外科

Volume 81, Issue 11, 2019
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特集【消化器腫瘍に対する腹腔鏡・内視鏡合同手術(LECS)up date】
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- Ⅰ.総論
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1.LECS 概論―LECS 開発の経緯とその後の発展
81巻11号(2019);View Description
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2006 年にわれわれは粘膜病変を有さない5 cm 以下の胃粘膜下腫瘍に対して腹腔鏡・内視鏡合同手術(LECS)を開発し,現在まで安全に適応してきた.2014 年には胃局所切除に内視鏡処置を併施する手技としてLECS が保険収載され,国内外に普及しつつあり,将来の発展が期待される.近年はinverted LECS,closed LECS,CLEANNET,NEWS など,悪性腫瘍に対するLECS 関連手技が開発され,リンパ節転移のリスクがない早期胃癌に対して臨床応用されている.将来的には,胃癌に対してLECS とセンチネルリンパ節生検の併用にも期待がかかる.また,超高齢者の緩和胃癌手術への応用へも有用な術式となりうる. -
2. 内視鏡機器および周辺機器の進歩によって期待されるLECS の将来像
81巻11号(2019);View Description
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腹腔鏡・内視鏡合同手術(laparoscopic and endoscopic cooperative surgery:LECS)における内視鏡技術は,主に内視鏡的粘膜下層剝離術(endoscopicsubmucosal dissection:ESD)の開発により生まれてきた技術である.ESD は内視鏡機器および周辺機器の進歩とともに開発されてきた.これらの内視鏡技術と腹腔鏡技術とのコラボレーションにより, 従来のclassical LECS が誕生し,closed LECS,NEWS,CLEAN-NET へと広がりをみせている.これらの発展により胃内腔と腹腔内を交通させない手技が可能となり,胃粘膜下腫瘍から上皮性腫瘍への応用がすすんでいくことが期待される. - Ⅱ.各論
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1.各種LECS 手技:1)LECS における内視鏡のポイント
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腹腔鏡・内視鏡合同手術(laparoscopic and endoscopic cooperative surgery:LECS)を行う際,内視鏡医は内視鏡的粘膜下層剝離術(endoscopic submucosaldissection:ESD)の手技を応用して行うが,ESD に習熟した医師であれば,特にむずかしい手技ではない.しかしながら,内視鏡室と手術室という違いからくる配置の違いや,被膜損傷を避けるように粘膜切開を行う点など,早期胃癌で行うESD とは異なる点を十分に理解し行う必要がある.また,全層切開の際は,適切なトラクションをかけてもらうためにも,外科医とのコミュニケーションを図りながら治療をすすめることが大事である. -
1.各種LECS 手技:2) Classical LECS―inverted LECS
81巻11号(2019);View Description
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腹腔鏡・内視鏡合同手術(laparoscopic and endoscopic cooperative surgery:LECS)は従来の腹腔鏡下局所切除における余剰な胃壁切除を最小限にする手技として開発された,内視鏡医による胃内手術と,外科医による腹腔鏡手術を同時に協調しながら行う手技である.当初は粘膜欠損(delle)を有さない消化管間質腫瘍(GIST)を中心とした胃粘膜下腫瘍(SMT)に対する手術として開発され,現在は機能温存・低侵襲手術として保険適用となったことで急速に普及している.しかし当初は腫瘍の露出や内容物の漏出など,腫瘍細胞の播種や腹腔内感染リスクが懸念されていた.その問題点をクリアするために改良されたのがinverted LECS であり,腫瘍の部位,サイズに関係なく施行できる汎用性の高さが特徴である.本稿ではclassical LECS とinverted LECS の二つの手技を紹介する. -
1.各種LECS 手技:3)Closed LECS
81巻11号(2019);View Description
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管内発育型や壁内発育型消化管間質腫瘍(gastrointestinal stromal tumor:GIST)を主体とした5 cm 以下の胃粘膜下腫瘍の手術療法は,内視鏡・腹腔鏡合同手術(laparoscopic and endoscopic cooperative surgery:LECS)の登場により必要最小限の胃部分切除を低侵襲手術として行うことが可能となった1,2).しかし,LECS 原法(classical LECS)では腫瘍切除の過程で胃内腔と腹腔が交通し,腫瘍も腹腔内に露出するため,潰瘍のあるGIST や早期胃癌は適応外と考えてきた.それらに対応するために胃壁を開放しない,あるいは胃内容物を撒布しない方法として,すでにいくつかの手技が臨床応用されているが3~5),筆者らはclassical LECS を発展させたclosed LECS を考案したので6,7),手術手技について概説する. -
1.各種LECS 手技:4) NEWS(non-exposed endoscopic wall-inversion surgery)―NEWS の適応と方法
81巻11号(2019);View Description
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胃の内腔を開放せずに胃の粘膜下腫瘍(SMT)を切除できるnon-exposed endoscopic wall-inversion surgery(NEWS)は,潰瘍を伴うSMT も適応となる.内視鏡下で腫瘍周囲にヒアルロン酸を十分に局注後に,腹腔鏡下で腫瘍周囲の漿膜筋層を切開し,腫瘍を内反させながら漿膜筋層を縫合し,endoscopic submucosal dissection(ESD) テクニックで腫瘍を切除する.NEWS は非穿孔式laparoscopic and endoscopic cooperative surgery(LECS)であり,上皮性腫瘍も適応となる.内視鏡医と腹腔鏡医の密な協力が必要となるが,胃SMT および上皮性腫瘍に対して有用な低侵襲性手術である. -
1.各種LECS 手技:5) CLEAN-NET(combination of laparoscopic and endoscopic approaches to neoplasia with non-exposure technique)
81巻11号(2019);View Description
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CLEAN-NET(combination of laparoscopic and endoscopic approaches to neoplasia with non-exposure technique)は,腹腔鏡・内視鏡合同手術(laparoscopic and endoscopic cooperative surgery:LECS)の一方法である.主として早期胃癌の高度瘢痕症例などの内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)困難例に対し,ESD と腹腔鏡下手術の間を埋める治療法として考案された.CLEAN-NET とは,経口内視鏡と腹腔鏡の組み合わせで“胃内腔を腹腔内に開放することなく”胃の局所切除(全層)を行う方法であり,sentinel node navigation も併用し領域リンパ節の郭清も行ってきた.もちろん,胃内(管内)発育型の粘膜下腫瘍[主に消化管間質腫瘍(GIST)]もよい適応となる.胃壁(特に固有筋層)の切除範囲を最小限にとどめる低侵襲手術の一つとして位置づけている. -
1.各種LECS 手技:6) 胃噴門部および接合部病変(LECS 困難例)に対する手技の工夫
81巻11号(2019);View Description
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2008 年にHiki らにより胃粘膜下腫瘍に対する腹腔鏡・内視鏡合同手術(laparoscopic and endoscopic surgery:LECS)が提唱され1),本邦においても導入している施設が増えている.食道胃接合部(esophagogastric junction:EGJ)近傍のLECS は噴門側胃切除や胃全摘を回避でき,もっともLECS の恩恵が受けられる術式である.しかし,視野の確保や切除後の縫合の難易度が高く,導入に踏み切れずにいる施設も多いと思われる.筆者らは,食道胃接合部近傍のLECS に対し,安全に施行するためにU 字切開法を施行しており2,3),その詳細について解説する. -
2.胃粘膜下腫瘍以外に対するLECS:1)胃癌に対するLECS の応用
81巻11号(2019);View Description
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腹腔鏡・内視鏡合同手術(LECS)は,粘膜病変を有さない2~5 cm の胃粘膜下腫瘍や,増大傾向のある2 cm 未満の胃粘膜下腫瘍に対する鏡視下手術における選択肢の一つである.近年では悪性腫瘍に対するLECS 関連手技が開発され,内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)が困難な早期胃癌症例など,症例を選んで胃癌に対しても臨床応用されてきている.また,多施設共同試験で胃癌に対してLECS とセンチネルリンパ節生検の併用が検証されており,今後,LECS を含む胃癌治療の発展が期待される. -
2.胃粘膜下腫瘍以外に対するLECS:2)十二指腸腫瘍に対するLECS
81巻11号(2019);View Description
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非乳頭部十二指腸腫瘍に対する標準的治療は確立していない.外科手術は過大侵襲な一方で,内視鏡治療(endoscopic resection:ER)は胆汁膵液暴露による遅発性穿孔・後出血が問題となる.低侵襲かつ安全な治療法としてわれわれは2011 年7 月以降,腹腔鏡・内視鏡合同手術(duodenal-laparoscopy and endoscopy cooperative surgery:D-LECS)を積極的に行ってきた.現在はover-the-scope clip(OTSC)system で切除後の潰瘍底を縫縮する内視鏡治療を主に行っているが,D-LECS の実際の手技や適応を理解しておくことは,非乳頭部十二指腸腫瘍に対して治療法を選択するうえで肝要である. -
2.胃粘膜下腫瘍以外に対するLECS:3) 大腸腫瘍に対するLECS
81巻11号(2019);View Description
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大腸疾患に対する腹腔鏡・内視鏡合同手術(laparoscopic and endoscopic cooperative surgery:LECS)は,内視鏡的切除(ER)の適応であるのに,それができないような一部の上皮性腫瘍あるいは粘膜下腫瘍には有用なことがある.しかしその適応は非常に限られ,また手技においては血流障害や狭窄をきたさないための工夫や腸管内用液の腹腔内への漏出を防止するための工夫が必要である.これまでに17 例の大腸腫瘍に対して同手技を施行し,その短期成績は良好であった.本稿では同手技について解説する.
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連載
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臨床と研究
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症例
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単孔式totally extraperitoneal repair 法(SILS-TEP)により修復した膀胱ヘルニアの1 例
81巻11号(2019);View Description
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書評
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