外科
Volume 79, Issue 6, 2017
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特集【直腸癌側方転移の診断と治療】
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- Ⅰ.総論・診断
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1.下部直腸進行癌への治療──国際的な標準治療と本邦の大腸癌治療ガイドラインの乖離
79巻6号(2017);View Description Hide Description局所進行直腸癌(T3 〜4 N0 M0,あるいはT any N1 〜2 M0症例)に対する日本以外の欧米ならびにアジアの先進国で行われている国際的な標準治療法は,手術前に放射線を用いる集学的治療である.一方,日本の大腸癌治療ガイドラインでは手術単独治療が標準治療法であり,側方リンパ節領域の郭清もしばしば行われている.われわれの目標は患者の生存率の改善,機能の温存であり,日本独自の大腸癌治療ガイドラインに固執するならば,国際的な標準治療法との比較試験が必要である.現状では,少なくとも国際的な標準治療法を患者へ呈示する治療選択肢の一つとすべきである. -
2.直腸癌側方転移の頻度と手術適応
79巻6号(2017);View Description Hide Description大腸癌研究会「直腸癌に対する側方郭清の適応基準に関するプロジェクト研究」,「Mesorectal excision(ME)」vs「ME+骨盤自律神経温存側方骨盤リンパ節郭清ANP─D3」の無作為割付多施設比較試験(JCOG0212)における側方リンパ節転移頻度,側方郭清の予後へ与えるインパクトに鑑みて,本邦大腸癌治療ガイドラインに記載される側方郭清の適応基準は,腫瘍下縁が腹膜翻転部より肛門側にあり,かつ固有筋層を超えて浸潤する症例である. -
3.直腸癌側方転移の画像診断
79巻6号(2017);View Description Hide Description直腸癌側方リンパ節転移の画像診断の意義や現状について解説した.直腸癌側方リンパ節に対する治療(LPLD,RTまたはCRT)は,転移頻度,副作用や有害事象も考慮したうえで治療効果が期待できる症例を選別して行うのが望ましい.画像診断による側方リンパ節のclinical positive statusはほかのリスク因子に比べオッズ比の高い重要な予測因子であり,治療適応症例の選別に有用である.また,18 F-FDG─PETやDWI─MRIなどによる新たな診断も試みられており,今後,治療方針決定における画像診断の重要性が増すと考えられる. - Ⅱ.治療・手術
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1.直腸癌側方郭清の治療成績
79巻6号(2017);View Description Hide Description直腸癌に対する側方郭清は本邦で伝統的に行われてきた手術操作であるが,近年では側方転移のリスク因子を有する例に対して選択的に実施される場合が多い.一般に側方郭清の適応とされるRb・PのT3・T4 症例で,術前治療を行わない場合の側方転移率は約15 %,側方転移例の郭清後の5年全生存率は約40 %である.予防的な側方郭清によって術後生存期間が延長するという確実なエビデンスはないが,JCOG0212 試験では側方郭清施行例は非施行例よりも骨盤内再発率が低かった. -
2.術前化学放射線療法と側方郭清
79巻6号(2017);View Description Hide Description欧米では,cStage Ⅱ〜Ⅲ直腸癌に対し術前化学放射線療法(CRT)または放射線療法(RT)を用いた集学的治療が標準治療であり,側方郭清なしで比較的良好な成績が報告されている.近年,本邦でも集学的治療を取り入れる施設が増えており,側方転移は術前CRT/RT 後も遺残すること,側方リンパ節腫大症例では術前CRT 後の局所再発率が高いことなどが明らかにされている.さらなる治療成績の改善のために,術前CRT/RTにいかに側方郭清を組み合わせていくかが今後の課題である. -
3.直腸癌側方郭清後の機能障害とその対処法
79巻6号(2017);View Description Hide Description直腸癌手術での機能温存術は,肛門括約筋温存術と自律神経温存術であるが,側方郭清後の機能障害は特に自律神経障害に伴う排尿・性機能障害が重要である.併施される自律神経温存が機能障害を予防・軽減する.しかし,手術では神経のみならず血流などさまざまな要因が関連しており障害の程度は個々に程度も異なるため注意が必要である.排尿障害は神経因性膀胱となることが多く残尿への対策が主となるが,性機能障害はさらに機能低下に陥りやすい.それらの対処法について概説した. -
4.直腸癌側方郭清の手術手技──開腹による手技
79巻6号(2017);View Description Hide Description側方郭清は鏡視下でも行われることが多くなったが,エビデンスの蓄積はなく,開腹による郭清が基本である.開腹とはいえ,狭い骨盤内で手術操作を行うため,解剖学的知識,視野展開,手順を習熟したうえで行う必要がある.また,側方領域のリンパ節を含む脂肪織をしっかりと切離しなくては,郭清による効果も不十分なものとなる.本稿では,開腹手術における直腸癌に対する側方郭清手術手技の要点とコツを解説した. -
5.直腸癌側方郭清の手術手技──腹腔鏡下手術手技
79巻6号(2017);View Description Hide Description進行直腸癌に対する腹腔鏡下手術は,難易度が高く十分なエビデンスがいまだ確立されていないため,その適応に関しては術者とチームの習熟度に合わせて慎重に決定する必要がある.さらに,腹腔鏡下側方リンパ節郭清術は狭い骨盤内での複雑な解剖を対象とした手術であり,適切な郭清には骨盤解剖の特徴を理解したうえでの定型化した術式が必須となる.本稿では,当科で行っている腹腔鏡下側方リンパ節郭清術の要点と注意点について概説する. -
6.直腸癌側方郭清の手術手技──ロボット支援下手術手技
79巻6号(2017);View Description Hide Descriptionロボット手術は,腹腔鏡手術の利点である拡大効果や低侵襲性に加え,視認性や操作性を向上させた手術である.しかし,触覚が失われているに等しく,副損傷を避け,過不足ない郭清を行うためには,これまでの手術と同様ランドマークを意識した適切な解剖の理解が重要である.本稿では,側方リンパ節領域のランドマークを意識したロボット手術の側方郭清手技を概説する. -
7.側方リンパ節転移再発例に対する治療
79巻6号(2017);View Description Hide Description側方リンパ節転移再発は,初回手術が根治手術であればstageⅢであり根治が期待できる.ただし遠隔転移もしばしばみられるため十分な検査の後に治療方針を決定する.単発の再発であれば腹腔鏡手術の適応となり,肛門温存が可能なものも多い.切除困難例では放射線化学療法を,遠隔転移のリスクが高ければ全身化学療法を考慮する.
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連載
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外科医が知っておくべき pivotal study [第4回]:膵頭部癌に対する膵頭十二指腸切除,標準郭清と拡大郭清の無作為比較試験
79巻6号(2017);View Description Hide Description -
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臨床と研究
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症例
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対側腹膜前到達法(TEP)手技を用いた両側鼠径ヘルニアに対する片側腹膜切開腹腔内到達法(TAPP 法)の2例
79巻6号(2017);View Description Hide Description -
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書評
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