外科
Volume 80, Issue 8, 2018
Volumes & issues:
-
特集【消化器癌に対する最新の集学的治療戦略】
-
- Ⅰ.総論
-
1. 化学療法(分子標的薬・免疫療法を含む)
80巻8号(2018);View Description Hide Description消化器癌領域では手術や放射線により治癒する症例がある一方,微小転移と呼ばれる病変が存在し,再発して治癒が困難となる症例が存在する.微小転移に対する治療においては,術前・術後の化学療法単独や,放射線療法との併用など化学療法が重要な役割をはたしている.さらに近年,診断時に根治切除不能であっても治療に奏効し根治切除可能となる,いわゆるconversion therapy の開発が各臓器ごとにすすんでいる. -
2.放射線治療―重粒子線治療の現状
80巻8号(2018);View Description Hide Description従来,消化器癌に対する放射線治療は,食道癌や肛門癌などの扁平上皮癌を除き根治治療として施行されることは少なかった.これは,消化器癌が放射線抵抗性とされる腺癌が多いこと,また,腫瘍周囲の放射線感受性の高い消化管や膀胱などを避けることができず十分な線量を腫瘍に照射することが困難なことが理由であった.近年,放射線治療機器の急速な進歩により線量集中性が高くかつ生物学的効果(殺細胞効果)の高い治療が可能になってきた.そのため,最近では消化器癌に対する低侵襲な治療法として放射線治療を用いられることが急速に増加している.今回,われわれが施行している重粒子線治療を中心に消化器癌に対する放射線治療の現状を紹介した.なお,本稿では,重粒子線とは重イオン線,なかでも炭素イオン線のことをさす.Gy(RBE)は物理線量に光子線に対する生物効果の相対比であるRBE(relative biological effectiveness)をかけた線量である. -
3.光線力学的療法
80巻8号(2018);View Description Hide Description光線力学的療法(photodynamic therapy:PDT)は,本邦ではporfimersodium(Photofrin)と,talaporfin sodium(Laserphyrin)を用いるPDT が保険適用となっている.Photofrin PDT で使用するエキシマダイレーザがすでに生産中止となったため,主流はLaserphyrin と半導体レーザを用いたPDT へと移行している.Laserphyrin PDT は,現在,早期肺癌,悪性脳腫瘍,食道癌で保険適用となっている.本稿では主に消化器領域で適応となっている化学放射線療法または放射線療法後の局所遺残再発食道癌に対するLaserphyrin PDT について,消化器内科の観点を中心に外科と共同で治療を行っている立場から概説する. -
4.焼灼療法―消化器癌に対する焼灼療法の現状
80巻8号(2018);View Description Hide Description消化器癌に対する焼灼療法としてエビデンスのある適応は肝細胞癌(hepatocellular carcinoma:HCC)に限られ,肝腫瘍であってもその他の癌種には慎重に適応すべきである.肝癌治療アルゴリズムに基づいて,小型HCC(≦3 cm)への適応が原則であるが,さらに血流によるheat-sink 効果やHCC の悪性度などを考慮した適応が肝要である.大腸癌肝転移に対する焼灼療法には新たなエビデンスも加わり,今後の動向が注目される. -
5. 凍結療法― 肝細胞癌に対する凍結療法の現状と今後の展望
80巻8号(2018);View Description Hide Description日常的に出会う肝腫瘍では,肝細胞癌が一番多い.その治療としては,手術が第一選択であるが,肝硬変や肝機能障害などにより切除不能例も多くみられる.その際に局所治療が選択されるが,その一つに凍結療法があげられる.一般的にはラジオ波焼灼術(RFA)が行われているが,凍結療法特有の利点も多い.近年,凍結療法についての報告が多数みられるようになり,良好な成績をおさめている.今回,凍結療法の特徴とともに今後の展望について解説する. - Ⅱ.各論
-
1.食道癌の集学的治療戦略
80巻8号(2018);View Description Hide Description切除可能進行食道癌に対しては手術を治療の軸として,本邦では5-FU+cisplatin併用術前化学療法が標準治療として位置づけられている.現在,術前化学療法・化学放射線療法を比較する3 アームの第Ⅲ相試験(JCOG1409)が進行中である.一方,切除不能局所進行食道癌に対しては根治的化学放射線療法が選択される.さらなる治療成績の向上をめざして5-FU+cisplatin+docetaxel による導入化学療法の有効性を検証する第Ⅲ相試験(JCOG1510)が開始された. -
2.胃癌の集学的治療戦略
80巻8号(2018);View Description Hide Description胃癌に対する治療の中心は切除である.ただし,病態・ステージにより切除手段,薬物療法による対応はさまざまで,いわゆる個別化治療として胃癌治療ガイドラインに詳細に記載されている.今年の1 月に発刊された胃癌治療ガイドライン第5 版は,Clinical Question を多く盛り込み,新たなエビデンスについても記載されている.この胃癌の各論では,主にステージごとの治療指針についてガイドラインに沿った内容で記載しており,現在,現場で行われている実臨床について述べたものである. -
3.大腸癌の集学的治療戦略
80巻8号(2018);View Description Hide Description結腸癌は外科的切除を原則とし,Stage Ⅲおよび再発リスクの高いStage Ⅱの一部において術後補助化学療法が推奨される.最近の臨床試験の結果,再発リスクの低い症例では抗癌薬投与期間を6 ヵ月から3 ヵ月へ短縮可能であることが示唆された.一方,直腸癌では外科的切除および術後補助化学療法に加え,欧米では術前(化学)放射線療法(CRT/RT)を用いた集学的治療が標準治療であり,予防的な側方リンパ節郭清なしで比較的良好な成績が得られている.直腸癌治療成績のさらなる向上のためには,再発リスクに応じた術前全身化学療法の組み合わせが今後の課題である. -
4.原発性肝癌の集学的治療戦略
80巻8号(2018);View Description Hide Description進行肝細胞癌においても,肝切除がファーストラインの根治的治療である.肝切除非適応といったん判断しても,conversion, salvage 目的の肝切除や生体肝移植といった外科的治療の可能性を常に追求すべきである.もっとも予後不良とされていた門脈腫瘍栓や下大静脈腫瘍栓を伴う症例においても,周術期の肝動脈注入化学療法の導入により予後は改善した.今後,奏効率の高い分子標的薬の登場によりさらなる予後改善が期待される.肝内胆管癌において,肝内転移,血管浸潤,リンパ節転移は予後不良因子とされるが,画像診断の進歩や術後補助化学療法の導入により進行肝内胆管癌の切除例の成績は飛躍的に改善した.さらに術前治療の開発をはじめとする集学的治療アプローチの確立が望まれる. -
5.転移性肝腫瘍の集学的治療戦略
80巻8号(2018);View Description Hide Description転移性肝腫瘍(肝転移)は消化器腫瘍の遠隔転移好発部位であり,同時性・異時性や原発疾患の悪性度によってその治療戦略は異なる.一部の肝転移では肝切除を軸とした集学的治療が,予後延長のみならずcure をもたらすこともある.今回,ガイドラインを中心に消化器腫瘍別の治療戦略を概説した.いまだ治療戦略のよい適応対象や治療変更のタイミングは明らかでないが,変遷する化学療法の奏効や肝切除の侵襲を把握しながら,腫瘍種別に前向きな臨床研究を計画し治療戦略を模索・確立していく必要がある. -
6.胆道癌の集学的治療戦略
80巻8号(2018);View Description Hide Description胆道癌における集学的治療として,切除後の補助化学療法の有効性が現在検証中である.逆にいうと,胆道癌では術後補助化学療法でさえいまだに確立されていない.現時点では「第一に切除を行い,その後は無治療経過観察」が基本的な方針である.一方,さまざまな理由で切除不能とされた胆道癌の中には,化学療法が奏効し外科切除が再考されることがある.このような症例をどのように扱うかは今後の検討課題である. -
7.膵臓癌の集学的治療戦略
80巻8号(2018);View Description Hide Description膵癌に対する集学的治療は,抗癌化学療法の進歩を背景に急速に進歩している.2016 年に改訂された第7 版取扱い規約においては切除可能性分類について記載された.これまでの膵癌治療の中心であった外科的切除術に術前,術後補助療法を積極的に組み合わせる集学的治療が,さまざまな臨床試験として施行されている.また,癌免疫療法の進歩などがみられ,そのoncological benefit の可能性が期待されている.外科手術に関しても,集学的治療の一環としてconversion surgery の適応が拡大されるなど,高難易度手術が増加する傾向にある.いまだ難治癌である膵癌に対しては,膵臓外科医のみならず腫瘍内科医,放射線科医などが力を合わせることで,集学的治療の知見をさらに深め,エビデンスを積み重ねていくことが肝要である. -
8. 消化管間質腫瘍(GIST)の集学的治療戦略
80巻8号(2018);View Description Hide DescriptionImatinib の開発により切除不能消化管質腫瘍(GIST)の治療成績は飛躍的に向上した.近年は切除可能GIST に対しても周術期のimatinib 投与が試みられ,術後補助療法に関しては,高リスク症例に対して無再発生存期間が延長することが示された.一方,術前補助療法に関しては長らくエビデンスが確立されていなかったが,日韓共同第Ⅱ相試験の結果が発表され,10 cm 以上の大型胃GIST に対する有効性が確認された.今後,術前補助療法に関するさらなるエビデンスの確立が期待される.
-
臨床経験
-
-
-
症例
-
-
術前CT にて確認できたpress through package の小腸穿孔・腹膜炎に対し腹腔鏡手術が有用であった1 例
80巻8号(2018);View Description Hide Description -
-
-
-