Volume 82,
Issue 12,
2020
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特集【肝癌治療の最前線】
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外科 82巻12号, 1197-1203 (2020);
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安全な肝切除を行うためには,肝臓の質(肝機能・肝予備能)と量(予定残肝容積)の正確な評価が不可欠である.近年,多彩な肝機能検査とコンピュータシミュレーションによる精緻な肝容積算出が可能となってはいるが,新しい肝切除基準として活用できるエビデンスはなく,本邦では,インドシアニングリーン(ICG)検査とCT 画像からのvolumetry で最小残肝容積許容量を規定した基準が依然として用いられている.
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外科 82巻12号, 1204-1208 (2020);
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術後肝不全のリスクが高い門脈圧亢進症を伴う肝硬変症例や大量肝切除を要するような症例では,肝切除に際して厳重な周術期管理を要する.術中における低中心静脈圧維持と手術手技による出血制御,ならびに術中・術後における水分・電解質出納管理がそのポイントである.本稿では,特に術後肝不全発症予防の観点から,肝癌手術における周術期管理の要点を概説する.
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外科 82巻12号, 1209-1214 (2020);
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肝切除における術後合併症は短期および長期の予後にかかわることから,適切な局所および全身の対処が必要である.胆汁漏は肝切除術後に発生する合併症の中では頻度が高く,深部手術部位感染(SSI)の原因でもある.適切な治療およびそのタイミングを逸すると難治性となり,治癒までの期間が長期化するため,その予防および発症早期からの対処が重要である.本稿では,肝切除術後胆汁漏に関して,術中および術後の対処法を概説する.
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外科 82巻12号, 1215-1222 (2020);
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肝細胞癌に対して,肝切除がもっとも有効な治療成績を得ることができる.しかし,腫瘍の進展,肝予備能に応じて切除不能となる肝細胞癌に対しては,肝動脈塞栓療法や肝動脈持続療法などが行われてきた.現在,分子標的治療薬の登場により,薬物療法と肝切除を組み合わせる切除不能肝癌に対する治療成績の向上が期待される.本稿では,肝細胞癌に対しての術前治療の成績,切除不能肝癌に対する術前治療の今後の可能性について述べる.
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外科 82巻12号, 1223-1227 (2020);
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肝細胞癌に対して,肝切除とラジオ波焼灼法(RFA)に代表される経皮的焼灼治療のどちらが有効な治療であるかに関しては,臨床的な課題であった.本課題に答えるべくわれわれのグループは,3 cm 以内3 個以下の肝細胞癌に対し肝切除とRFA の成績を比べるランダム化比較試験(SURF trial-RCT)を遂行している.2018 年8 月31 日に患者最終登録から3 年が経過し,無再発生存期間に関する報告を2019 年のAmericanSociety of Clinical Oncology(ASCO) Annual Meeting で行った. 最終的に308 人が登録され,ランダム化と不適格例の除外を経て,150 人の手術群,151 人のRFA 群の比較を行った.両群間の背景因子に有意差を認めなった.手術群,RFA 群ともに90%が単発(p=0.98)であり,腫瘍径の中央値は手術群,RFA 群ともに1.8 cm であった(p=0.89).Follow-up 期間の中央値,5.0 年での無再発生存期間中央値(95%信頼区間)は,手術群で3.0(2.3~3.9)年,RFA 群で2.8(2.2~3.8)年と有意差を認めなかった(p=0.79).両群において,治療後の死亡を認めなかった.SURF trial 適格症例のうちランダム化の同意が得られなかった対象の観察研究SURF trial-Cohort に関する報告を,2020 年のASCO Annual Meeting で行った.同研究では740 人(手術群371 人,RFA 群369 人)を解析対象とした.SURF trial-RCT と異なり背景因子に差を認め,Inverse probability of treatment weighing analysis による背景因子調整後の無再発生存期間中央値(95%信頼区間)は,手術群で3.8(3.0~4.6)年,RFA 群で3.4(2.6~4.0)年と同様に有意差を認めなかった(ハザード比0.89,95%信頼区間0.72~1.10,p=0.89).2020 年8 月31 日をもって登録終了日から5 年目となり,全生存の最終報告を2021 年度中に行う予定である.
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外科 82巻12号, 1228-1233 (2020);
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高度進行状態である脈管侵襲陽性肝細胞癌(門脈腫瘍栓・下大静脈腫瘍栓)は,対象患者の肝機能因子や腫瘍学的因子などの背景因子が大きく異なるため,病態に応じた治療法選択が必要である.また,腫瘍栓の進展度により病態が大きくかわるため,腫瘍学的根治性と時間的治療域確保の二元軸で治療方針を検討する必要がある.いずれの治療法を選択したとしても,治療後再発は高率であり,再発に応じた集学的治療が必須な病態である.
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外科 82巻12号, 1234-1240 (2020);
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肝癌に対する放射線治療は治療技術の発達により大きく変化しており,肝癌診療においても重要な役割をもつようになってきている.まだまだエビデンスが少ない状況ではある一方,期待される結果も出てきており,今後の肝癌診療における放射線治療の立ち位置については状況がかわっていく可能性が高い.そのため本稿では放射線治療の最新の状況,エビデンス,また実際の治療内容について述べる.
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外科 82巻12号, 1241-1247 (2020);
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高度進行肝細胞癌に対する集学的治療では,近年分子標的治療薬の発展を認めるが,本邦では従来から経肝動脈カテーテル治療[肝動脈化学塞栓療法(TACE),肝動注化学療法(HAIC)]が積極的に導入され,発展を遂げてきた.肝内に限局する多発症例や脈管侵襲を伴う症例に適応されることが多く,十分な腫瘍抑制効果を認めた場合,conversion 肝切除が可能となる症例も認められる.外科切除を意識した集学的治療における,経肝動脈カテーテル治療について述べる.
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外科 82巻12号, 1248-1252 (2020);
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肝癌に対する肝切除術は,国内では経門脈的転移を想定した系統的肝切除が行われてきた.ほかの消化器癌では,腹腔鏡下手術が低侵襲かつ開腹手術と非劣性であることから主流のアプローチとなりつつあるが,肝癌に対する腹腔鏡下肝切除術は,肝臓の臓器としての特異性から現時点でもhigh volume center に特化されている術式である.今回,肝癌に対する低侵襲術について術式の定型化,適応拡大と有用な手術手技,肝癌への適応について述べる.
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外科 82巻12号, 1253-1257 (2020);
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非代償性肝硬変に合併する肝細胞癌に対する唯一の根治療法として,肝臓移植が行われている.しかし,保険適用基準であるミラノ基準は厳格であるため,拡大基準が模索されてきた.わが国では,全国データに基づいた5-5-500 基準が新たな適応基準として脳死肝臓移植登録に導入された.本稿では,肝細胞癌肝臓移植における拡大基準,ダウンステージング,再発治療について述べ,肝細胞癌以外の肝癌に対する肝臓移植の世界的現状についても紹介する.
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外科 82巻12号, 1258-1263 (2020);
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B 型肝炎ウイルス(HBV),C 型肝炎ウイルス(HCV)ともに肝細胞癌のリスク因子であり,かつ肝炎・肝硬変のリスク因子でもある.特に肝硬変に進行すると,肝癌に対する治療選択肢も限られるため,その前にHBV,HCV のコントロールが必要である.近年,核酸アナログや直接作用型抗ウイルス薬(DAA)の開発がすすみ,HBV,HCV のコントロールが可能となってきた.HBV,HCV のウイルス治療は,それぞれの内容,実施のタイミングなどまったく異なるが,肝癌治療の前後に肝炎ウイルスの治療を行うことで,肝細胞癌の治療成績を向上できる可能性もでてきた.
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外科 82巻12号, 1264-1268 (2020);
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超高齢化社会を迎え,高齢者肝細胞癌に対する治療機会が増加傾向にある.高齢者肝細胞癌手術に関する種々の問題点を概説した.また日本肝癌研究会による大規模なコホート研究の結果をもとに,高齢者肝細胞癌に対する手術適応を再考するために手術後の長期経過後の死因について記述した.高齢者肝細胞癌に対する治療戦略は腫瘍因子や肝機能に加えて,生活機能や栄養状態,併存疾患の程度を包括的に評価したうえで個々の患者について慎重に検討すべきである.ただし肝癌手術適応は年齢によって左右されるべきではないものの,高齢者必須の併存疾患に関しては周術期のみならず,術後長期間においてその管理を十分に注意していかなければならない.
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臨床経験
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外科 82巻12号, 1269-1273 (2020);
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症例
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外科 82巻12号, 1274-1276 (2020);
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外科 82巻12号, 1277-1281 (2020);
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外科 82巻12号, 1282-1286 (2020);
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外科 82巻12号, 1287-1290 (2020);
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外科 82巻12号, 1291-1294 (2020);
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