外科
Volume 82, Issue 3, 2020
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特集【高齢者に対する消化器外科治療】
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- Ⅰ.総論
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1.外科治療における高齢者と若年者の違い
82巻3号(2020);View Description Hide Description人口の高齢化を主な要因として,がんの死亡数と罹患数はともに増加し続けている.しかし,本邦の診療ガイドラインなどにおいて,高齢がん患者への消化器外科治療についての記載はとぼしいため,高齢がん患者の診療方針に悩みながら取り組んでいる外科医が多いと推察される.そこで本稿では,米国外科学会および米国老年医学会が発表した高齢者の外科手術時の適切な評価・対応を定めた合同ガイドラインを引用しながら,その概略を説明する. -
2.高齢者の耐術能をどのように評価するか
82巻3号(2020);View Description Hide Description日本は超高齢社会に突入しているが,今後も高齢者の割合は増加し続けると推定されており,高齢癌患者に遭遇する機会が増えていくことになる.高齢者は非高齢者と比較して主要臓器機能が低下し,併存疾患を有することが多いが,身体機能,認知機能,社会背景の個人差が大きく,暦年齢だけでは手術リスクの判断が困難である.高齢癌患者にはより個別化された治療の提供が求められるが,そのためには適正な術前リスク評価を行う必要がある. - Ⅱ.各論
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1.高齢者食道癌の治療戦略
82巻3号(2020);View Description Hide Description高齢食道癌患者に遭遇する機会は増加している.客観的に対象を区分し,各対象群に対して適切に治療を選択することが診療の要点になる.近年,癌治療における高齢者機能評価の有用性が指摘されているが,食道癌患者を対象に多面的に評価を行った報告はほとんどない.今後の展開のためには食道癌患者における高齢者機能評価ツールの検証が必須であり,同時にvulnerable 患者に対する至適な治療戦略を検討していかなければならない. -
2.高齢者食道癌に対する周術期対策
82巻3号(2020);View Description Hide Description80 歳以上の食道癌患者を対象とした食道癌周術期管理について,当院では多職種がかかわるチーム医療として特に術後肺炎の予防および早期社会復帰をめざした取り組みを行っている.術前は各職種が分担して,機能評価および高リスク患者への複合的介入を行う.術式は,リスク軽減を目的とした縦隔鏡下手術や二期分割手術を適応に考慮し行う.術後は社会復帰をめざしたサポートを医療者側が患者,家族と足並みをそろえて行っていくことが重要である. -
3.高齢者胃癌の治療戦略
82巻3号(2020);View Description Hide Description高齢胃癌患者の治療方針決定には腫瘍学的要因に加えて,患者要因の評価が重要である.しかし,患者要因は高齢者においては個人差が大きく,その評価はむずかしい.したがって,高齢胃癌患者の治療方針決定には症例ごとにきめ細やかな状態の把握を行い,施設内で十分に検討したうえで患者および家族に十分な説明を行って治療方針を決定していくことが重要である.また,治療をスムーズに行うためには,さまざまな医療資源を有効活用するとともに,家族を含めた患者周囲のサポート体制の構築が必要不可欠であり,施設ごとにチームで取り組んでいく必要がある. -
4.高齢者胃癌に対する周術期対策
82巻3号(2020);View Description Hide Description高齢者胃癌の周術期管理においては,厳密な手術リスク評価,適切な術式選択および慎重な術後管理が重要である.手術リスク評価には,National Clinical Data(NCD)のビッグデータをもとに作成されたRisk Calculator が有用である.術式選択や術後管理は,術後の肺炎や栄養障害の可能性も念頭において行う必要がある.高齢者胃癌の治療成績向上には,多職種によるチーム医療の実践が重要である. -
5.高齢者大腸癌の治療戦略
82巻3号(2020);View Description Hide Description高齢者大腸癌治療に際しては,必ずしもガイドラインどおりに遂行可能なことは少ない.治療戦略を考えるにあたっては,年齢ではなく個々の患者の全身状態を正確に把握し,手術リスクの評価を行う.手術リスクの評価方法には,E-PASS,POSSUM,National Clinical Database(NCD) risk calculator などさまざまな指標が存在する.今後,フレイルやサルコペニアなど新規パラメーターを含めた高齢者に特化した新たなリスク評価方法の作成が望まれる. -
6.高齢者大腸癌に対する周術期対策
82巻3号(2020);View Description Hide Description高齢大腸癌患者に対する周術期管理は,術後回復強化プログラムにより成績が向上している一方,高齢者は身体・臓器機能低下により非高齢者に比べてプログラムの達成がむずかしいことがある.高齢者はその個体差を術前に評価し,もっとも適した回復プログラムを計画しなければならない.従来の回復プログラムに患者を適合させるのでなく,達成可能な回復プログラムの各要素を組み込んで適合させることが安全な周術期管理につながる. -
7.高齢者肝癌の治療戦略
82巻3号(2020);View Description Hide Description超高齢化社会を迎え,高齢者肝細胞癌に対する治療機会が増加傾向にある.高齢者肝細胞癌に関する本邦の大規模なコホート研究の結果をもとに,高齢者肝細胞癌に対する治療戦略について詳述した.高齢者肝細胞癌に対する治療戦略は,年齢によって左右されるべきではなく,腫瘍因子や肝機能に加えて,生活機能や栄養状態,併存疾患の程度を包括的に評価したうえで個々の患者について慎重に検討すべきである. -
8.高齢者肝切除に対する周術期対策
82巻3号(2020);View Description Hide Description今後ますます高齢化がすすむ本邦においては,依然として罹患率・死亡率ともに上位に位置する肝癌の外科治療成績が,本邦における国民の健康寿命延伸に寄与する部分が大きい.高齢肝切除対象者のよりよい予後を導くには,正確な肝切除術適否の判断と,適切な周術期管理が必要である.本稿では,2014 年に日本老年医学会から提唱された新概念“フレイル”を意識した手術適否の判断法と,高齢患者の特徴をふまえ虚弱フローの進行を抑制するための周術期管理の要点を述べる. -
9.高齢者膵癌の治療戦略
82巻3号(2020);View Description Hide Description高齢者膵癌に対する術前評価法と治療法について論じた.術前評価法には,ASA やCharlson Comorbidity index をはじめPOSSUM score,E-PASS などが用いられる.治療法では,化学療法,放射線療法,外科治療など若年者と比べ高齢者でも可能であると報告されている.しかし,多くは後方視研究であり,主治医の主観も含まれる.そのため,治療方針の決定に多職種での検討が必要である. -
10.高齢者膵癌に対する周術期対策
82巻3号(2020);View Description Hide Description高齢者膵癌患者の治療機会は年々増加している.特に手術に際しては,心肺障害,精神・認知機能障害などの機能低下をきたし,それらが難治性であったり,長期化することもある.より慎重な術前後の機能評価や対策は,適切な周術期管理のみならず,患者および家族への十分なインフォームド・コンセントを得るためにも重要である.また,手術の意義を高めるためには,リハビリテーション,栄養管理を含めたチーム医療,多職種連携が必須である.
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- 外科医を育てる! [第24 回]
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