外科
Volume 82, Issue 4, 2020
Volumes & issues:
-
特集【外科栄養―最新のアプローチ】
-
- Ⅰ.総論
-
1.栄養サポートチームのこれまでとこれから
82巻4号(2020);View Description Hide Description2006 年の診療報酬改定で,世界に先駆けてすべての入院患者に対して栄養評価と基本的な栄養管理を実施する「栄養管理実施加算」が新設された.2010 年には「栄養サポートチーム(NST)加算」が上乗せ加算として採用された.その後,「栄養管理実施加算」は入院基本料に含まれ,入院患者に対する栄養管理はルーチン化された.また,2018 年には歯科医参加によるプラス加算が認められた.高齢化がすすむわが国の社会情勢から,NST による医療における栄養療法の確立はもちろんのこと,医療の外を守る社会栄養学を含む地域一体となった栄養管理体制の構築が望まれる. -
2.栄養評価法と栄養スクリーニング
82巻4号(2020);View Description Hide Description栄養評価は,外科領域のみならずすべての栄養療法を行ううえで基本となる.したがって栄養評価ツールを理解し,身体構成成分の測定ならびに血液・尿・生化学検査なども駆使して,適正な栄養評価を行う必要がある.本稿では,外科領域でも使用可能な栄養評価ツールを解説し,さらに身体構成成分の評価方法,血液・尿・生化学検査について概説した.外科領域では手術侵襲が生体に及ぼす影響を考慮して適正な栄養評価を行う必要がある. -
3.三大栄養素,ビタミン,微量元素(役割,代謝,欠乏症)
82巻4号(2020);View Description Hide Description外科栄養では,基礎医学の確立を受け,有用な製品製剤が実臨床で利用でき,以前とは比べられないほど栄養管理面での環境は整ってきた.一方,優れた製品による管理のパターン化がすすむ中で,対象は高齢化し,他疾患併存率があがり,治療の長期化も影響し,より管理面で個別性の高い外科栄養管理が必要となる状況も増えている.その際には,連動している各栄養素が外科侵襲時に代謝変動する点をふまえ,治療成績向上へ導く管理が求められる. -
4.栄養補給ルートの選択と栄養管理プランニング
82巻4号(2020);View Description Hide Description疾患による機能障害や周術期管理上の目的で,経口で摂取し,腸管で消化吸収する生理的な栄養法が行えない患者がいる.われわれは,経口・経管による経腸栄養,腸管が使用できない場合の静脈栄養などを選択し,必要があれば組み合わせて使用することになる.人工的な補水・栄養ルートを選択する場合は,カテーテルが身体に入る入り口,カテーテルが腸管や血管に入る入り口,カテーテルの先端の位置が適切に選択されているかどうかを確認しなければならない. -
5.腸内ケアならびに栄養と癌免疫応答― 免疫チェックポイント阻害薬の効果を最大限に引き出すための秘策
82巻4号(2020);View Description Hide Description第4 の癌治療として注目される免疫療法は免疫チェックポイント阻害薬の登場により飛躍的な進歩を遂げ,今後も発展が期待されている.癌化学療法による下痢や経口摂取不良は腸内細菌叢の異常(dysbiosis)や粘膜の萎縮をきたし,bacterial translocation(BT)やサルコペニアの原因となる.腸内細菌叢と癌免疫療法の効果に関連があることや,BT により惹起されるimmunothrombosis が骨髄由来免疫抑制細胞を分化・誘導することが報告されるようになりdysbiosis や続発するBT は抗癌治療の継続を困難にするだけでなく,癌免疫療法の効果を減弱させる可能性があると推察される.これらのことから腸内環境保全を目的とした腸内ケアは化学療法の長期継続を可能にするのみならず,癌免疫療法の奏効率を向上する可能性が示唆される. - Ⅱ.各論
-
1.食道癌術前化学療法,周術期の栄養療法
82巻4号(2020);View Description Hide Descriptionわが国の標準治療である術前化学療法後の食道切除再建術を受ける進行食道癌患者では,初診時から周術期と考えて適時適切な栄養管理を行うべきである.しかし,食道癌手術周術期の効果的な栄養管理・介入のエビデンスはとぼしく,わが国の一連の治療体系でどの時点での栄養指標やその推移が予後と関連するのかを今後明らかにする必要がある.予後向上のために食道外科医は栄養療法に習熟すべきであり,個々の患者の病態に応じた個別化管理をチーム医療で行うことが大切であろう. -
2.胃切除とグレリン
82巻4号(2020);View Description Hide Description胃切除に伴う体重減少に対し,積極的な栄養療法が行われるようになっているもののいまだ十分ではない.なぜなら胃は,甲状腺などと同様に,食欲・体重増加作用を有するグレリンを産生する内分泌臓器であり,胃切除後低グレリン血症に対する治療が必要であるにもかかわらず,補充療法が行われていないためである.われわれは,胃切除後患者に対する合成グレリン製剤を用いた補充療法の有用性について報告してきた.今後,グレリンアゴニスト製剤なども含めた,低グレリン血症に対する治療開発が期待される. -
3.胃癌周術期運動・栄養療法
82巻4号(2020);View Description Hide Description胃癌患者の術後合併症発生や生活の質を含めた長期予後の悪化には,サルコペニアが影響するとされている.その対策として,レジスタンス運動と分岐鎖アミノ酸であるロイシンの投与が注目されている.胃癌患者の高齢化がすすむ中で,サルコペニア対策は今後ますます重要になる. -
4.膵頭十二指腸切除術におけるimmunonutrition の有用性
82巻4号(2020);View Description Hide Description膵頭十二指腸切除術は,手術手技や周術期管理が進歩した今日においても,術後合併症発生率は依然高率な術式の一つである.われわれの三つの臨床試験の結果からは,膵頭十二指腸切除術に対するimmunonutrition は術前投与が必要かつ十分であるとの結論であった.Immunonutrition は,適応と方法を適切に行えば有用で,数少ない生体反応を制御できる簡便な方法の一つであるので,広く導入されるべきものと考えている. -
5.肝臓外科手術の周術期栄養管理
82巻4号(2020);View Description Hide Description肝切除術周術期における栄養介入について,新たなメタ解析を追加し概説する.ERAS 推奨のガイドラインでは,対象患者に術前7 日間の栄養介入がすすめられている.免疫調整栄養剤は周術期の全合併症を減少させ(p<0.001),在院日数を短縮する(p=0.007).BCAA 製剤も全合併症を低下させる(p=0.03).ERAS 導入は周術期の全合併症を減少させる(p<0.001).技術的な課題解決に加えて,肝切除術周術期の栄養介入は臨床成績を改善させる可能性がある. -
6.肝移植前後の栄養管理
82巻4号(2020);View Description Hide Description肝移植患者の多くは低栄養かつ体組成異常を有しており,もっとも栄養状態が不良なときに大侵襲手術を受ける.栄養管理の基本は,正確な栄養評価と適切な栄養介入である.われわれは,入院時に体組成を含めた栄養評価を行い,個々の栄養状態に応じたオーダーメード型周術期栄養・リハビリテーション療法を確立した.2013 年以降,体組成を考慮した新たな移植適応を樹立・運用し,積極的な周術期栄養・リハビリテーション介入を行うことにより,移植後短期成績がきわめて良好となった.
-
連載
-
- 留学はおもしろい!第3回
-
-
症例
-
-
-
-
-
膵頭十二指腸切除術後の大腸癌同時性肝転移に対し腹腔鏡下肝切除を先行した同時切除を施行し肝断端膿瘍を合併した1 例
82巻4号(2020);View Description Hide Description -
-
-