外科
Volume 79, Issue 8, 2017
Volumes & issues:
-
特集【胆膵進行癌に対する外科治療戦略】
-
- Ⅰ.総論
-
1.胆膵進行癌画像診断のポイント
79巻8号(2017);View Description Hide Description胆道・膵臓という解剖学的に複雑な部位に発生する胆膵癌は,画像診断,外科手術ともに難易度の高い疾患である.安全で根治性の高い外科治療を行うためには術前の正確な画像診断とそれに基づいた手術方針の立案が必要である.近年,画像診断技術が飛躍的に向上したため,より精度の高い新たな診断法が登場し術前診断,治療方針決定のための一助となっている.適切な画像検査機器や撮影法,画像処理方法についての理解が重要である. -
2.閉塞性黄疸に対する最新の術前減黄戦略
79巻8号(2017);View Description Hide Description閉塞性黄疸は膵・胆道癌においてkey となる臨床症状で,肝・腸管・免疫など多臓器にわたる障害を引き起こす.術前減黄処置には経皮経肝的・内視鏡的ドレナージがあり,肝切除例では術後肝再生の妨げとなるため必須である.一方,膵頭十二指腸切除例では,胆管炎・肝機能不良などがなければ必要ないとされるが,本邦では周術期栄養障害や胆管炎併発などの理由から減黄処置を行うことが多い.当科では周術期胆汁返還に加え,利胆,胆道感染予防作用のある茵蔯蒿湯や肝線維化・bacterial translocation予防,門脈血流増加作用のある大建中湯を積極的に投与している. - Ⅱ.胆道
-
1.Bismuth Ⅲ,Ⅳ型肝門部胆管癌に対する手術適応判定と術式
79巻8号(2017);View Description Hide Description肝門部胆管癌に対する標準術式は,左右の葉切除あるいは左右の3 区域切除の4種類に集約された.肝門部胆管癌に対する切除術式が上記のようにおおむね4 種に集約された現在,Bismuth分類は,適応すべき肝切除術式を直感的に想起できる分類として有用である.本稿ではBismuth Ⅲ,Ⅳ型胆管癌における切除の可否や術式決定の最重要ポイントである肝内胆管への腫瘍の進展度診断と,各肝切除術式に固有の胆管切離ラインの関係を中心に概説する. -
2.肝門部領域胆管癌手術における血管合併切除の手技と長期成績
79巻8号(2017);View Description Hide Description肝門部胆管は門脈,動脈と近接しており,局所進行例では腫瘍はこれらの脈管に浸潤し,血管合併切除を要する症例は少なくない.門脈切除再建は安全性・有効性が期待される手技として普及しつつある.近年,肝動脈切除再建が行われるようになり,切除適応の拡大に寄与している.安全性・有効性の検証はされておらず,施設の経験に鑑み,症例ごとに予想される予後と安全性のバランスで慎重に適応を決めるべきである. -
3.胆道癌に対する肝葉切除兼膵頭十二指腸切除(HPD)の意義──広範囲胆管癌を中心に
79巻8号(2017);View Description Hide Description胆道癌に対する肝葉切除兼膵頭十二指腸切除(hepatopancreaticoduodenectomy:HPD)は,高い術後合併症率,手術関連死亡率のため,標準手術として受け入れられるにはいたっていない.近年の術前,術中処置および周術期管理の進歩に伴い,high volume center では手術関連死亡率は5 %以下となっているが,現在でも限られた施設で行われるべき術式であることはかわりがない.HPDのもっともよい適応症例は,広範な水平方向進展を伴う胆管癌であると考えられ,進行胆囊癌に対する適応の是非には結論は出ていない.手術の安全性の確保,長期成績の向上のためには,術前胆道ドレナージ,術前門脈塞栓術,二期的膵空腸吻合,さらに術前の正確な病変進展範囲の把握が重要である. -
4.進行胆囊癌に対する外科治療戦略
79巻8号(2017);View Description Hide Description進行胆囊癌に対する外科治療に関して,局所進展度別に至適な肝切除範囲,リンパ節郭清範囲を中心に,現在までに得られている知見を概説した.pT2胆囊癌に対する至適な肝切除やリンパ節郭清の範囲,肝外胆管切除の必要性に関してはいまだ議論が多い.pT3/pT4胆囊癌の外科治療成績に関しては,癌遺残のない切除が遂行されれば非切除例よりは良好な成績が得られているが,いまだ十分ではなく,術前・術後の化学療法を含めた集学的治療の進歩が望まれる.進行胆囊癌に対する外科治療では,癌遺残のない手術を遂行するために個々の症例の病巣所見に応じて適切な根治術式を選択することが重要である. -
5.胆道癌に対する術前化学療法──進行胆道癌に対するconversion surgeryをめざした術前化学療法
79巻8号(2017);View Description Hide Description進行胆道癌は根治手術がしばしば困難なため予後不良であり,化学療法を含めた集学的治療の進歩が急務である.近年,切除不能胆道癌に対してgemcitabine+ cisplatin 併用療法の有用性が報告されたが,術前化学療法の意義はいまだ不明である.われわれは切除不能局所進行胆道癌に対するgemcitabine+ cisplatin併用療法は25 %の症例でconversion surgeryが可能となり,有意に予後を延長させると報告した.進行胆道癌に対するconversion surgeryをめざした術前化学療法は有用であり,今後さらなる臨床試験の実施が望まれる. - Ⅲ.膵
-
1.Borderline resectableおよびlocally advanced unresectable膵癌に対する術前療法
79巻8号(2017);View Description Hide Description診断時に切除可能な浸潤性膵管癌はおよそ2 〜3 割とされ,多くは切除不能(UR)ないし切除可能境界(BR)膵癌として発見される.しかし,BRないし局所進行性切除不能(LA─UR)膵癌に対して術前療法を施行後に切除する試みが,化学療法の発達とともに盛んに行われるようになり,臨床試験が本邦でも行われている.術前療法はgemcitabine+nab-paclitaxelあるいはgemcitabine+ S─1 の組み合わせによる化学療法や化学放射線療法によるものが多い.術前治療の導入により,BR膵癌に対する切除断端の陰性化や,LA─UR 膵癌を切除するconversiontherapy が可能となり,膵癌全体の切除可能性が広がった.しかし,長期予後に関する上乗せ効果についてはさらに多くのエビデンスの集積が必要である. -
2.門脈再建を伴う膵切除の要点
79巻8号(2017);View Description Hide Description膵頭部癌に対する門脈合併切除は局所の根治性を高め,予後の向上を目標とする消化器外科専門医が習得すべき手術手技である.術前の画像診断から適応症例を見極めること,上腸間脈動脈からの神経叢半周切離を先行し,門脈切除の範囲を最後に判断することが安全・確実な門脈再建手技を行うために重要である.進行膵癌が対象であり,早期回復と術後生活の質の向上に努め,抗癌治療導入が可能となるようにすべきである. -
3.膵体尾部進行癌に対する最新のDP─CAR
79巻8号(2017);View Description Hide Description膵癌に対する集学的治療の進歩に伴い,National ComprehensiveCancer Network(NCCN)ガイドライン2015年からは膵頭部領域と膵体尾部領域に細分された定義が用いられるなど,膵癌診療においてborderline resectable(BR)膵癌が注目されている.集学的治療を行うことで予後向上が期待できると考えられているが,その中心にあるのが外科的切除術である.膵切除における上腸間膜静脈・門脈浸潤合併切除術は,近年安全な術式として確立している.さらに膵癌に対する主要動脈合併切除も,手術手技の向上により近年報告が増加している.しかし,BR 膵癌の治療において,術前,術後補助療法のレジメンや高難度,高侵襲手術のclinical benefitは,いまだ明らかになっていない.そのため,今後さらにBR 膵癌の治療成績を検討し,日本から新しいエビデンスを発信していく必要がある.
-
連載
-
-
外科医が知っておくべき pivotal study [第6回]:切除可能な直腸癌に対して直腸間膜全摘術と併用した術前放射線療法
79巻8号(2017);View Description Hide Description -
-
-
症例
-
-