外科
Volume 80, Issue 3, 2018
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特集【腹壁瘢痕ヘルニアの予防と治療】
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1. 腹壁瘢痕ヘルニアを予防する腹壁閉鎖法
80巻3号(2018);View Description Hide Description腹壁瘢痕ヘルニアは術後の創部合併症の中でも遭遇する頻度が高い疾患であり,患者の生活の質(QOL)を長期に損なう.当教室の肝細胞癌切除374 例において,腹壁瘢痕ヘルニア発生は7 例(1.8%)であった.発生例の背景としては肥満,創感染,術後腹水が多く,腹壁正中の白線部からの脱出が多かった.リスクを認識し,エビデンスに基づいた腹壁閉鎖法と予防措置を行うため,本稿では自験例を含め,最近の知見を中心に腹壁瘢痕ヘルニアの防止策について述べる. -
2.腹壁瘢痕ヘルニアの治療法選択
80巻3号(2018);View Description Hide Description腹壁瘢痕ヘルニアの治療法には,経過観察や単純縫縮術,mesh repair などがある.アプローチの方法としては前方到達法と,腹腔鏡下腹壁瘢痕ヘルニア修復術がある.経過観察の安全性は確立されておらず,今後の研究結果の報告がまたれる.腹壁瘢痕ヘルニアに対してはmesh repair が再発抑制に優れているが,メッシュ関連の合併症,特に長期予後を視野に入れた対応が必要である.前方到達法と腹腔鏡アプローチではほぼ同様の安全性で手術が施行できると報告されており,施設においてもっとも安全に行える方法を選択すべきと考えられる. -
3. メッシュを用いた前方到達法による腹壁瘢痕ヘルニア修復術
80巻3号(2018);View Description Hide Description腹壁瘢痕ヘルニアは,腹部手術後における合併症の一つで,開腹創における筋膜の離開によって腹腔内容が腹膜とともに脱出する疾患である.従来よりさまざまな種類の修復術が行われてきたが,術後再発率が高く,時に重篤な合併症を呈することがある.当科では,Rives-Stoppa 法に準じretromuscular-preperitoneal に人工素材のメッシュを挿入し,tension-free を保持しつつ,筋膜欠損部に連続した肉芽形成をうながす前方到達法を基本術式としている.また,ヘルニア門の部位と大きさによって手術方法を明確に細分化した基準を設定しており,いずれの術式でも良好な成績を得ている.腹壁瘢痕ヘルニアに対するメッシュを用いた前方到達法は,第一選択術となる有用かつ基本的な腹壁瘢痕ヘルニア修復術である. -
4. メッシュを用いた腹腔鏡下腹壁瘢痕ヘルニア修復法
80巻3号(2018);View Description Hide Description腹腔鏡下腹壁瘢痕ヘルニア修復術の最大のメリットは,術後感染率が低いことである.これまで漿液腫やmesh bulge などの偽再発,早期および晩期合併症の議論がなされてきた.近年,腹腔内メッシュ留置を避ける術式が相次いで報告され注目されている.本稿では,enhanced-view totally extraperitoneal(eTEP)technique を応用した新しい術式であるendoscopic Rives-Stoppa(eRives,eTEP lap Rives)法について述べる. -
5. 自家筋膜を利用した腹壁瘢痕ヘルニア修復法
80巻3号(2018);View Description Hide Description腹壁瘢痕ヘルニアの修復では,単なる腹壁の離開としてではなく,腹壁欠損の再建に準じて治療を考える必要がある.その基本は,ヘルニア囊の処理とヘルニア門の閉鎖・補強に集約されるが,その際には強靱な筋膜や腱膜などを用いて支持組織の再建・補強を行い,縫合部に過度の緊張がかからない修復を心がけることが重要である. -
6. Component separation 法による腹壁瘢痕ヘルニア修復法
80巻3号(2018);View Description Hide DescriptionProsthesis の使用が躊躇される腹壁瘢痕ヘルニアの修復法として,componentseparation (CS)法を紹介する.CS 法は腹壁の構成成分である筋肉や筋膜を分離することで可動性を増大させ,自家組織のみで巨大な正中の腹壁欠損を修復する術式である.術後に腹壁の筋肉に対する正の影響がある一方,短期成績は従来法に比し劣るなど,適応に関しての注意が必要である. -
7. 両側腹直筋鞘前葉反転法による急性期腹壁再建とshoelace darn repair 法による腹壁瘢痕ヘルニア修復法
80巻3号(2018);View Description Hide Description両側腹直筋鞘前葉反転法(以下,前葉反転法)とshoelace darn repair は,いずれも腹直筋鞘前葉を用いた自己組織による腹壁再建法である.最大の相違点はその適応にあり,前者は閉腹困難となったopen abdomen management 患者において,合併症を予防するために行われる急性期の腹壁再建法であるのに対し,後者はすでに完成した腹壁瘢痕ヘルニアにおける慢性期の腹壁再建法である.本稿ではこれらの方法について解説する. -
8. 傍ストーマヘルニアの成因と発症予防
80巻3号(2018);View Description Hide Description傍ストーマヘルニアは,ストーマの合併症の中でも比較的発生頻度が高い.その原因は,ストーマサイトマーキングの欠如,経腹直筋経路ではない,筋膜切開が大きい,ストーマ周囲の感染,肥満・腹水・便秘などによる腹圧の上昇,低栄養や咳嗽などがその成因である.発症予防にはその成因を一つひとつ除去することである.何より重要なことは,ストーマ造設時に,術後傍ストーマヘルニアを起こさないようにていねいなストーマ造設手技を行うことである. -
9. 前方アプローチによる傍ストーマヘルニア修復術
80巻3号(2018);View Description Hide Description傍ストーマヘルニアの手術で広範な腹腔内操作を避けたい状況では,前方アプローチによる手術が選択される.ストーマ装具貼付面外周の弧状切開からの筋膜縫合による修復が簡便であるが,再発率の高さが問題である.メッシュを用いた術式はいずれも再発率が低く,前方アプローチとしては腹直筋鞘前面にメッシュをおくonlay meshrepair と腹直筋後面にメッシュをおくsublay mesh repair が行われる.各術式には一長一短があるが,患者の状態に応じて使い分けてゆくことが重要である. -
10. 腹腔鏡下傍ストーマヘルニア修復術
80巻3号(2018);View Description Hide Description傍ストーマヘルニア(PSH)はストーマに関連する腹壁瘢痕ヘルニアで,ストーマ造設後の晩期合併症の一つである.PSH 修復術は種々の方法が報告されているが,その再発率の高さが問題とされている.腹腔鏡下アプローチは術後の早期回復や術後創痛の軽減という利点だけでなく,拡大視効果による腹壁の良好な視野からより正確なPSH 修復が可能と報告されている.われわれは腹腔鏡下Sugarbaker 法を第一選択として行っており,実際の手術手技について解説する.
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