外科
Volume 79, Issue 4, 2017
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特集【食道癌外科治療のすべて】
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- Ⅰ.総論
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1.食道癌の治療方針および手術適応の評価
79巻4号(2017);View Description Hide Description食道癌に対する手術適応を考える場合,手術侵襲や術後qualityof lifeの低下を考慮し,根治的化学放射線療法と比較する必要がある.併存疾患や飲酒歴・喫煙歴,重複癌の存在なども治療方針に影響する.Stage Ⅰでは手術または根治的化学放射線療法が,stageⅡまたはⅢでは術前化学療法後食道切除が本邦の標準治療である.適応に迷う場合には,multidisciplinary teamによる検討も重要と考えられる. -
2.食道切除術式の選択
79巻4号(2017);View Description Hide Description食道癌手術における切除術式の選択に際しては,病変部位,深達度,転移の状況,組織型,リンパ節郭清範囲,切除断端距離,患者の年齢や全身状態,さらには施設の特性などさまざまな因子が加味される.切除範囲の観点からは,咽頭喉頭頸部食道切除,咽頭喉頭食道全摘,食道亜全摘,中下部食道切除などの術式があり,アプローチとしてはオープン法と鏡視下手術がある.複数の選択肢から,個々の症例に適した術式選択が求められる. -
3.食道癌手術における再建法の選択
79巻4号(2017);View Description Hide Description食道癌手術における再建手術は,患者の術後経過および長期的な生活の質(QOL)に直接関与するきわめて重要な役割を担う.食道癌再建手術の最大の特徴は「腹部臓器を頸部まで挙上するその再建距離の長さ」にあり,挙上性や再建臓器の血流と同等に再建臓器の機能が重視され,これらをバランスよく備えた再建が肝要である.本稿では再建臓器の決定,そしてその後段階的に行われる再建に関するさまざまな選択について記述する. -
4. 術後トラブルシューティング─食道癌術後の合併症とその対処
79巻4号(2017);View Description Hide Description食道癌手術は侵襲も大きく手術操作部位も広範であるため,術後合併症はきわめてクリティカルになるものが多く,早急な診断と対処が求められる.肺炎は広域抗菌薬投与と起因菌の同定,全身性炎症反応症候群(SIRS)からの成人呼吸窮迫症候群(ARDS)予防が必要である.縫合不全は,疑った時点で早急に対処し,有効なドレナージ法を選択する.術後出血では,循環を安定させながらすみやかに画像下治療(IVR)や手術を行う.乳び胸はまずは保存的に加療するが,治療効果が望めない症例に対しては手術を行う. - Ⅱ.各論
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1.右開胸食道切除
79巻4号(2017);View Description Hide Description食道癌手術は侵襲が大きく,高度な外科技術が要求される手術であり,今日では多くの施設で行われるようになっているものの,術後合併症の頻度や予後などの治療成績が施設により異なっているのが現状である.したがって,ほかの消化器癌よりもさらに厳しいリンパ節郭清が求められると同時に,温存すべき神経や血管を確実に温存する正確な手術操作が求められる.本稿では実際の縦隔リンパ節郭清手技について概説する. -
2.胸腔鏡下食道切除術──発生学に基づいた剝離層と「受け」を利用した食道切除術
79巻4号(2017);View Description Hide Description食道癌に対する胸腔鏡下食道切除は,行われ始め20年が経過し医療機器の発展とともに広く普及し続けている.特に内視鏡解像度の進歩の恩恵は大きく,肉眼では確認できなかった解剖構造がみえるようになり,さらに多角的にみることができるようになり解剖の理解がすすみ,新しい手術理論が生まれ始めている.気管と食道は前腸から発生する臓器であり,同じ臓器鞘に包まれて存在すると考えられる.この気管と食道を包む臓器鞘をtracheoesophageal fasciaと呼称し,tracheoesophagealfasciaを「受け」にした手術を行っているので紹介する. -
3.食道胃接合部癌の手術
79巻4号(2017);View Description Hide Description食道胃接合部癌に対する手術は,その解剖学的特殊性から縦隔郭清を考慮する必要があるが,主に腫瘍の局在や転移リンパ節の状況によって選択される術式は異なり,再建法を組み合わせると多岐にわたる.主に下縦隔郭清を行う場合は,経胸壁操作と経裂孔操作の二つのアプローチ法が選択されうるが,本稿では経裂孔的下部食道切除術,下縦隔郭清および再建法に関して当科で行っている術式の手順に沿って紹介する. -
4.非開胸による食道癌根治手術
79巻4号(2017);View Description Hide Description食道癌根治術はいまだ合併症の頻度が高く,侵襲の大きな手術として知られている.合併症の中でも呼吸器合併症が多く,その克服が喫緊の課題である.そのためわれわれは,ロボットや縦隔鏡の技術を活用した非開胸による食道癌根治手術を開発した.これまで59例施行しており,術後肺炎の発生はなく,また郭清個数も通常の開胸術と同等であることが示されている.術後の生活の質(QOL)が良好である可能性も示唆されており,今後の治療選択肢になりうると考えている. -
5.サルベージ食道切除──適応と手術手技,周術期管理
79巻4号(2017);View Description Hide Descriptionサルベージ食道切除は,根治的化学放射線療法の非奏効例に対する二次治療として症例が増加している.照射後の食道切除は通常手術と比べて難易度,合併症率が高く,特に気道虚血は致死的となるため,バランスのとれた手術手技が重要である.治療成績をみると,いったん完全奏効となった再燃症例は比較的良好な成績である一方,遺残症例,リンパ節転移のある症例は成績が芳しくない.慎重な適応判断と丁寧な手術,周術期管理が肝要である. -
6.胃管による食道再建
79巻4号(2017);View Description Hide Description縫合不全は食道切除再建術後の主要な合併症の一つであり,時に重症化しcriticalな経過をたどることがある.また吻合部狭窄の原因となり,術後の生活の質(QOL)の低下をきたす.これを予防するためには,良好な胃管の作成と丁寧な吻合操作が重要である.良好な胃管とは,頸部吻合部までの十分な挙上性があり,吻合部の血流がよい胃管をさす.またある程度の貯留能と排泄能があることが望ましい.当科では吻合部関連合併症の頻度や術後1年目の体重変化率をもとに,胃管作成法や吻合法に改善を加えてきている.現在は,細径胃管よりも亜全胃管を用いることが多くなり,また用手的な幽門形成を付加している.食道胃管吻合は手縫いの層々吻合で行い,大網弁がある場合には吻合部への大網被覆を追加している.この手技になってから縫合不全と吻合部狭窄は低率になり,食事摂取量にも改善がみられている.本稿では胃管作成の手技と,それに関連したさまざまなオプションについて解説する. -
7.結腸による食道再建
79巻4号(2017);View Description Hide Description食道癌術後の再建は,胃を用いることが標準術式である.胃が使えないときには小腸,結腸などを用いることになる.再建臓器にかかわらず,縫合不全や再建臓器壊死など重大な合併症は避けなければいけない.胃挙上再建を行うときには標準的な方法が定まっており,さらなる工夫を重ねている.小腸や結腸に関しては適応症例が少ないこともあり,小腸にするか結腸にするか,その使用部位は,使用する血管と切離する血管は,再建経路は,など悩みつつ手術を行うことになる.壁内血流に期待できない小腸,結腸は血流の維持がもっとも大切な点の一つである.われわれが現在行っている回結腸再建,特に血流の確保を中心に解説した. -
8.有茎空腸による食道再建
79巻4号(2017);View Description Hide Description食道切除後の胃管作成不能例に対しては,腸管を用いた再建が選択される.その際,結腸を用いている施設が多いようであり,われわれもかつては回結腸再建を第一選択としていた.しかし2008年より低侵襲性かつ簡便性を重視して空腸再建に移行し,現在は胃が使用できない症例のほぼ全例に対し適応している.本稿では有茎空腸再建手技におけるわれわれの工夫を概説する.
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外科学の古典 を読む [特別寄稿]
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