多中心性発癌,主腫瘍とその肝内転移,その両者の併存例が存在する.多発肝癌の中でも肝機能が比較的良好で,遠隔転移の可能性が低いTokyo基準(5─5 rule)内症例は術後合併症や手術死亡の頻度が低く,術後累積生存率も同基準以外の症例より良好であった.しかし,多発肝癌に対する肝切除の治療成績は満足できるものではなく,その向上には集学的治療が必要である. -
2.巨大肝細胞癌に対する外科治療
79巻2号(2017);View Description Hide Description腫瘍径が10 cm を超える巨大肝細胞癌に対しては,外科的切除が根治を望める唯一の治療法である.Liver hanging maneuver(LHM)を用いた前方アプローチによる肝切除が有用であるが,腫瘍が非常に巨大でLHM を安全に施行することが困難な状況下では,横隔膜を先行切除し,肝の可動性をよくしたうえでLHM を施行する術式が有用である.巨大肝細胞癌は術後再発をきたしやすく予後不良であり,今後の術後補助療法の開発が必要である. -
3.門脈腫瘍栓合併肝癌に対する外科治療
79巻2号(2017);View Description Hide Description門脈腫瘍栓(portal venous tumor thrombus:PVTT)合併肝細胞癌の予後はきわめて不良であるが,一部の症例に対しては外科治療が可能であり,近年,手術の安全性および,安全かつ確実にPVTT を摘除する手術手技が確立されてきている.切除後の短期成績は他治療法と比較して明らかに良好であると考えられるが,特にVp3,Vp4症例の5 年生存率はいまだ10 〜20 %にとどまっており,長期予後改善への方策が課題となっている.外科切除と補助化学療法,放射線療法などの組み合わせによる集学的治療の開発が期待される. -
4.下大静脈腫瘍栓を伴う肝細胞癌に対する外科治療
79巻2号(2017);View Description Hide Description下大静脈腫瘍栓(IVCTT)の存在は,oncologic emergencyと理解し,迅速な対応が求められる.他臓器転移がなく肉眼的に癌の遺残のない手術が可能であれば,比較的良好な予後が期待できる.ただし,手術のみでは早期再発は必発で,手術と周術期の化学療法などの集学的治療を安全に低侵襲に行う必要がある.自験例における周術期の肝動脈注入化学療法を導入後のIVCTTを伴う肝細胞癌の術後生存期間中央値は36. 4 ヵ月で,治癒も期待しうる病態である. -
5.胆管内腫瘍栓合併肝癌に対する外科治療
79巻2号(2017);View Description Hide Description肝細胞癌は時に胆管内腫瘍栓を伴うことがあり,その予後は比較的不良であるが,唯一治癒の可能性がある治療が外科切除であり,切除後の5年生存率はおよそ30 %である.安全に肝切除を行うためには,腫瘍栓による閉塞性黄疸,胆管炎,胆道出血などの問題を克服したうえで肝予備能を評価し,適切な術式を選択して切除に臨むことが重要である.胆管内腫瘍栓を伴う肝細胞癌は切除後も高率に再発するが,胆道再建後の肝内再発に対する肝動脈化学塞栓療法,ラジオ波焼灼療法は肝膿瘍の危険を伴うため,できるだけ胆管を温存する切除術式を選択するのが望ましい. -
6.肝細胞癌肝外転移に対する外科治療
79巻2号(2017);View Description Hide Description肝細胞癌肝外転移の予後は,生存期間中央値7 〜8 ヵ月と不良である.ガイドラインでの推奨治療はsorafenibであるが,予後延長効果は3 ヵ月程度にすぎない.肺転移切除後の5年生存率は12 〜75 %と比較的良好な成績が報告されており,DFI>1年,AFP<100 ng/ml,腫瘍径<2 cmなどが共通した予後良好因子であった.骨・リンパ節・腹膜転移においても異時性かつ単発であれば切除により長期予後が得られている.肝外転移の至適切除適応は,予後因子の解析に加えsorafenibなどの全身療法との組み合わせも考慮し,検討すべき課題である. -
7.進行肝細胞癌に対する肝移植
79巻2号(2017);View Description Hide Description肝臓移植は,肝硬変に合併した肝細胞癌に対する唯一の根治療法である.ミラノ基準(単発で5 cm以下もしくは3個以下で3 cm以下,脈管浸潤や肝癌転移を認めない)を満たす肝癌に対する肝移植成績は非常に良好である.一方ミラノ基準外でも再発しない症例も含まれており,適応拡大が提唱されている.本稿では進行肝癌に対する肝移植について,適応およびダウンステージを含めた集学的治療の概要を述べる.
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