外科

Volume 81, Issue 4, 2019
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特集【NCD をどう活用するか】
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- Ⅰ.総論
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1.NCD の基本理念
81巻4号(2019);View Description
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2011 年から登録が開始されたNational Clinical Database(NCD)は,新規加盟学会ならびに関連する領域の登録も加わり,2017 年時点で登録症例数は約1,000 万件である.これら登録されたデータは利活用されてはじめて意義をなすことから,各領域学会のannual report,各施設の医療水準評価,さまざまな臨床疫学研究,さらには市販後調査などにも利用されている.そのNCD の基本理念と現状について概説する. -
2. ビッグデータ時代のデータベースを用いたデータ解析の注意点
81巻4号(2019);View Description
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医療の世界でもリアル・ワールド・データがビッグデータと一緒に用いられ,関心が高まっている.特にNational Clinical Database は悉皆性が高いことでバイアスが少なく,さらにランダム化比較試験では検出できないまれな事象の解析にも力を発揮することが期待されている.また,ランダム化比較試験の実施が困難な状況では,エビデンスを創出する手段としてその役割は大きい.それでも解析する際や,解析結果には観察研究としていくつかの注意すべき点があるので,それらについて論じたい. - Ⅱ.各論
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1. 心臓血管外科におけるNCD データの有効活用
81巻4号(2019);View Description
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日本心臓血管外科手術データベース(JCVSD)がNational Clinical Database(NCD)と合流し,外科系手術データベースが大きく発展した.術前のリスク計算式,JapanSCORE Ⅱがスマートフォンアプリでも使用可能となり,その有効利用がより簡便となった.また,フィードバック機能を定期的に利用することにより自施設の医療の質向上が見込まれる. -
2. 呼吸器外科におけるNCD データの有効活用
81巻4号(2019);View Description
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2014 年に立ち上げたNational Clinical Database(NCD)呼吸器外科領域は,4 年間で37 万例の手術(肺癌手術16 万例)に関するデータを有するシステムとなった.このビッグデータを利用して,呼吸器外科手術のリスク評価とリスク調整を行ったうえでの施設パフォーマンスの評価が可能となり,日本の手術の質向上に大いに役立つものと期待される.今後はNCD に連携した前向き登録システムの拡張や,医療経済評価などさまざまな機能を実装できる基盤となろう. -
3. 食道外科におけるNCD データの有効活用
81巻4号(2019);View Description
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食道癌手術は高難度手術であり,その治療成績には施設間格差が生まれやすい.本邦における食道外科実臨床の実態を知るためには,National Clinical Database(NCD)データを用いた全国データの分析は非常に有用な手段といえる.2013 年から食道外科に関するNCD 研究がいくつか実施され,その中の一部はすでに論文化された.本邦でこれまで実現できなかったビッグデータの解析により,患者因子,手術因子,施設因子における食道外科のリスク評価がすすんでいる. -
4. 胃外科におけるNCD データの有効活用
81巻4号(2019);View Description
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National Clinical Database(NCD)データを用いた胃癌に対する胃切除術の治療成績について,これまでに9 編の論文が発表された.死亡,合併症予測モデルが構築され,Risk Calculator として日常診療に利用されている.また,急速に普及した腹腔鏡下胃切除術のリアルワールドが報告され,現状と問題点が明らかにされた.さらに,集約化という観点からhospital volume と治療成績の関係が報告された.今後,胃癌登録との連携が開始され,長期予後も含めたデータベースとしてさらなる発展が期待される. -
5. 大腸外科におけるNCD データの有効活用
81巻4号(2019);View Description
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National Clinical Database(NCD)データの集積と詳細な解析により,大腸外科においては右半結腸切除術と低位前方切除術について術後死亡率や合併症発生率の予測ならびに自施設の治療成績の把握が可能となってきた.今後はほかの大腸外科手術術式についても同様のフィードバックがなされるようになると考えられる.われわれ臨床医は,フィードバックされた情報を術前のインフォームド・コンセントに取り入れ,また自施設の診療内容を見直すきっかけとするように努めなければならない. -
6. 肝胆膵外科におけるNCD データの有効活用
81巻4号(2019);View Description
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医療ビッグデータの一つであるNational Clinical Database(NCD)が肝胆膵外科領域でどのように有効に活用されてきているかを,NCD を用いた認定医制度の評価・NCD を用いたリスクモデルの構築・NCD を用いた腹腔鏡手術の安全性の検討・肝胆膵外科領域におけるがん登録のNCD 移行の4 項目に分けて述べる. -
7. 乳腺外科におけるNCD データの有効活用
81巻4号(2019);View Description
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2014 年度から日本乳癌学会が主体となり,National Clinical Database(NCD)-乳癌登録データを利用した研究をすすめている.これまでに11 課題が採択され,すでに論文化や学会発表されたものから現在解析中のものまで含まれているが,いずれも未解決の臨床的なクエスチョンに対する重要な研究である.2015 年から予後情報の収集が開始されており,今後NCD-乳癌登録の予後データが充実してくることによって,より研究の幅が拡大すると思われる.一方で,NCD データを用いた手術リスクや合併症の評価,手術集約化の検討は,乳腺外科という領域の特徴を考えると適したアプローチとは言い難く,今後の課題と考えられる. -
8. 小児外科におけるNCD データの有効活用
81巻4号(2019);View Description
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小児外科領域でも2011 年にNational Clinical Database(NCD)への登録を開始した.2015 年からは医療品質評価を目的としたNCD-P への登録を開始し,その後NCD-P を利用したリスクモデルの構築と公募研究を開始した.小児外科領域ではアウトカムイベントの頻度が低い,術式分布が広範囲にわたる,病態や個体差が大きいなどの特徴があるが,難易度の高い手術やリスクの高い病態に対象を絞り込むことにより,適切なリスクモデルを構築し,大規模研究を推進して医療水準の向上をめざしている.
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臨床と研究
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症例
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