外科
Volume 79, Issue 3, 2017
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特集【便失禁の治療──診療ガイドラインの解説を含めて】
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1.排便にかかわる筋と神経
79巻3号(2017);View Description Hide Description排便を担う構造である肛門は,解剖学的に非常に特殊な領域である.骨盤出口筋は会陰筋群と骨盤隔膜からなり,排便機能を担う骨格筋である.平滑筋としては内肛門括約筋や縦走筋の存在が古くから知られているが,近年,肛門管の平滑筋線維の広がりが周囲の支持的構造物を形成することや,平滑筋と横紋筋が互いに密接な関係をもつことが示唆されている.これらの筋とその支配神経,そして排便に関与する自律神経について概説した. -
2.便失禁診療ガイドライン作成の時代的背景と概要
79巻3号(2017);View Description Hide Description便失禁は患者の生活の質(QOL)に大きく影響する疾患であるが,これまで診断や治療に関して指針となるべきものがほとんどなかった.今回専門医のみならず,内科・外科を含めた一般の医師および看護師を対象に,日本大腸肛門病学会の便失禁診療ガイドライン委員会により便失禁診療のガイドラインが作成され,日本大腸肛門病学会より発刊された.本稿では便失禁診療ガイドライン作成の時代的背景と概要について概説した. -
3.便失禁の定義と疫学
79巻3号(2017);View Description Hide Description日本大腸肛門病学会による便失禁診療ガイドラインにおける便失禁の定義は,「無意識または自分の意思に反して肛門から便がもれる症状」であり,これにガス失禁が加わると肛門失禁と呼ばれる.本邦における便失禁の有症率は,20 〜65歳で4 %,65歳以上で7.5 %(男性8.7 %,女性6.6 %)であり,これをもとに人口構成から算出すると,本邦には500万人以上の便失禁患者が存在すると推計される. -
4.便失禁の診断法
79巻3号(2017);View Description Hide Description日本大腸肛門病学会より,『便失禁診療ガイドライン』が刊行されることになった.ガイドラインでは便失禁診療を初期診療と専門的診療に分けている.初期診療では問診と診察所見から便失禁の病態を想定して初期治療を開始する.初期治療が有効でない場合には,直腸肛門機能検査や外科的治療を行える専門施設と連携して,専門的診断と治療を行うが,診断には複数の生理学的・形態学的検査を組み合わせて評価することを推奨している. -
5.便失禁の治療:1)薬物治療
79巻3号(2017);View Description Hide Description軟便を伴う便失禁に対して,calcium polycarbophilは有用である.軟便を伴う便失禁に対して,loperamideは有用であるが,便秘症の副作用に注意して,症例ごとに用量を適量化する必要がある.下痢型の過敏性腸症候群における切迫性便失禁に対しては,ramosetron は有用である.軟便を伴わない便失禁に対しては,amitriptylineなどの抗うつ薬が有用な場合がある.糞便塞栓に伴う溢流性の漏出性便失禁に対して,排便習慣指導に加えて,坐薬や浣腸による定期的な直腸の空虚化は有用である. -
5.便失禁の治療:2)バイオフィードバック
79巻3号(2017);View Description Hide Descriptionセンサーとモニターを用いて生体現象を自覚させるバイオフィードバック療法は,便失禁の治療にも利用されている.訓練の目的は肛門括約筋の随意収縮を高めることと直腸感覚を高めることであり,肛門括約筋の収縮訓練,バルーンを用いた直腸感覚訓練,前者二つを同時に行う協調訓練の三つの方法がある.切迫性便失禁の患者がバイオフィードバック療法のよい適応であり,便失禁に対するバイオフィードバック療法の有効率は50 〜80 %である. -
5.便失禁の治療:3)仙骨神経刺激療法
79巻3号(2017);View Description Hide Description2014年4月より便失禁に対する仙骨神経刺激療法は,本邦において保険収載され,今回の便失禁診療ガイドラインにおいても外科的治療法の一つとして位置づけられた.この治療の利点は,一時的な体外刺激装置を用いて刺激効果の有無を刺激装置の埋め込み前に判定できることと,従来行われてきた外科的治療に比べれば低侵襲といえることである.すでに本邦での治験とその後の症例の蓄積から,この治療法の効果と安全性が確認されている. -
5.便失禁の治療:4)手術療法
79巻3号(2017);View Description Hide Description便失禁に対する手術療法は保存的治療の無効な症例に対して,侵襲の少ない術式から順に施行されるべきである.そのためには,各治療法に関して十分に周知する必要がある.本稿では現時点で本邦において施行可能な外科療法について,手術の概要,特徴および合併症などを中心に述べる. -
6.便失禁の看護と指導
79巻3号(2017);View Description Hide Description便失禁の保存療法では,まず食事・生活・排便習慣を見直すことで排便コントロールが良好となり,便失禁症状が消失したり,症状が軽減することがある.その内容は,規則正しい生活習慣と食習慣を確立すること,アルコールやコーヒーなどの催便作用のある食品を控えること,食物繊維の適切な摂取による排便コントロールを行うこと,直腸感覚の鈍い患者では適切な排便習慣を確立することである. -
7.便失禁患者の食事指導
79巻3号(2017);View Description Hide Description便失禁は肛門括約筋機能の低下だけでなく,大腸の蠕動運動機能の乱れなどが原因になる.生活習慣や食事内容を見直し,胃結腸反射を亢進させない食事にすることで,適切な便性状や排便コントロールが可能である.本稿では便失禁に対する具体的な食事療法について述べる.
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連載
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外科医が知っておくべき pivotal study [第1回]:胃癌大動脈周囲リンパ節郭清 JCOG9501
79巻3号(2017);View Description Hide Description -
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臨床経験
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症例
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