外科

Volume 84, Issue 7, 2022
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特集【縫合不全と戦う】
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1.上部消化管手術における縫合不全予防対策の基本
84巻7号(2022);View Description
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食道癌や胃癌手術などに代表される上部消化管手術後の縫合不全は,腹腔内膿瘍や縦隔内膿瘍,腹膜炎などを併発し,長期にわたる絶食や入院期間延長につながる重篤な術後合併症の一つである.発症要因としては,併存疾患や栄養状態の影響などによる全身的要因と,再建臓器における血流障害や過度の緊張,吻合手技の影響による局所的要因があり,各々における要因を理解した十分な予防対策を講じることが必要である. -
2.食道癌に対する縫合不全予防対策としての吻合法の評価
84巻7号(2022);View Description
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食道癌に対する食道切除再建術後の縫合不全は縦隔炎や膿胸などを併発し,術後入院期間の延長や在院死亡と関連する.発症要因は単純でなく手技的要因,局所的要因,全身的要因が複合的に絡み合うため,それぞれに予防策を講じて縫合不全発生率の軽減に努めるべきである.外科医の工夫によって術後の患者の生活の質が大きく左右されうることを肝に銘じ,愛護的な再建臓器の取り扱いと吻合操作を行う必要がある. -
3.上部消化管手術における縫合不全予防対策としてのインドシアニングリーン蛍光法の評価
84巻7号(2022);View Description
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インドシアニングリーン(ICG)を用いた蛍光法は,リンパ管やリンパ節同定,臓器血流評価を簡便かつリアルタイムに可視化させることからさまざまな領域の消化器外科手術で導入されている.上部消化管手術における縫合不全予防対策としてのICG 蛍光法を術中に施行することで縫合不全発生率を低下させることができたが,いまだゼロにはできていない. -
4.食道癌術後縫合不全発生時のドレナージ法
84巻7号(2022);View Description
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縫合不全に対する経皮経瘻孔ドレナージ法(percutaneous trasn-anastomoticdrainage:PTD)は特殊な器具や技術を使用しない安全で簡便な方法である.臨床的にはもっとも多く経験される吻合部周囲に限局した膿瘍腔を有す縫合不全に対して,PTDは頸部創をわずかに開放し縫合不全と同部より生じた膿瘍腔を「内外瘻化」させることで早期治癒が可能である.また腸瘻が作成されていない症例でもPTD のドレナージチューブに栄養チューブを併走して留置することで,percutaneous trans-esophageal gastro-tubing(PTEG)としての使用も可能となる. -
5.食道癌・胃癌術後縫合不全に対する内視鏡的治療の工夫
84巻7号(2022);View Description
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消化管吻合における縫合不全は,吻合法,吻合部の緊張・血流などが主な原因とされ,時に致命傷となる.さらに,食道切除再建では,再建経路・部位などの要因もあげられる.根治的には再手術であるが,侵襲が大きく,また従来行われているドレナージによる自然閉鎖は改善するまでに長期入院を要する.われわれは,縫合不全の閉鎖に対して内視鏡的治療が有効であることを報告してきた.さまざまな治療法を,大きさや状況に応じて使い分けることが重要である. -
6.ロボット支援下直腸低位前方切除術における縫合不全予防対策
84巻7号(2022);View Description
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直腸手術における縫合不全は危惧すべき合併症の一つである.縫合不全は術後機能,予後,生活の質(QOL)と関連する重大な合併症である.縫合不全の発生には患者背景,腫瘍因子,手術手技,術後管理など多角的側面の関与があるため,総合的な対応が必要となる. -
7.下部消化管手術における縫合不全予防対策としてのインドシアニングリーン蛍光法の評価
84巻7号(2022);View Description
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大腸手術に伴う縫合不全はもっとも重篤な合併症であり,腸管の血流不足がその要因の一つとなっているが,これに対してインドシアニングリーン(ICG)蛍光法を用いた腸管血流の評価法はその有効性が期待されている.これまでに多くの臨床研究が行われており,縫合不全に対する予防効果もいくつか報告され,特に高リスク群の抽出に期待できる.さらに腹腔鏡下体腔内腸管吻合など,そのほかの手技にも応用されるようになってきた. -
8.下部消化管手術における縫合不全発生時の対応と成績
84巻7号(2022);View Description
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下部消化管術後に縫合不全が発生した際に汎発性腹膜炎や再建腸管壊死になっている症例は緊急手術が必要であったが,7 割程度の症例で保存的治療が可能であった.また,保存的治療で治癒した症例は永久ストーマ率も低かった.しかし,保存的治療開始後に手術となる症例もあり,腹膜炎が悪化する徴候があれば躊躇なく再手術に踏みきることが重要である.保存的治療の具体的な方法につきドレナージ方法を中心に概説した. -
9.肝門部で胆管切除を行う膵頭十二指腸切除術における胆管空腸吻合のテクニック
84巻7号(2022);View Description
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肝胆膵手術における胆管空腸吻合部縫合不全の発症頻度はそれほど高くない.しかし,ひとたび発症すれば,入院期間の延長はもちろん,再手術やインターベンショナルラジオロジー(IVR)手技を含む複数回の侵襲的処置が必要となることが多く,長期的には吻合部狭窄をきたし,胆管炎から時に生命にかかわる重篤な敗血症にいたることもある.本稿では,特に肝門部胆管-空腸吻合の縫合・結紮手技に焦点をおき,縫合不全を起こさないために注意すべき点について述べた. -
10.肝胆膵手術の胆管再建における縫合不全発生時の対応
84巻7号(2022);View Description
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肝胆膵手術における胆道再建において,縫合不全はいまだ完全に防ぐことのできない合併症である.縫合不全は胆汁瘻や腸液・腸内細菌への腹腔内への漏出の原因となり,その結果,腹腔内膿瘍を併発するため,時に致命的となりうる.治療には適切なドレナージによる感染コントロールが不可欠であり,ドレナージ管理が長期にわたることも少なくない.また,治癒後も晩期合併症として吻合部狭窄やそれに起因する肝内結石をきたすことがあるため,長期的なフォローアップが必要である. -
11.膵頭十二指腸切除後の膵管再建における縫合不全予防対策
84巻7号(2022);View Description
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膵頭十二指腸切除(PD)後の在院死亡率が低下している一方で,膵管再建後の縫合不全,すなわち術後膵液瘻(POPF)の発生率は依然として高い.POPF は入院期間を延長させ,膵切除後出血という,生命を脅かす重大な合併症を引き起こすこともある.POPF の予防対策の第一歩は発症リスクを術前・術中に予測することであり,高リスク例では術式の工夫,吻合部ステント挿入,ドレーン管理,予防的ソマトスタチンアナログ(SSA)製剤投与などが必要である. -
12.肝胆膵手術の膵管再建における縫合不全発生時の対応
84巻7号(2022);View Description
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膵切除術後の膵消化管吻合における縫合不全である膵液瘻は,腹腔内膿瘍や出血をきたしうる重篤な合併症である.膵液瘻予防を目的とした手術術式や術後管理の開発は多くなされてきたが,膵液瘻に対する治療法に関しては十分なエビデンスがいまだない.膵液瘻による感染や出血に対して適した治療を早急に行い,致死的な状況を回避することが,膵切除術が安全な術式として標準化されるためにはきわめて重要である.本稿では,膵液瘻に対する治療法に関して近年の報告をもとに概説した.
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書評
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臨床と経験
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小腸閉塞に対する腹腔鏡手術と開腹手術の後ろ向き比較研究
84巻7号(2022);View Description
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小腸閉塞は時に緊急手術を必要とするが,腹腔鏡手術の技術や器具の進歩に伴い,小腸閉塞に対しても腹腔鏡手術が施行される機会が増えている1).また,小腸閉塞に対する腹腔鏡手術は開腹手術と比較して,術後合併症や術後在院日数を減少させるとの報告1~3)やメタアナリシスもみられる4).しかしながら,腹腔鏡手術が優位とするこれまでのこれらの報告は患者の選択バイアスの影響を受けている可能性が高い.さらに,小腸閉塞に対する腹腔鏡手術は腸管損傷のリスクであるとする報告もあり5),小腸閉塞に対する腹腔鏡手術の適応とその有用性についてのコンセンサスはいまだ得られていない.今回,当科における小腸閉塞に対する腹腔鏡手術の成績を,傾向スコアマッチングを用いて患者背景を調整したうえで開腹手術の成績と後ろ向きに比較し,その有用性と安全性を検証した.
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症例
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特発性胃軸捻転症に対して胃壁固定具を併用した腹腔鏡下胃固定術の1 例
84巻7号(2022);View Description
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胃軸捻転症の報告はかなり古くよりみられ,近年は治療法として腹腔鏡下胃固定術の報告が相次いで見受けられる.本稿でわれわれは,診断時における3D-CT 画像と腹腔鏡下胃固定時における胃壁固定具の有用性について報告する. -
胃原発扁平上皮癌の1 例
84巻7号(2022);View Description
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胃原発扁平上皮癌は非常にまれな疾患であり,その発生頻度は胃癌全体の0.09%と報告されている1).また,進行癌として発見される場合が多く,予後不良と考えられている2).今回,われわれは胃原発扁平上皮癌の1 例を経験したので,文献的考察を加えて報告する. -
直腸癌術後に異時性発生した結腸人工肛門部癌に対して人工肛門再造設と植皮術を施行した1 例
84巻7号(2022);View Description
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人工肛門部癌の報告はきわめてまれである.今回われわれは,腹会陰式直腸切断術後に発生した結腸人工肛門部癌の1 切除例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する. -
経肛門的に貫入した杭状異物による直腸穿孔の1 例
84巻7号(2022);View Description
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杙創とは,先端が鈍な物体が,転落・転倒などの偶発的な要因により生体内に刺入した状態の創の総称で,比較的まれな外傷形態である.会陰部や肛門周囲から刺入した場合には,骨盤内臓器や腹腔内臓器を損傷する危険性がある.また,体表創と臓器損傷の程度が必ずしも一致しないことがあり,受傷早期の確実な損傷状態の把握とそれに応じた迅速な治療が重要である.今回われわれは,先端が丸く鈍なプラスチック製のトイレブラシの柄の上にふらついて尻もちをつき,肛門周囲の皮膚に刺入せず肛門内に滑り込んだことにより直腸に杙創的損傷をきたした症例を経験したので報告する.
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