外科
Volume 82, Issue 1, 2020
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特集【周術期感染対策Update】
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- Ⅰ.総論
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1.術前処置・術中消毒法
82巻1号(2020);View Description Hide Description手術部位感染(SSI)は手術の際の潜在的な合併症であるが,予防可能な医療関連感染である.2018 年,『消化器外科SSI 予防のための周術期管理ガイドライン2018』が消化器外科領域を対象として作成された.術前処置として,術前鼻腔黄色ブドウ球菌保菌者への除菌,栄養障害患者への術前栄養介入,術前禁煙,大腸手術患者に対する術前機械的腸管処置と経口抗菌薬の併用などが推奨された.また,術中消毒薬としては,クロルヘキシジンアルコールが推奨された.しかし,エビデンスが十分でないものも少なくない.今後のさらなるエビデンス構築が望まれる. -
2.術中感染対策のエビデンス
82巻1号(2020);View Description Hide Description手術部位感染(SSI)防止に関するガイドラインが,世界保健機関(WHO),米国外科学会,米国疾病予防管理センター(CDC)などからいくつも発表されている.それぞれのガイドラインはエビデンスに基づいて作成されたとされているが,その推奨内容にはガイドライン間でばらつきがみられる.本稿で言及した術中感染対策に関しても同様である.各施設は各ガイドラインの推奨内容に関して,その理由,背景を批判的に吟味して,どのような対策を取り入れるか決めていくのが適当である. -
3.標準予防策と感染経路別予防策
82巻1号(2020);View Description Hide Description標準予防策と感染経路別予防策は院内感染対策の基本となる概念であり,特に手指衛生や個人防護具(PPE)の適切な装着を中心とした標準予防策は日々の診療において遵守されなければならない重要な感染対策である.本稿では,これらの感染対策について実践すべき具体的な内容や,周術期においてこれらの感染対策がどのような効果をもたらすかについて簡単に説明する. - Ⅱ.各論
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1.上部消化管における周術期感染管理:1)食道外科における周術期感染管理
82巻1号(2020);View Description Hide Descriptionわが国の食道外科は食道癌に対する食道切除再建術が中心で,近年急速に普及した鏡視下手術では縫合不全以外の手術部位感染・呼吸器合併症・敗血症の減少が期待される.しかし,縫合不全と肺炎はまだ高率に発症し,今後も対策が必要である.近年,食道癌術後感染性合併症が有意な長期予後不良因子と報告され,安全な手術が感染症対策かつ予後向上のために求められる.周術期のチーム医療による感染対策に加えて,抗菌薬の適正使用と感染症発症時の迅速な対応も必要である. -
1.上部消化管における周術期感染管理:2)胃外科における周術期感染管理
82巻1号(2020);View Description Hide Description胃外科手術における周術期感染症は,入院期間延長や医療コスト増加などの短期的な問題に加え,生命予後にも影響を及ぼしている.したがって,術前から多職種でサーベイランスを実施し予防対策を行うことが重要である.術中は,従来慣習的に行われてきた処置を見直し,感染予防目的で使用する抗菌薬投与も二次感染予防のため,限定的にする必要がある.術後は患者の状態を丁寧に観察し,感染症が疑われる場合には画像検査やドレナージを躊躇なく行い,早い段階で対応していかなければならない. -
2.下部消化管における周術期感染管理
82巻1号(2020);View Description Hide Description下部消化管手術はほかの部位に比較し腸内の常在細菌により手術部位が汚染されやすいため,手術部位感染(SSI)発生率は高率である.そのため腸内の常在細菌をコントロールする目的で,下部消化管手術の対策として術前腸管処置[機械的腸管処置(MBP)と化学的腸管処置(OABP)]がある.本邦ではMBP のみが行われることが多いが,多くのガイドラインではMBP とOAPP を併用するfull bowel preparation(FBP)が推奨されている. -
3.肝胆膵外科における周術期感染管理:1)肝臓外科における周術期感染管理
82巻1号(2020);View Description Hide Description肝切除においては,肝炎ウイルスや糖尿病,化学療法などにより背景肝に障害を生じていることも少なくなく,また胆汁漏のリスクもあるため,周術期感染には注意を要する.周術期感染に影響を及ぼす因子は,術前準備,術中の肝離断の方法や使用する糸やデバイスの選択,ドレーン留置の有無,術後予防的抗菌薬の投与期間や胆汁漏の対策にいたるまで多岐にわたり,最適解を見出すことは容易ではないが,科学的根拠に基づき改善を試みる姿勢が,周術期感染を減少させるためには肝要である. -
3.肝胆膵外科における周術期感染管理:2)胆膵外科における周術期感染管理
82巻1号(2020);View Description Hide Description胆膵外科手術は大侵襲手術であり,さらに術前胆道ドレナージの施行や術中胆汁汚染,術後の膵液瘻などの関与により感染性合併症が生じやすい.術前胆道ドレナージや予防抗菌薬の選択に留意するとともに,胆汁培養・ドレーン管理などから得られる情報を十分に活用した周術期感染管理,栄養管理が重要である. -
4.ICU・重症患者における感染対策:1)カテーテル関連血流感染対策
82巻1号(2020);View Description Hide Descriptionカテーテル関連血流感染(catheter related blood stream infection:CRBSI)は,血液が感染源となっている重篤な感染症につながる疾患である.カテーテル留置時には万全の予防対策を行うことが必要である.またCRBSI を疑った場合には,診断のために培養検査を確実に行い,早期のエンピリック治療から,適切な標的治療を行ことが重要である.
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連載
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- 留学はおもしろい!第1回
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臨床経験
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症例
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CT で術前診断し虫垂の温存とメッシュを用いたヘルニア修復が可能であったde Garengeot hernia の1 例
82巻1号(2020);View Description Hide Description -
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回盲部膿瘍による門脈血栓症に対してdanaparoid sodium が有効であったプロテインC 欠乏症の1 例
82巻1号(2020);View Description Hide Description -
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書評
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