外科
Volume 79, Issue 9, 2017
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特集【急性腹症に対する低侵襲アプローチ──適応と手技】
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- Ⅰ.総論
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1.緊急手術としての低侵襲アプローチ──急性腹症への応用pros& cons
79巻9号(2017);View Description Hide Description腹腔鏡手術はこの25年間に低侵襲性手術としてめざましい普及を遂げ,急性腹症をはじめとした緊急手術においてもその実施件数が増加してきた.腹腔鏡手術は診断面において,原因不明の急性腹症をはじめ軽度な侵襲で開腹手術と同等以上の情報が得られるメリットがあり,治療面では,急性胆囊炎や胃十二指腸潰瘍穿孔,急性虫垂炎などの疾患で開腹手術以上の良好な治療成績が報告されている.一方,予定手術に比べ術前検査や病態評価の時間的制約がある緊急手術においては,腹腔鏡手術の適応はより慎重に行うべきであり,術中の開腹移行のタイミングも逸することなく判断するべきである.バイタルサイン,身体所見,病態に基づき腹腔鏡手術の適応を適切に判断し,診断および治療面における低侵襲アプローチの有用性を最大限に発揮させることが重要である. - Ⅱ.各論
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1.胃十二指腸潰瘍穿孔
79巻9号(2017);View Description Hide Description胃十二指腸潰瘍穿孔に対する低侵襲アプローチとして腹腔鏡下大網充塡被覆手術とIVR 併用の保存的治療があげられるが,十分なエビデンスは得られていない現状もある.本稿では過去の報告をレビューしつつ腹腔鏡下手術の現状と手技について,またIVR のコツとピットフォールについて解説する.適切なIVR の併用により保存的治療の適応拡大も期待されうるが,IVR に固執しすぎることなく柔軟な対応が肝要である. -
2.癒着性腸閉塞
79巻9号(2017);View Description Hide Description消化器疾患に対する腹腔鏡下手術は急速に普及し,その低侵襲性については数多く報告されてきた.しかし,癒着性腸閉塞に対しては開腹手術後ともなると腹腔内の癒着のため鉗子操作が困難で触覚にとぼしく腹腔鏡下での剝離操作は難易度が高くなるため,腹腔鏡下手術の適応外となることが多かった.現状では腹腔鏡下手術における習熟度やエネルギーデバイスの改良がすすめられ安定した手術が施行されていることや,術後の腸管機能のすみやかな回復,癒着の低減などの点からみても,癒着性腸閉塞に対しての腹腔鏡下手術は有用であり今後期待される術式といえよう. -
3.急性虫垂炎
79巻9号(2017);View Description Hide Description単孔式手術は従来の腹腔鏡手術に比べ,スコープと鉗子が同一方向となり先端が視認しにくい(インラインビュー),スコープや鉗子間で干渉が起きやすい,特有な視野展開法が必要などの特性があり,これらを十分に理解したうえで術式を定型化する必要がある.本稿では,われわれが行っている急性虫垂炎に対する単孔式腹腔鏡手術について解説した. -
4.大腸憩室炎,憩室穿孔
79巻9号(2017);View Description Hide Description大腸憩室炎,憩室穿孔症例に対する低侵襲アプローチとしては腹腔鏡下手術が第一にあげられる.大腸憩室炎の重症度分類としてはHinchey病期分類が広く用いられており,Hinchey病期分類のⅠ,Ⅱまでの大腸憩室炎で,狭窄や瘻孔そして出血を伴ったものでも腹腔鏡下手術のよい適応であると考えられるが,HincheyⅢに相当する穿孔性憩室炎による化膿性腹膜炎に対する腹腔鏡下洗浄の効果は現在のところ立証されておらず,今後の課題であると考えられた. -
5.閉塞性大腸癌──大腸ステント留置後の手術(BTS)
79巻9号(2017);View Description Hide Description閉塞性大腸癌は全大腸癌の約10 %とまれでなく,閉塞症状により全身状態が不良であることも多い.閉塞性大腸癌の標準治療は緊急手術による腸管減圧であったが,高い術後合併症,死亡率が問題とされてきた.従来から使用されてきた経肛門的減圧管に加え,本邦においても大腸ステントが保険収載され,これらによる腸管減圧後の待機手術が急速に広まっている.本稿では,低侵襲性の観点から閉塞性大腸癌に対する治療戦略を概説する. -
6.急性胆囊炎
79巻9号(2017);View Description Hide Description急性胆囊炎の治療は,Updated Tokyo Guidelinesにより基本的に早期の腹腔鏡下胆囊摘出術が推奨されるようになった.しかしその治療法選択には,発症から手術までの期間,重症度,総胆管結石の有無,患者背景,施設の熟練度などさまざまな要因が関与する.また炎症の程度により容易なものからむずかしいものまで手術難易度に大きな差があり,治療法を一律に規定することはむずかしい.当院での治療方針に文献的考察を加え,急性胆囊炎に対する最新の治療を考察する. -
7.鼠径ヘルニア嵌頓
79巻9号(2017);View Description Hide Description嵌頓ヘルニアは多くの場合,血流障害を伴い緊急手術の対象となる.緊急手術を回避する目的で徒手整復術が試みられるが,まれな合併症として,壊死腸管の整復や偽還納について認識しておく必要がある.アプローチ法としては鼠径部切開法,腹腔鏡のどちらでもよいが,当施設では,腸管のviabilityの評価および治療方針の決定のため,腹腔鏡下手術を第一選択としている.嵌頓ヘルニアのこれまでの知見を述べるとともに,当施設の治療アルゴリズムについて解説する. -
8.閉鎖孔ヘルニア嵌頓
79巻9号(2017);View Description Hide Description当院では鼠径部,閉鎖孔ヘルニア嵌頓に対し緊急腹腔鏡下手術を第一選択としている.基本的にはtransabdominal preperitonealrepair(TAPP)法を第一選択としているが,腸管拡張が著明で視野確保が困難な症例にはtotally extraperitoneal repair(TEP)法を行っている.嵌頓した腸管を腹腔鏡下に整復する方法は水圧(water pressure)法,pumping法,愛護的牽引法の三つを使い分けている.整復が不可能で開腹移行した症例はない.腸管穿孔,壊死,腹腔内汚染の認められるものは二期的腹腔鏡下修復を行っている.今回,閉鎖孔ヘルニアの三つのタイプの解剖学的経路と腹腔鏡下の手術手技を提示する. -
9.腹壁ヘルニア嵌頓──考え方と手術の実際
79巻9号(2017);View Description Hide Description腹壁ヘルニアは原発性と続発性に分類される.原発性腹壁ヘルニアには臍ヘルニア,Spigelianヘルニア,白線ヘルニアなどが含まれ,嵌頓のリスクが高いため診断後の早期手術が望ましい.続発性ヘルニアは腹壁瘢痕ヘルニアである.嵌頓は基本的に手術適応であるが,嵌頓臓器および虚血の有無によって手術法が異なる.本稿では各腹壁ヘルニアの特徴について述べ,嵌頓に対する手術法を解説する.
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連載
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外科医が知っておくべき pivotal study [第7回]:センチネルリンパ節転移陽性における郭清省略と郭清に差なし
79巻9号(2017);View Description Hide Description -
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