Volume 82,
Issue 11,
2020
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特集【食道胃接合部癌update】
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Ⅰ.疫学
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外科 82巻11号, 1097-1100 (2020);
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欧米では,食道腺癌や食道胃接合部腺癌が増加してきていることが指摘されている.この理由としては,肥満の増加やHelicobacter pylori 感染の減少,食道胃逆流症有病率の増加などが主に関係しているとされている.日本でも,食道癌や胃癌に比較して頻度は低いものの,食道胃接合部癌は増加傾向にあるといわれている.食道腺癌では,肥満と喫煙が確実なリスク要因である.胃食道逆流症から癌にいたる中間段階としてBarrett食道の関与も指摘されてはいるが,結論は得られておらず,食道胃接合部癌の実態と合わせ,そのメカニズムの解明にはさらなる研究が必要である.
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Ⅱ.診断
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外科 82巻11号, 1101-1107 (2020);
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食道胃接合部癌(Barrett 食道腺癌を含む腺癌)の内視鏡所見には特徴がある.食道胃接合部(EGJ)は柵状血管下端,胃からのひだ上端として確認できる.EGJ を同定し,その上下2 cm に首座のある癌である.胃癌,食道癌それぞれの取扱い規約では組織型は問わないとあるが,本稿では腺癌について述べた.EGJ より2 cm 口側に首座のある病変(E>G,E) はshort segment Barretts esophagus(SSBE) のBarrett食道腺癌(BEA)と診断でき,右側壁(0~6 時)に位置する隆起型の分化型腺癌が多い.肛門側に首座がある癌(噴門部癌)(G>E,G)では陥凹型が多く小彎側(EGJ からは12 時方向)に病変が多かった.E=G の症例は数例であった.深達度診断は肉眼型で複合型(Ⅱa+Ⅱc,Ⅰ+Ⅱa など)にSM 癌が多かった.食道胃接合部腺癌の内視鏡治療適応は後ろ向き試験の結果が出て,現在前向き試験が進行中である.
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外科 82巻11号, 1108-1112 (2020);
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食道胃接合部癌の病期分類はこれまで混沌としてきたが,TNM 分類第8 版からSiewert typeⅠ/Ⅱは食道癌の,typeⅢは胃癌のscheme で分類されることになった.これら二つのscheme の違いはリンパ節転移の重みである.全国調査の結果をみてもリンパ節転移が強力な予後因子であるのは確かで,食道癌のscheme での分類が妥当と感じる.食道癌と同様に術前化学療法がよいのか,が今後の検討課題である.
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外科 82巻11号, 1113-1119 (2020);
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食道胃接合部癌は,食道胃接合部(esophagogastric junction:EGJ)の上下2 cm 以内に病変の中心をおく癌腫と定義されている.食道胃接合部癌は単一の病変ではなく,胃噴門部癌,Barrett 食道腺癌および下部食道腺癌が含まれている.病理診断上で問題となるのはEGJ を正確に同定することであり,同部位の組織学的構造を十分理解したうえで診断がなされることが重要である.同領域の腫瘍の診断および取り扱いはcontroversialな部分があるが,腫瘍の病態を十分理解するためには,病変部を含むEGJ 領域の全割標本を作成し,病理診断を行うとともに,臨床医と連携し,内視鏡所見も参考に診断をすすめ,症例を蓄積していくことが必要と考えられる.
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Ⅲ.治療
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外科 82巻11号, 1120-1123 (2020);
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食道胃接合部癌の増加や内視鏡治療技術の発展に伴い,食道胃接合部癌に対して内視鏡治療を行う機会が増加している.本邦では食道下部の柵状血管下端を食道胃接合部(GEJ)とし,病理組織型にかかわらずGEJ の上下2 cm に癌腫の中心があるものを食道胃接合部癌と定義している.食道扁平上皮癌,食道腺癌,噴門部胃癌など複数の組織型が混在しており,それぞれの組織型によって治療適応や根治基準を決定しているが,鑑別が困難な場合も多い.京都国際コンセンサス会議においてGEJZ adenocarcinoma が定義された.今後,GEJZ adenocarcinoma に対する内視鏡治療適応や根治基準についてさらなる検討が行われることを期待したい.
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外科 82巻11号, 1124-1128 (2020);
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cT2~T4 の食道胃接合部癌を対象とした多施設共同前向き試験の結果によると,食道浸潤長が4 cm を超える場合は上中下縦隔リンパ節郭清が必要であるため右開胸アプローチによる食道亜全摘が,食道浸潤長が2 cm 以下の場合は下縦隔リンパ節郭清が原則不要であるため経裂孔アプローチによる下部食道切除が推奨される.食道浸潤長が2.1~4 cm の場合はNo.110 のみの下縦隔郭清で十分であるため経裂孔アプローチによる下部食道切除でよいと考えられるものの,下縦隔内吻合で縫合不全を起こした場合には重篤となりうるため,そのリスクを十分に考慮したうえで術式を選択すべきである.
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外科 82巻11号, 1129-1133 (2020);
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食道胃接合部癌の手術では至適なリンパ節郭清範囲の決定が重要であるが,定型術式は確立していない.これまでに国内多施設後ろ向き研究により,腫瘍径4 cm までの接合部癌に対するリンパ節郭清アルゴリズムがガイドラインで示されている.また最近,国内初の多施設前向き研究が施行され,食道胃接合部癌に対する至適なリンパ節郭清範囲についての新たなエビデンスが示された.本稿では食道胃接合部癌の術式決定において重要となる至適リンパ節郭清範囲について解説し,手術手技について概説する.
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外科 82巻11号, 1134-1138 (2020);
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食道胃接合部癌の予後は胃癌と比較して不良であり,化学療法や放射線治療を組み合わせた集学的治療が必要である.欧米では術前化学療法や術前化学放射線療法が標準治療となっている.本邦では周術期補助療法はいまだ確立しておらず,胃癌または食道癌に準拠した治療が行われており,その治療法は担当医や施設によりさまざまであるのが現状である.本稿では,欧米の集学的治療の現状について報告したい.
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外科 82巻11号, 1139-1143 (2020);
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食道胃接合部癌に対して鏡視下に下縦隔郭清→食道胃管胸腔内吻合を行う手術(Ivor-Lewis 手術)は今後増加すると予想される.腹腔鏡下に胃管を作成し,体位変換の後に胸腔鏡下に切除吻合し,最後に肋間から検体を摘出する手技は単純であるが,断端が確認できないという問題がある.胸腔鏡下の食道胃管吻合は胃管前壁食道後壁をリニアステープラーにて側側吻合し,挿入孔は手縫いで閉鎖している.
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外科 82巻11号, 1144-1148 (2020);
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観音開き法再建は,1998 年に上川らにより報告された逆流防止機構を付加した食道残胃吻合である.漿膜筋層フラップ下に埋没した食道が胃内圧の上昇に伴い押しつぶされることで,逆流防止弁としての機能を発揮することを特徴としている.多施設共同後ろ向き臨床試験において,逆流性食道炎発生予防の観点から良好な成績が報告されており,また縫合不全の発生頻度も非常に低率であることから,食道胃接合部癌などの縦隔内再建を要する症例に対しても非常に有用な再建法と考えられる.
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外科 82巻11号, 1149-1156 (2020);
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食道胃接合部癌に対する空腸間置法・ダブルトラクト法は,食道浸潤長が2 cm以下で胃側進展も5 cm 以内である腫瘍がよい適応となる.近位・遠位の切離線を適切に判断することは大前提として,手技的にはいかに安全に食道空腸吻合を行うかがポイントとなる.肝外側区域を授動,また食道裂孔を開大して良好な視野を得ること,緊張のない挙上空腸脚を作製すること,チーム全体で手順を理解して確実な操作を行うことが重要である.
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臨床経験
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外科 82巻11号, 1157-1161 (2020);
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症例
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外科 82巻11号, 1162-1168 (2020);
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外科 82巻11号, 1169-1172 (2020);
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外科 82巻11号, 1173-1176 (2020);
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外科 82巻11号, 1177-1181 (2020);
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外科 82巻11号, 1182-1185 (2020);
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外科 82巻11号, 1186-1190 (2020);
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外科 82巻11号, 1191-1194 (2020);
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