外科
Volume 79, Issue 7, 2017
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特集【TNM分類第8版を読み解く】
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- Ⅰ.総論
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1.TNM分類と癌取扱い規約
79巻7号(2017);View Description Hide Description悪性腫瘍病期分類の世界標準であるTNM 分類第8版が出版された.臓器によっては大きな変更が加わっているので注意したい.わが国ではこれとは別に臓器別の癌取扱い規約が広く用いられ,きめ細かい分類が行われているが,英文での発表や院内がん登録などではTNM分類への変換が必要になる.両者の策定基盤,方向性,原理原則の相違を理解し,状況に応じて適切に使い分けることが求められる. -
2.TNM分類の総則と病理分類
79巻7号(2017);View Description Hide Description国際対がん連合(UICC)/TNM分類の総則,すなわちTNM分類の記載法の原則については,第7 版 1, 2)の内容がおおむね第8 版 3)にもそのまま引き継がれている.ここではTNM 第8 版における,システム上決められている原則を順に紹介し,各カテゴリーの判断の際のポイントなどに着目しながら解説する. - Ⅱ.各論
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1.食道と食道胃接合部
79巻7号(2017);View Description Hide DescriptionTNM 分類の第8 版が,国際対がん連合(UICC)とAmericanJoint Committee on Cancer(AJCC)によって改訂された.今回の第8版においては,cStageとpStageがそれぞれ異なる分類表を採用しており,cStageは扁平上皮癌と腺癌によっても異なる分類表となっている.さらに,AJCCのTNM分類第8版においては,術前治療後の症例に対するypStageが用意された.また,前回の第7版ではSiewert type Ⅲの食道胃接合部癌は食道癌に準じて分類することになっていたが,今回の第8 版では胃癌に準じて分類するかたちに変更された. -
2.胃と消化管間質腫瘍(GIST)
79巻7号(2017);View Description Hide DescriptionTNM分類の第7版ではAmerican Joint Committee on Cancer(AJCC)の食道外科医が主導権を握って上部消化管癌の編纂が行われ,食道癌の進行度分類をそのまま胃癌にも流用することに決まりかけていた.その後この事態は回避されたが,違和感の残るステージ分類となった.そこで第8版における改訂に備え,国際胃癌学会のプロジェクトとして世界15 ヵ国の信頼性の高い胃癌のデータが集積された.その結果,第8 版では精度の高い進行度分類が提案され,採用された. -
3.胃,小腸,大腸のカルチノイド腫瘍
79巻7号(2017);View Description Hide Description2010年の世界保健機関(WHO)分類に基づきカルチノイド腫瘍はneuroendocrine tumor(NET)とneuroendocrine carcinomaに大別された.最新のTNM 分類第8 版でも胃や小腸,大腸のNET に関する項目が設けられ,一部では改訂が行われた.特に小腸NET については,N因子がリンパ節転移個数や腸間膜リンパ節転移のサイズによってN1とN2に細分類されたことは注目すべきである.また全臓器のNETに共通してM 因子が肝転移とそれ以外の臓器転移との組み合わせで新たにM1a,M1b,M1cの三つに分類されたことも特記すべき点である. -
4.大腸,虫垂,肛門管
79巻7号(2017);View Description Hide DescriptionTNM 分類第8 版における大腸,虫垂,肛門管の各項の改訂点を概観し,合わせて大腸癌取扱い規約との相違点を概説した.大腸の改訂点は,腹膜播種と腫瘍デポジットの取り扱いである.腹膜播種はほかの遠隔転移から独立したカテゴリーに分類され,腫瘍デポジットはT カテゴリーにかかわらずN1cと判定されることになった.虫垂ではT カテゴリーにTis(LAMN)が加わり,T4a に区分されていた限局性腹膜転移がM カテゴリーに復し,Mカテゴリーも改訂された.肛門管では所属リンパ節の群分けが変更され,病期分類が大幅に改訂された. -
5.肝臓
79巻7号(2017);View Description Hide Description原発性肝癌はウイルス性肝炎の予防・治療手段の発達によってその発症数の低下が見込まれているものの,世界の癌の部位別死亡者数でみると第2位の疾患である.本稿では原発性肝癌の最新のステージ分類についてAmerican Joint Committee on Cancer(AJCC)第8 版の改訂ポイントについて解説する. -
6.胆囊・胆管,膵臓
79巻7号(2017);View Description Hide Description国際対がん連合(UICC)TNM分類が第7 版から第8 版に移行し,相当の部分で改訂が行われた.T分類については病理学的な腫瘍径や腫瘍浸潤による予後の差を重要視し,N因子に関しては転移リンパ節の個数と検索リンパ節数が重要視され,転移リンパ節個数によってN1,N2に分類されるようになった.特に大きな変更が加えられたのは遠位胆管癌と膵癌で,遠位胆管癌ではT分類で胆管壁浸潤距離によりT1からT3が分類されることとなり,膵癌ではT 分類に最大腫瘍径が取り入れられ,2 cm 以下がT1,2 〜4 cm がT2,4 cm 以上がT3 というように分類されることとなった. -
7.肺癌
79巻7号(2017);View Description Hide Description悪性腫瘍のTNM病期分類は,癌の進展範囲を解剖学的に記述するものであり,治療法の選択,予後の推定,治療成績の施設間および国際比較などのためには欠かせない情報である.肺癌のTNM分類は,世界肺癌学会(IASLC)のStaging and Prognostic Factors Committee主導のもと2017年1月より第8版が運用されている.今回の改訂ではT因子とM 因子において大きな改訂がなされ,N 因子については変更が行われなかった. -
8.乳腺腫瘍
79巻7号(2017);View Description Hide DescriptionTNM分類第8版への改訂において,乳腺腫瘍に関する臨床および病理の記載に大きな変更はなかった.新しい試みとして,解剖学的な腫瘍の広がり(腫瘍局在および腫瘍量)のみならず,腫瘍,宿主および環境に関する因子で構成される予後因子の記載が追加された.また,発展途上国などで臨床情報不足から通常のTNM分類ができない場合においても,必要最小限の臨床情報から病期分類可能なessential TNMが乳腺腫瘍では採用されている. -
9.婦人科腫瘍
79巻7号(2017);View Description Hide Description日本産科婦人科学会では,婦人科悪性腫瘍の臨床的な国際比較を可能にするために,国際産婦人科連合(International Federation ofGynecology and Obstetrics:FIGO)による進行期分類とTNM分類を翻訳し採用してきた.しかし,これまでのTNM分類第7版は国際対がん連合(Union for International Cancer Control:UICC)により2009年に改訂されたものであるため,現行のFIGO 進行期分類には対応していなかった.卵巣癌についてはFIGO では従来の進行期にかわって,卵巣癌・卵管癌・腹膜癌のカテゴリーとして新しい進行期を提示した.2017 年になって,FIGO 手術進行期分類(2014)に対応するTNM分類として第8 版が適用された. -
10.泌尿器系腫瘍
79巻7号(2017);View Description Hide Description泌尿器系腫瘍のTNM分類は旧版と比べ,大きな修正はなされていない.最近の知見に基づいて予後因子の一覧が追加され,基本的に重要な因子と補助的な因子に分類されている.一部では,新規で有望なものや研究段階のものまで紹介されている.またそれぞれについて腫瘍関連因子,患者関連因子,治療・環境関連因子に分けて記載されている.従来のTNM分類と合わせて利用することで,実臨床だけでなく今後の研究での活用が期待される.
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外科医が知っておくべき pivotal study [第5回]:進行再発大腸癌regorafenib CORRECT
79巻7号(2017);View Description Hide Description
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