外科

Volume 81, Issue 3, 2019
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特集【肥満症例に対する腹腔鏡下手術】
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- Ⅰ.総論
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1. 高度肥満症例・糖尿病合併症例に対するmetabolic surgery の歴史と展望
81巻3号(2019);View Description
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高度肥満症に対する外科治療は1950 年代に欧米にて開始され,世界的に増加傾向にある.本手術は減量外科として開始されたが,併存する代謝性疾患に劇的な効果をもたらすため,近年ではmetabolic surgery として再認識されている.本邦では1982 年に開始され,2007 年の日本肥満症治療学会の設立を契機に改めて取り組まれ,2015 年には1,000 例を超えた.今回,登録データをもとに,本邦における肥満外科手術の安全性と有効性を検証し,metabolic surgery の今後の方向性を考察する. -
2. 肥満症例に対する腹腔鏡下手術のpros and cons
81巻3号(2019);View Description
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高度肥満症例に対する腹腔鏡下手術では,皮下や内臓脂肪によりポート挿入が困難であること,ポートの可動性が制限されること,さらには術野確保が困難であることからその難易度は高くなる.さらに並存疾患による影響も考慮する必要がある.しかし減量手術が普及した背景には,開腹手術で困難であった視野確保が比較的容易であるといった点もある.一概に高度肥満症例は開腹手術とするのではなく,術前減量などを適切に行って手術の難易度をさげる工夫が重要である. - Ⅱ.各論
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1. 高度肥満症例に対する内視鏡的胃内バルーン留置術
81巻3号(2019);View Description
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内視鏡的胃内バルーン留置術は,わが国では2004 年に導入・開始され,現在まで290 例に施行されている.日本内視鏡下肥満・糖尿病外科研究会の第5 回アンケート調査によると,平均バルーン留置期間は188 日,胃部不快による1 ヵ月以内の早期抜去を22 例(7.6%)に認めた.平均減少体重および超過体重減少率(%EWL)はそれぞれ11 kg,38%であった.著効の目安とされる%EWL≧25%は239 例中144 例(60%)に達成されていた.また抜去後1 年の経過観察が可能であった119 例のうち,%EWL≧25%を達成できていたのは52 例(44%)と比較的良好であった. -
2. 高度肥満症患者に対する腹腔鏡下スリーブ状胃切除術の手技と注意点
81巻3号(2019);View Description
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代謝改善手術(metabolic surgery:MS)の術式の一つである腹腔鏡下スリーブ状胃切除術(laparoscopic sleeve gastrectomy:LSG)は,胃大彎側を約80%切除して胃をスリーブ(袖)状の胃管に形成する食事摂取制限手術である.皮下脂肪が厚い高度肥満症患者では,血管損傷や臓器損傷などの術中偶発症を起こさないように,腹壁の層解剖を確認しながら第1 トロカールを安全に挿入することが重要である.胃切除時には,上部消化管内視鏡,または36 Fr のブジーを胃内にステントとして挿入し,食道壁への噛み込み,胃管の狭窄やねじれに注意しながら,幽門輪から約5 cm の幽門前庭部大彎からHis 角に向かい自動縫合器切除を行う.胃上部の切除操作では視野不良や技術的な問題で縫合不全の危険性が高くなるので,His 角近傍の胃壁は余裕をもって残して胃切除を行い,最上部のステープル断端は,確実に漿膜筋層縫合で埋没すると同時に胃管径の調整を行うことがポイントとなる. -
3. 高度肥満症例に対する腹腔鏡下スリーブ十二指腸空腸バイパス術の有用性
81巻3号(2019);View Description
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腹腔鏡下スリーブバイパス術(laparoscopic sleeve gastrectomy with duodenojejunal bypass:LSG-DJB)は,スリーブ状胃切除術(sleeve gastrectomy:SG)に十二指腸空腸バイパス(duodenojejunal bypass:DJB)を組み合わせた術式である.日本人高度肥満者に対する高い減量ならびに肥満関連疾患改善効果が示されている.今後,非高度肥満2 型糖尿病患者に対する代謝手術(メタボリックサージェリー)としても発展が期待される. -
4. 肥満症例に対する腹腔鏡下幽門側胃切除術の留意点と工夫
81巻3号(2019);View Description
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Body mass index(BMI),visceral fat area(VFA),subcutaneous fat area(SFA)などの肥満指数の中で,VFA がより正確に肥満程度を示している.高BMI値,高VFA 値を示す肥満胃癌症例,特に高VFA 値の男性に対する手術の難易度は高く,術後合併症の頻度も高い.よって適切なポート位置の設定,血管走行を重視した解剖学的位置関係の把握,丹念な操作などを駆使し,経験のある術者が手術に臨むことが推奨される. -
5. 肥満症例に対する腹腔鏡下胃全摘術の留意点と工夫
81巻3号(2019);View Description
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肥満患者に対する腹腔鏡下胃全摘術は,多量の内臓脂肪により術野展開,郭清・再建操作に難渋することが多い.適切な術野展開のためには,ポートの選択・配置,肝臓の圧排法,ミスト対策などの工夫が必要となる.また解剖の誤認を防ぐため,生理的癒着の剝離による正常解剖への復帰,場面ごとの適切な術野展開が必要となる.再建はサーキュラーステープラーを用いたRoux-en Y 法で施行しており,再建法における工夫についても解説する. -
6. 肥満症例に対する腹腔鏡下結腸切除術の留意点と工夫
81巻3号(2019);View Description
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結腸癌に対する腹腔鏡下手術は広く普及しているが,肥満症例では難易度が高く,慎重な手技が求められる.われわれは肥満症例についても特に制限を設けることなく腹腔鏡手術の適応としている.重要なことは正確な層の同定,十分な剝離授動,重要なメルクマールとなる解剖学的指標をみつけ,そこから離れないように慎重な剝離操作を行うことと考えている.本稿では右側,左側における肥満症例に対する腹腔鏡下手術の留意点と工夫について述べる. -
7. 肥満症例に対する腹腔鏡下直腸切除術の留意点と工夫
81巻3号(2019);View Description
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大腸癌手術における腹腔鏡手術は導入から四半世紀が経過し,全国的にも普及した手術手技であるが,肥満症例に対する腹腔鏡下直腸手術は手技的に困難な場合も多く,術後合併症のリスクも高い.助手による視野展開が重要なことはいうまでもないが,完璧な視野展開が得られない場合も多く,そのような状況下でも適切な剝離を行うためには術者の高い技量が要求される.本稿では,肥満症例の腹腔鏡下直腸切除における注意点・工夫について述べる. -
8. 肥満直腸癌症例に対する経肛門的直腸間膜切除術(TaTME)
81巻3号(2019);View Description
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直腸癌治療においては,直腸周囲切除断端(CRM)を確保した切除術を実施することが重要である.しかしながら,肥満症例における腹腔鏡下直腸癌手術は高難度であり,CRM を確保することは容易ではない.経肛門的直腸間膜切除術(transanal TME:TaTME)は,経腹的アプローチと比べて操作性が良好であり,CRM 確保において有用である可能性がある.TaTME を導入する際は特有の解剖理解が必要であり,本稿においてピットフォールを概説する.
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私の工夫
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症例
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成人Hirschsprung 病に対して低位前方切除術とdouble stapling technique(DST)吻合を施行し著明な排便機能の改善を認めた1 例
81巻3号(2019);View Description
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