Volume 82,
Issue 10,
2020
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特集【保存版! 臓器脱の診断と治療】
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Ⅰ.総論
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外科 82巻10号, 997-1004 (2020);
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骨盤臓器脱は,骨盤底のヘルニアともいえ,女性の骨盤底支持にかかわる靱帯組織や筋膜構造の弛緩が要因となり,骨盤底臓器である膀胱,子宮,直腸などが腟内を下垂して腟口から脱出する状態をいう.本邦における外科的治療法の選択は,経腟メッシュ(transvaginal mesh:TVM)手術から腹腔鏡下仙骨腟固定術(laparoscopic sacrocolpopexy:LSC)に大きくシフトしている.また,2020 年4 月にロボット支援腹腔鏡下仙骨腟固定術(robot assisted laparoscopic sacrocolpopexy:RSC)が保険適用となったため,今後,LSC からRSC へ移行していくことが予想される.
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Ⅱ.各論
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外科 82巻10号, 1005-1010 (2020);
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脱肛と直腸脱はともに肛門から脱出する病態である.診察は特に困難ではないが,時に判断に迷うこともある.高齢化社会になるにつれて直腸脱の患者も増えてきている.直腸脱は他臓器脱を合併することもあり,治療方針を決定するうえでいろいろの検査も必要になる.今回は肛門から脱出する疾患と,特に直腸脱において手術するために必要な検査について説明する.
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外科 82巻10号, 1011-1016 (2020);
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結紮切除術は開放術式であるMilligan-Morgan 法に準じた術式で,1~3 ヵ所の痔核組織を剝離して根部の痔動脈を結紮したうえで切除する.外痔核から内痔核を一塊として切除できるため,大きな内外痔核や急性期の嵌頓痔核までいかなる形態の痔核にも対応できる.術後の合併症や後遺症を防ぐための手技上のポイントは,痔核を周囲組織から正しい層で十分に剝離・授動し,過不足なく切除することである.
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外科 82巻10号, 1017-1026 (2020);
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環状自動縫合器(サーキュラーステープラー)による痔核脱肛の手術は,1998年Longo1)によって発表された手術(粘膜環状切除術)[procedure for prolapse andhemorrhoids:PPH]であり,痔核口側の直腸粘膜を環状切除し,痔核脱肛を吊り上げ固定する術法で,歯状線より皮膚側には手術操作が及ばず,その特徴から術後疼痛がきわめて少ない利点がある.疼痛が少なく,生活の質(QOL)にすぐれているため世界で広く行われるようになった.本邦でも2001 年より各施設で施行され,画期的な手術として注目を浴びた.術後疼痛の軽減,早期社会復帰など,3 度内痔核には有用な手術術式と考えられる.2010 年4 月より保険点数の改訂により,保険適用の問題とcost benefit の問題が解決され,多くのPPH 手術が施行されるようになった.痔核脱出は痔核クッション組織の肛門外への滑脱という考えから,痔核組織そのものを切除するのではなく,すぐ口側の直腸粘膜を環状に切除して上直腸動脈分枝の血液遮断と滑脱する痔核組織の吊り上げ固定を意図して行うものであり,そういった意味から全周性の脱出性痔核がもっともよい適応となると思われる.歯状線が全周性に滑脱している内痔核,ホワイトヘッド手術後の直腸粘膜脱,不完全直腸脱などにも適応と思われる.PPH の特性と実技を十分習得し,適応を厳格にするうえにおいては現在でもきわめて有用な手術といえる.
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外科 82巻10号, 1027-1031 (2020);
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直腸脱の経会陰手術としてはGant-三輪法,Delorme 法,Altemeier 法,Thiersch 法が代表的である.今年日本大腸肛門病学会から出版されたガイドラインでは5 cm 未満の脱出にはGant-三輪法,Delorme 法が推奨されており,根治性や合併症の観点から近年Delorme 法を行う施設が増えているようである.Delorme 法は脱出した腸管の粘膜を剝離後切離し,筋層の縦縫縮縫合により筋層を重積させ,残存粘膜の縫合を行う方法である.Delorme 法は術後の排便機能を改善させるという報告もあり,直腸脱の経会陰手術として有用な方法である.
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外科 82巻10号, 1032-1035 (2020);
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Altemeier 法は,会陰式直腸S 状結腸切除に前方肛門挙筋形成術を付加した術式で,北米において直腸脱に対する経肛門法の第一選択となっている.再発率では経腹法に劣るものの,麻酔法や脱出腸管長にかかわらず施行でき,肛門挙筋形成術により術後便失禁の改善が期待できる.本稿では,本法の手術適応,手術の実際,周術期管理について概説する.
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外科 82巻10号, 1036-1041 (2020);
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Laparoscopic ventral rectopexy は,直腸の固定が下部直腸腹側と仙骨岬角の間でメッシュにより縫合固定される自律神経完全温存術である.適応は,骨盤内に顕著な癒着がなく,妊孕性のある患者を除いた直腸脱である.手技で重要な点は,直腸腟中隔を尾側に骨盤底まで剝離することと,子宮脱・腟脱・小腸瘤の予防・治療のために,腟壁とメッシュを吸収糸で追加固定することである.本法は合併症が少なく,入院期間が短く,排便機能が改善する理想的な手術である.
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外科 82巻10号, 1042-1047 (2020);
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直腸脱に対する手術術式は経会陰式アプローチ,経腹式アプローチに大別されるが,経腹的アプローチは腹腔鏡手術が保険収載されてから,本邦でも汎用されるようになっている.本稿では,直腸脱に対しての,メッシュを使用しないことでS 状結腸切除を付加する症例に対しても有用と考えられるlaparoscopic posterior suture rectopexyについて解説する.
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外科 82巻10号, 1048-1054 (2020);
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直腸脱に対する術式は多岐にわたるが,患者の耐術能および直腸脱の病態を評価することで,個々の症例に適した治療選択が可能となる.排便造影で直腸の固定が不良で,かつ耐術能が問題なければ,腹腔鏡下手術のよい適応と考える.当教室はメッシュを使用しないnative tissue repair であるlaparoscopic posterior suture rectopexyを行っている.再発率が低く,メッシュ関連の合併症がないため有用な術式と考える.
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外科 82巻10号, 1055-1059 (2020);
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ストーマ脱出は,ストーマ合併症の晩期合併症の一つであり,患者の生活の質(QOL)を著しく低下させうる疾患である.ストーマ脱出の病態は,過長な移動性のある腸管があって,ストーマと腹壁の間にある程度の大きさの間隙が存在し,その間隙に腹圧がかかるとストーマ脱出が引き起こされる.ストーマ脱出の手術治療法には,低侵襲の順に,① 脱出腸管巾着縫縮法,② 脱出腸管粘膜縫縮法,③ Delorme 変法,④ ボタン固定法,⑤ 縫合器を用いた脱出腸管切除法,⑥ 脱出腸管腹壁固定法などの手法が報告されている.治療法の選択は,脱出程度・脱出状況や,全身状態の状況,オストメイトとなった基礎疾患の状況などと,それぞれの手術療法のメリット・デメリットをよく考慮して治療法を選択することが肝要である.
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私の工夫
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外科 82巻10号, 1060-1063 (2020);
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症例
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外科 82巻10号, 1064-1066 (2020);
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外科 82巻10号, 1067-1071 (2020);
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外科 82巻10号, 1072-1075 (2020);
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外科 82巻10号, 1076-1081 (2020);
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外科 82巻10号, 1082-1085 (2020);
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外科 82巻10号, 1086-1089 (2020);
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外科 82巻10号, 1090-1094 (2020);
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