Volume 80,
Issue 12,
2018
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特集【外科医が知っておくべき最新のゲノム医療】
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Ⅰ.総論
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外科 80巻12号, 1193-1199 (2018);
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がんゲノム医療は,次世代シークエンシングによるパネル検査の結果に基づき個々の患者へ適した治療法を提供する診療的側面とともに,患者から得られたゲノム情報と臨床情報を統合し,がんゲノム情報管理センターの知識データベースへ格納のうえ,データの二次利用,解析などを実施し新たな技術革新につなげるという研究的側面を合わせ持つ.診療としてのゲノム医療では臨床試験を通じて判明した限界を知り,新しい技術の効率的な運用を考える.
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外科 80巻12号, 1200-1204 (2018);
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がんの診断のために行われる生検は,これまで主に組織生検が行われてきたが,低侵襲かつがん組織全体の性質を診断しうる新たな診断法として,末梢血中に流れるがん細胞由来のエクソソームや循環腫瘍DNA(circulating tumor DNA:ctDNA)を検出する「リキッドバイオプシー」の臨床応用が急速に期待され始めた.がん細胞のアポトーシスなどにより血中に放出されるがん由来のゲノムであるctDNA の存在は,70 年ほど前から知られていたが,近年digital PCR や次世代シーケンサー(NGS)の精度が向上し,血漿中のごく微量なctDNA を検出することができるようになり,その臨床応用への期待が一挙に高まってきた.当研究室において消化器癌を対象に行われているNGS を用いたリキッドバイオプシーのfeasibility study では,ctDNA の臨床的意義を示唆する結果が得られている.しかし米国臨床腫瘍学会と米国病理学会の共通の見解として,ctDNA の定量性についてはいまだ課題があることが報告されている.一方EGFR チロシンキナーゼ阻害薬の適応を決めるためのコンパニオン診断薬として,リキッドバイオプシーによるEGFR T790M の定性診断が実用化(保険収載)されるなど,リキッドバイオプシーの臨床導入は今後も拡大していくものと予想される.
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Ⅱ.各論
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外科 80巻12号, 1205-1209 (2018);
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乳癌の術後の生存期間・再発期間の予後予測は,遺伝子発現解析に基づいたMammaPrint(マンマプリント)検査が有効的である.本稿では,新たな外科的癌組織摘出後の患者の癌組織の遺伝子発現プロファイルと術後の生存期間・再発期間を追跡したコホートデータから,新たな予後予測に関連するバイオマーカーの同定,またそれらを組み込み有効性を向上させた生存期間・再発期間予後予測モデルの開発について概説する.
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外科 80巻12号, 1210-1213 (2018);
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食道癌の個別治療標的あるいは診断法の選択のために,癌ゲノム領域の理解と研究成果が望まれている.今日までに生殖細胞系列変異の解析では食道癌罹患の遺伝的要因,環境的要因が明らかであり,体細胞変異解析では高頻度の変異をきたすドライバー変異が報告されている.コピー数変異についても食道癌特異的な染色体レベルの増幅・欠損が明らかである.さらにゲノム研究成果の臨床応用としてcfDNA における体細胞変異検出が超早期再発や治療効果診断に有用と考えられる結果も示されている.本稿ではそれらを中心に述べ,今後の食道癌の診断や治療に有用な標的変異について考察する.
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外科 80巻12号, 1214-1217 (2018);
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胃癌ゲノム分類に特徴的な分子異常が治療標的として有用であり,分子標的薬剤のみならず既存の抗癌薬についても治療効果予測が可能となりつつある.ただし,ゲノム解析データは有用であるが胃癌は多様な細胞成分を有しているため,単独分子で治療戦略を選択することはむずかしいことに注意が必要である.今後の臨床試験では,あらかじめ対象症例の遺伝子プロファイルによって前層別して治療効果を比較するなどの工夫が必要となるであろう.
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外科 80巻12号, 1218-1222 (2018);
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次世代シークエンサーを用いた癌遺伝子パネル検査によって,RAS/RAF 遺伝子をはじめとする薬剤耐性関連の遺伝子変異や,HER2 遺伝子増幅などの治療標的の候補となる遺伝子変異の網羅的検索が大腸癌において可能となる.今後の遺伝子解析に備え,手術や生検組織検体の適切な保存について熟知しておくことが重要である.Lynch症候群の大腸癌はマイクロサテライト不安定性を呈し,免疫チェックポイント阻害薬が有効である可能性が示唆され注目を集めている.癌遺伝子パネル検査の普及によって,Lynch 症候群などの遺伝性腫瘍と診断される症例が今後増加することが予想され,遺伝カウンセリングやサーベイランスなどの患者,家族の支援体制の整備が急務である.
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外科 80巻12号, 1223-1227 (2018);
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肝癌のドライバー変異としては,Wnt シグナル,TP53,テロメア,クロマチン調節因子などが確立されたが,actionability がある変異はわずかである.肝癌ではゲノム情報を用いた治療薬の選択を行うことは実現されていないが,現在承認されているmulti-kinase 阻害薬との効果と関連するゲノム変異が報告されている.今後,肝癌のゲノム情報と分子標的薬の効果などの臨床情報との関連解析がすすむことによって,ほかの分子標的薬や免疫治療薬の肝癌の適応拡大とその効果予測のバイオマーカーが同定でき,肝癌のゲノム医療がすすんでいくものと期待される.
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外科 80巻12号, 1228-1233 (2018);
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大規模な胆道癌症例解析から,FGFR2 キナーゼ関連融合遺伝子や免疫チェックポイント分子を含め,ドライバー遺伝子の全体像と複数の有望な治療標的が明らかになった.一方,症例ごとにドライバー遺伝子の多様性がみられることから,症例層別化が効果的な治療選択において必須である.また治療後増悪例における治療抵抗性変異の腫瘍内多様性が明らかとなり,リキッドバイオプシーも重要である.今後胆道癌について重要なドライバー遺伝子異常に応じて治療法を個別化し,また経時的なモニタリングによって治療を最適化していく「ゲノム医療」がすすむことが期待される.
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外科 80巻12号, 1234-1238 (2018);
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膵癌ではKRAS,TP53,CDKN2A,SMAD4,RNF43,ARID1A,TGFBR2,GNAS,RREB1,PBRM1,MLL3/KMT2C,MLL4/KMT2B,KDM6A の異常が比較的よく認められる.ゲノム医療に関して膵癌に特異的な異常は明らかには示されていないものの,全腫瘍に共通の性質であるミスマッチ修復関連遺伝子,BRCA 群遺伝子の異常と化学療法感受性の関連性は膵癌にも適応となることが示唆される.また,膵癌でよく用いられるpaclitaxel の副作用,irinotecan の効果については患者のgenotype が関係することが知られている.
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外科 80巻12号, 1239-1243 (2018);
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膵神経内分泌新生物は,分化度やKi-67 index に基づいた世界保健機関(WHO)2017 分類により,神経内分泌腫瘍と神経内分泌癌に分けられる.神経内分泌腫瘍においては,家族性と孤発性の場合で発症に関与する遺伝子異常が一部異なる場合があるものの,多くはmTOR pathway に関連する遺伝子異常が認められる.一方,神経内分泌癌においては一般的な悪性腫瘍で報告されているRb 欠失やKRAS 変異が認められる.そのため,両者は異なる遺伝子異常を有する疾患であることを認識したうえで,現在の診療や今後の治療開発を行う必要がある.
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実験的研究
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外科 80巻12号, 1244-1247 (2018);
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症例
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外科 80巻12号, 1248-1251 (2018);
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外科 80巻12号, 1252-1255 (2018);
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外科 80巻12号, 1256-1260 (2018);
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外科 80巻12号, 1261-1264 (2018);
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外科 80巻12号, 1265-1269 (2018);
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外科 80巻12号, 1270-1273 (2018);
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外科 80巻12号, 1274-1277 (2018);
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外科 80巻12号, 1278-1281 (2018);
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外科 80巻12号, 1282-1285 (2018);
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外科 80巻12号, 1286-1290 (2018);
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