Volume 79,
Issue 10,
2017
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特集【消化器癌腹膜播種の最新知見】
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Ⅰ.総論
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外科 79巻10号, 901-906 (2017);
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腹膜播種は胃癌,大腸癌,膵癌などの消化器癌においてよくみられる治癒困難な再発形式である.腹腔内化学療法などの治療法が試みられているが,腹膜播種の予後は依然不良である.より有効な治療法や診断法の開発が喫緊の課題である.本稿では,腹膜播種形成のステップである消化管壁外への浸潤,腹腔内環境への適応,腹膜への接着および腫瘍形成にかかわる分子を紹介しながら,腹膜播種形成のメカニズムを探る.
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外科 79巻10号, 907-914 (2017);
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腹腔内遊離癌細胞の発生は,難治性の腹膜播種性転移の初期病態と考えられている.腹腔内遊離癌細胞検出は,胃癌では進行度分類のほか手術適応の決定や予後の推定に用いられ,臨床的意義が高い.近年,転移能を有する癌細胞が癌手術中に散布されることが証明されるようになり,術中の腹腔内遊離癌細胞散布が,術後腹膜再発の重要な要因であるとする考え方も広まってきている.このような考えから,腹膜播種性再発の治療ターゲットを腹膜播種性腫瘍から腹腔内遊離癌細胞へ,そして同時に,術後治療から術前および術中治療へとシフトする取り組みがみられる.術中の腹腔内遊離癌細胞の鋭敏で迅速な検出法の開発が,術中治療も含めた腹膜転移に対する新たな治療戦略を構築する一つの鍵となるであろう.
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外科 79巻10号, 915-918 (2017);
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腹膜播種は,ほかの転移形式と比べ早期に経口摂取が困難となることが問題である.診断の遅れにより,有効性の期待されるほかの治療法や化学療法レジメンを試すことなくbest supportive care(BSC)に移行せざるをえない場合がある.腹膜播種の画像診断の特徴を理解し,治療方針決定のための早期の腹膜播種の診断,治療効果の評価を行うことが重要と考えられる.本稿では,最近の消化器癌の腹膜播種の画像診断についてレビューし,今後の課題について述べる.
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外科 79巻10号, 919-924 (2017);
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天然のアミノ酸の一種である5アミノレブリン酸(5─ALA)を用いた光線力学診断の有効性が確認され,さまざまな疾患で臨床応用されている.進行胃癌に対する審査腹腔鏡検査への臨床応用を中心に,5─ALA を用いた光線力学診断について概説する.
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外科 79巻10号, 925-929 (2017);
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消化器癌の転移形式として腹膜播種は重要な位置を占め,その有無で治療方針や予後が大きく異なる.審査腹腔鏡は腹膜播種の診断法として胃癌においてもっとも一般的に行われている.JCOG0705試験(REGATTA)では腹膜播種症例に対する胃切除の意義が否定され,治療前の腹膜播種診断がより重要となった.また高度進行胃癌に対する術前化学療法が臨床試験や一般臨床で行われようになり,治療前に腹膜播種を否定する必要がある.さらに化学療法の進歩から,化学療法症例に対するconversiontherapy が行われるようになり,奏効例における腹膜播種診断が行われている.現在でも腹膜播種の画像診断での診断率は高くなく,審査腹腔鏡にてcP0の症例の35 %程度に腹膜播種が検出されている.しかし偽陰性も存在し,陰性(P0)適中率が90 %程度である.審査腹腔鏡は低侵襲に腹膜播種診断が可能であり,今後ますます重要になると考えられる.
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外科 79巻10号, 931-937 (2017);
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腹膜播種あるいは腹膜再発の予後は非常に不良であり,その対策の一つとして古くから抗癌薬の腹腔内投与(腹腔内化学療法)が行われてきた.当初はmitomycin C,cisplatin が使用されており,その後腹腔内温熱化学療法なども開発された.現在はタキサン系薬剤が有用とされ多くの臨床試験が行われている.一方,これまで評価不能病変と分類されてきた腹膜播種に対する客観的治療効果判定の開発も重要である.
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Ⅱ.各論
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外科 79巻10号, 938-943 (2017);
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腹膜播種を伴う胃癌の治療成績の向上のためには,臨床的特性を考慮した治療法の開発が必要である.われわれは抗癌剤の全身投与と腹腔内投与を併用し,奏効例に対して胃切除を施行するという集学的治療を実施してきた.S─1にpaclitaxel経静脈投与と腹腔内投与を併用するレジメンを考案して,第Ⅰ相試験により推奨投与量を決定し,第Ⅱ相試験により1年全生存割合78 %という成績を得た.第Ⅲ相試験では,主解析によりS─1 + cisplatin 併用療法群に対する優越性は示せなかったものの,感度解析では臨床的有効性が示唆された.また,腹腔内化学療法を施行した初発胃癌100 例中64例に対して,化学療法奏効後に胃切除を施行し,生存期間中央値30. 5 ヵ月という成績を得た.腹膜播種を伴う胃癌に対して,腹腔内投与併用化学療法と奏効後の胃切除による集学的治療は,安全かつ有効であると考えられた.
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外科 79巻10号, 944-947 (2017);
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腹腔内温熱化学療法(HIPEC)は,さまざまな腹膜悪性疾患に対する治癒切除の一部として,腹膜切除を伴う完全減量切除と併施される.腹膜偽粘液腫,および大腸癌腹膜転移の一部に対しては,完全減量切除+ HIPECは今やほぼ標準療法として確立され,欧米各国のガイドラインに掲載されている.しかしながら,HIPEC の真の上乗せ効果についてはいまだエビデンスは高くない.
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外科 79巻10号, 949-954 (2017);
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腹膜転移膵癌は多彩な癌随伴症状を呈し,従来の全身化学療法の効果がとぼしく,予後不良である.化学療法剤の腹腔内投与は腹膜播種性病変,腹腔内遊離癌細胞ならびに原発巣に対して直接の治療効果が期待される.われわれは,S─1+ paclitaxel経静脈・腹腔内投与(i.v./i.p. PTX)併用療法を膵癌腹膜転移患者に導入し,腹膜病変の制御とともに生存期間中央値が16. 3 ヵ月に到達したことを報告してきた.今回,当科で経験した腹膜転移膵癌49 例を対象に,S─1+ i.v./i.p. PTX併用療法20 例と従来の化学療法施行29 例の治療成績を比較・検討して,今後の展望について概説する.
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外科 79巻10号, 955-960 (2017);
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消化管間質腫瘍(GIST)はKIT またはPDGFRA の機能獲得性突然変異をdriver mutation とする肉腫である.転移のない初発GIST に対しては外科切除が原則であるが,肝臓や腹膜を主な転移先とする転移/再発GISTに対しては,KITあるいはPDGFRAをターゲットとするチロシンキナーゼ阻害薬による治療が主軸となる.GIST は遺伝子変異パターンにより予後や薬剤反応性が異なるため,特に薬剤耐性変異を有するGISTに対する無駄な治療を回避する意味では,遺伝子変異を解析しておいたほうがよい.
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連載
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外科 79巻10号, 961-964 (2017);
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外科 79巻10号, 965-967 (2017);
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症例
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外科 79巻10号, 969-972 (2017);
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外科 79巻10号, 973-977 (2017);
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外科 79巻10号, 978-981 (2017);
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外科 79巻10号, 983-985 (2017);
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外科 79巻10号, 986-989 (2017);
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外科 79巻10号, 990-993 (2017);
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外科 79巻10号, 994-998 (2017);
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書評
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外科 79巻10号, 930-930 (2017);
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外科 79巻10号, 948-948 (2017);
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外科 79巻10号, 968-968 (2017);
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外科 79巻10号, 982-982 (2017);
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