外科
Volume 80, Issue 9, 2018
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特集【ロボット手術の現状と展望】
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- Ⅰ.総論
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1.ロボット手術の歴史と今後の展望
80巻9号(2018);View Description Hide Descriptionわが国では手術支援ロボットの臨床導入がすすんでいる.2018 年4 月新たに12 件のロボット支援手術が保険適用となり,さらなる普及が期待されるところである.1999 年に上市されたda Vinci(Intuitive Surgical 社)は,手術支援ロボットの歴史を築き上げ今日にいたる.近々単孔式内視鏡手術のプラットフォームda Vinci SPがリリースされるなどさらなる進化が期待される.一方で,Intuitive Surgical 社以外のロボットも開発がすすめられている.今後,人工知能を活用した手術の自動化,力触覚の伝送,小型化,軟性化などにより,手術支援ロボットはさらに進化すると思われる. -
2. 日本発手術支援ロボット開発の現状
80巻9号(2018);View Description Hide Description日本国内でも手術支援ロボットda Vinci が普及し,ロボット手術は一般にも広く受け入れられるものとなった.2018 年4 月の保険適用の拡大を受け,さらに普及がすすむと考えられる.現在は手術支援ロボットといえばda Vinci であるが,わが国が誇るロボット技術を駆使した日本発手術支援ロボットの実用化への期待も大きい.本稿では,国内の手術支援ロボット開発の取り組みと最先端の研究動向についてまとめる. -
3. ロボット手術の適応はどこまで広がるのか?―米国の現状
80巻9号(2018);View Description Hide Description米国における,消化器・一般外科ロボット支援手術の現状について概説する.米国ではロボット支援手術は2010 年ごろより一般外科領域の手術にも広く用いられるようになった.ロボット支援手術は腹腔鏡手術の亜系との扱いであり,適応は従来の腹腔鏡手術で行われた術式全般に及ぶ.一方,一般外科レジデンシーにおけるロボット支援手術のトレーニングはいまだ標準化されておらず,術者となる資格認定を含め今後解決すべき課題である. - Ⅱ.各論
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1.心臓手術
80巻9号(2018);View Description Hide Description心臓外科手術は胸骨正中切開アプローチで心停止下に行うものが標準術式とされてきたが,手術支援ロボットを用いることで内視鏡下のバイパス手術や心内手術が可能となった.胸壁の破壊を最小限にするこれらの手術は整容に優れているだけでなく,輸血や合併症の軽減,早期社会復帰を実現する.2018 年4 月以降,術式の一部の保険収載が認められるようになったが,今後は安全な術式の普及のためのシステム,教育が不可欠である. -
2.肺手術
80巻9号(2018);View Description Hide Description手術支援ロボットによる肺手術は臓器特有のリスクベネフィットやコストベネフィットの観点から,普及が遅れてきた.しかしながら,精緻で優れた操作性を有する手術支援ロボットは,特に肺癌手術において肺門剝離操作,リンパ節郭清,肺・気管支の縫合操作などに有用性を認め,術後呼吸器合併症の減少や生活の質(QOL)の向上が報告されてきた.2018 年度から保険適用となり,安全な普及と新たな低侵襲手術としての発展が期待される. -
3.甲状腺手術
80巻9号(2018);View Description Hide Description甲状腺に対するロボット支援手術は整容面を重視しつつ,改良されている.日本での2018 年4月の保険収載は認められなかったため,国内では数施設で臨床研究として行われているのみである.本稿では海外での代表的な方法である経腋窩法ロボット甲状腺手術とその他のロボット支援甲状腺手術の取り組みに関し報告する. -
4.食道手術
80巻9号(2018);View Description Hide Description2018 年より食道切除術においても保険収載されたことにより,多関節鉗子などを有するロボット支援手術が本格的に施行されるようになった.高難度・高侵襲な食道手術においてもロボット支援手術の適応はよいとされ,今後ますます普及すると思われる.しかし,その一方でロボット支援食道切除術の有意性はいまだ不明であり,今後の検討をまたねばならない.本稿ではわれわれが施行している腹臥位経胸腔的なロボット支援食道切除術を解説する. -
5.胃手術― 胃癌に対するロボット手術の現状とこれから
80巻9号(2018);View Description Hide Description本邦における胃癌に関するロボット支援手術は先進医療B の臨床試験を経て,2018 年4 月から保険収載が開始された.従来の腹腔鏡胃切除術と比較してロボット支援胃切除術が上回るという報告は世界的にはいまだ少ないが,今回の保険収載を受けて症例の集積が予想される.さらに今後の手術支援ロボットの技術発展と相乗効果をなし,その利点が示されれば,今後胃癌手術の中心的役割をはたす可能性がある. -
6.大腸手術
80巻9号(2018);View Description Hide Description大腸領域においても直腸癌にロボット手術の保険適用が認可された.狭い骨盤内での精緻な郭清手技に期待がもたれている.術後の生存率への寄与は現時点では明らかではないが,腹腔鏡手術に比して開腹移行率は有意に低く,また排尿機能および男性機能の温存においても有意な機能障害発生率の低下または早期の回復についての報告がなされており,有用な可能性が高い.コストについては依然として高いが,普及に伴って改善してくることが見込まれる. -
7.肝臓手術
80巻9号(2018);View Description Hide Description腹腔鏡下肝切除術は近年急速に普及してきており,最近のメタ解析では開腹肝切除と比較して短期成績に関しては出血量の低下,合併症率の低下,入院日数の短縮などの利点があると証明されてきている.ロボット支援下肝切除術の短期成績に関する報告は世界的には増加傾向であるが,国内ではごく一部の限られた施設で行われているにすぎない.ロボット手術の腹腔鏡手術と比較した手術コストの増加を上回るメリットを証明していくことが,今後重要である. -
8.膵臓手術
80巻9号(2018);View Description Hide Description膵臓における低侵襲手術は1990 年代に報告がみられるようになり,膵体尾部切除術においては普及しつつある状況である.しかし膵頭十二指腸切除術に対する低侵襲手術については,複雑な切除・再建を要することからまだ広く行われている状況ではない.膵臓におけるロボット支援手術のまとまった報告は2003 年にみられ,8 例の膵頭十二指腸切除,5 例の膵体尾部切除が報告された.2018 年現在,膵臓領域のロボット支援手術は保険収載されておらず,日本の診療において一般的に行われているとはいえない状況である.ロボット支援による膵体尾部切除は腹腔鏡手術に比べ出血量の低減や開腹移行率の低減といった利点を示す文献もみられる.またロボット支援による膵頭十二指腸切除は,開腹手術と比べ膵液漏を低減し,そのラーニングカーブは80 例と報告がみられる.腹腔鏡手術と比べた場合にロボット支援による手術は縫合が容易であることが強調され,また一般的にも受け入れやすい利点といえる.膵臓の低侵襲手術,特に膵頭十二指腸切除術におけるさらなる応用が期待される. -
9.泌尿器手術
80巻9号(2018);View Description Hide Description前立腺癌に対するロボット支援下手術は本邦ではじめて保険収載されたロボット支援下手術であり広く普及している.本稿では本手術の術者教育などの取り組み,各工程での留意点などを概説する. -
10.婦人科手術
80巻9号(2018);View Description Hide Description婦人科腹腔鏡下手術は,良性疾患を中心に普及しており,悪性疾患では婦人科特有の事情によりあまり行われていない.一方で婦人科疾患は,臓器の位置的な問題で骨盤腔の深く狭い場所での手術操作が要求され,ロボット手術の特性を十分に生かすことができる可能性がある.2018 年4 月の保険適用により,婦人科悪性腫瘍に対するロボット手術が米国同様にわが国でも広く普及する可能性が考えられる.
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連載
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症例
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胃全摘Roux-en Y 再建術後の胃癌再発による通過障害に対し複数のステント留置を行い良好なQOL が得られた1 例
80巻9号(2018);View Description Hide Description -
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