Volume 80,
Issue 13,
2018
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特集【肛門疾患の診かた,治療法】
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Ⅰ.肛門疾患の診察法
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外科 80巻13号, 1293-1296 (2018);
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肛門診察は患者が羞恥心を感じやすくまた知覚に敏感な器官なので,未熟な診察では患者の苦痛が大きい.しかし丁寧な診察を行えば,消化管の終末器官であるため得られる情報は少なくない.本稿では肛門科専門医が日ごろ行っている肛門診察の基本を概説するので,診察の参考としていただきたい.
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外科 80巻13号, 1297-1300 (2018);
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直腸肛門内圧検査は直腸肛門機能を評価するための検査として広く認識されており,便失禁や便秘,便排出障害などの排便機能障害の診断や,治療効果の判定にたいへん有用である.測定にはプローブ,圧記録装置,記録表示装置そしてデータ記憶装置が必要であり,項目は排便障害の症状により最大静止圧,最大随意収縮圧や直腸感覚など選択して測定する.測定結果はほかの機能検査や臨床症状を含め総合的に評価判定し,臨床に役立てることが重要である.
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外科 80巻13号, 1301-1305 (2018);
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排便造影検査はbarium を含んだ擬似便を直腸内へ注入し,怒責排出をX 線像で観察し,排便動作時の直腸,S 状結腸,あるいは小腸と骨盤底筋群の動態を観察する検査である.この検査では排便困難型便秘症の原因[直腸瘤,小腸瘤,S 状結腸瘤,会陰下降,直腸重積,骨盤底筋協調運動障害,腹圧(便排出力)低下]の診断,膣後壁脱出が主である骨盤臓器脱(直腸瘤または小腸瘤)の精査,難治性便失禁の病態評価に有用である.
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Ⅱ.肛門疾患の治療
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外科 80巻13号, 1306-1312 (2018);
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現在,痔核の治療は2015 年に硫酸アルミニウムカリウ ム・タンニン酸(aluminumpotassium sulfate hydrate, tannic acid:ALTA)療法(四段階注射法)が行われるようになってから,治療の選択肢も増え,適応も変化してきた.しかしながら,痔核のあらゆる病態にも対応可能である痔核結紮切除術(ligation and excision:LE)は,しっかりと習得すべき術式であると思われる.術式はMilligan-Morgan 法を基礎としており,肛門機能の温存と,根治性の高さ,重大な合併症も少ない術式であると思われる.当院でのLE の術後晩期出血は1.8%,再発率も1.8%ときわめて低い.またLE を主体としたLE+ALTA 併用症例においても,晩期出血は2.0%,再発率も3.0%ときわめて低い.LE の基本的手技を提示する.
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外科 80巻13号, 1313-1317 (2018);
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硫酸アルミニウムカリウム・タンニン酸(ALTA)療法は手技が簡便で術後の疼痛も少なく,使い勝手のよい治療法である.また,最近では併用療法などにも頻繁に使用されている.その一方で重篤な合併症の報告もあるため,適応をしっかり見極め,適正な使用法を行うことが肝要である.Anal cushion lifting(ACL)法は痔核組織を切除することなく,肛門を本来の形態に戻すことによって痔核を治療する手術法である.適応症例は「脱出を伴う全痔核症例」であるが,手術手技をしっかりと把握して行うことが必要である.また,うっ血の強い症例などではALTA を併用するなどの若干の工夫を要する.ACL 法のメリットは,anal cushion や肛門管上皮を切除しないため,術後の肛門機能に影響がでないと思われる点や,美容面に優れる点,術後疼痛が少ない点と思われる.
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外科 80巻13号, 1318-1323 (2018);
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Procedure for prolapse and hemorrhoids(PPH)の適応は3 ヵ所以上脱肛する内痔核,あるいは直腸粘膜脱である.Circular ano dilator(CAD)挿入,巾着縫合(運針のピッチ・深さ,歯状線からの距離,糸の締り),アンビルヘッドの適切な位置への挿入,ファイアリング時にCAD とPPH 本体を平行にする手技,止血縫合などの手技が再発率や併発症に影響する.特に巾着縫合は低い位置よりも歯状線の4 cm 口側で施行するのが術後疼痛や術後出血,直腸狭窄などの併発症が少なく優れている.
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外科 80巻13号, 1324-1330 (2018);
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痔瘻の診断でもっとも重要なのは,視・触診ならびに肛門指診である.坐骨直腸窩痔瘻や骨盤直腸窩痔瘻などの深部痔瘻は,その進展様式により独特の触診所見を呈する.経肛門超音波検査や肛門部MRI 検査は診断を確実とし,さらに根治手術に必要な情報を得ることができる.後方のⅡ型痔瘻には開放術式が行われることが多いが,minimalseton 手術はあらゆる方向のⅡ型痔瘻,およびそれに類縁する痔瘻に適応可能で,再発や機能障害もほとんどない術式である.
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外科 80巻13号, 1331-1334 (2018);
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高位筋間膿瘍は歯状線より口側の筋間に膿瘍を形成したもので,一般的に肛囲皮膚に発赤や腫脹をきたさないため診断困難な場合が多い.触診で直腸後壁側を主体とした弾性軟な腫瘤として触知し,圧痛を伴う.ドレナージに際しては局所麻酔では困難で,腰椎麻酔または硬膜外麻酔が望ましい.筋間から直腸側へドレナージを行い十分排膿させる.肛門挙筋を介して会陰側にドレナージを行うと,新たな痔瘻を形成し難治化するので注意を要する.
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外科 80巻13号, 1335-1342 (2018);
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2012 年4 月~2014 年9 月に当院で坐骨直腸窩痔瘻に対して浅外括約筋外切開アプローチ法による括約筋温存術で根治術を行い,術後24 ヵ月以上経過観察した坐骨直腸窩痔瘻(100 例)を対象とした.手術時間は坐骨直腸窩痔瘻(隅越分類Ⅲ型)28 分,骨盤直腸窩痔瘻(Ⅳ型)47 分,治癒日数はⅢ型72 日,Ⅳ型125 日,累積再発率はⅢ型2.0%,Ⅳ型4.5%であった.括約不全は,術後24 ヵ月後まで定期的に経過観察した42例をWexner’s score の平均でみると,術前0.7 →術後1 ヵ月4.6 →術後3 ヵ月1.6 →術後6 ヵ月2.6 →術後12 ヵ月0.6 →術後24 ヵ月0.6 であり,術後12 ヵ月以上経過すると,括約不全はほぼ消失した.肛門内圧検査を術前→術後3 ヵ月→術後6 ヵ月→術後12 ヵ月,術後24 ヵ月で比較すると,MRP(cm/H2O)は103.2 → 80.2 → 82.3 → 82.4 →89.3 で,術前と術後3 ヵ月,術前と術後6 ヵ月,術前と術後12 ヵ月では有意差を認めたが,術前と術後24 ヵ月では有意差はなかった.MSP(cm/H2O)は272 → 218 →248 → 265 → 288 で,どの期間も有意差はなかった.
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外科 80巻13号, 1343-1350 (2018);
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裂肛は肛門上皮に生じた亀裂(裂創),びらんなど非特異的潰瘍性病変の総称である.成因として肛門上皮の損傷説や肛門腺感染説,肛門括約筋の痙攣,肛門管静止圧の上昇とそれに伴う肛門管上皮の虚血状態が関与している.幼児から成人まで罹患年齢も幅広く,排便習慣や生活様式なども含めた個々の症例に応じた病態の把握や治療方針の検討が必要である.急性裂肛が慢性化し,保存的治療で改善せず,器質的な肛門管伸展不良や狭窄を認めた場合は外科的治療の適応となる.
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連載
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外科 80巻13号, 1351-1353 (2018);
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症例
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外科 80巻13号, 1354-1358 (2018);
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外科 80巻13号, 1359-1363 (2018);
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外科 80巻13号, 1364-1368 (2018);
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外科 80巻13号, 1369-1373 (2018);
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外科 80巻13号, 1374-1378 (2018);
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外科 80巻13号, 1379-1382 (2018);
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外科 80巻13号, 1383-1386 (2018);
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外科 80巻13号, 1387-1390 (2018);
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