外科

Volume 84, Issue 8, 2022
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特集【Interventional radiology の最前線】
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- Ⅰ.総論
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1.肝細胞癌に対するinterventional radiology の歴史
84巻8号(2022);View Description
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肝細胞癌に対する主なinterventional radiology はいずれも1970~80 年代に本邦で考案され,経皮的局所療法は杉浦らの超音波下での腫瘍内へのエタノール注入,肝動脈化学塞栓療法はYamada らの抗悪性腫痬薬に浸したゼラチンスポンジによる肝動脈の塞栓が始まりであり,肝動注化学療法は荒井らの動注リザーバの開発により簡便化された.またそれらに用いられる器具,画像診断装置,支援ソフトウェアの多くも本邦で開発され,その後,海外に広く普及している. -
2.Interventional radiology の分類
84巻8号(2022);View Description
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X 線や超音波,CT などの画像診断装置を用いて針やカテーテルを操作して行う診断治療行為であるinterventional radiology(IVR)と,内視鏡および超音波内視鏡を用いて診断や治療を行うinterventional endoscopy(IVE)は,デバイスや技術の発展にともない施行数が増加している.本稿では,種々の臓器や病態に対する低侵襲治療であるIVR,IVE の分類について概説した. - Ⅱ.各論
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1.Interventional radiology:1) 術後性出血に対するinterventional radiology
84巻8号(2022);View Description
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術後出血は,あらゆる外科手術後に起こりうる一般的な合併症である.出血がいったん生じた場合,補液や輸血などで喪失分の補充が先行されるが,同時に止血を行う必要がある.本稿では,interventional radiology(IVR)の技術を用いた止血術の最前線について,当施設での経験をもとに紹介する. -
1.Interventional radiology:2) 肝癌に対する肝動脈化学塞栓療法(TACE)
84巻8号(2022);View Description
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肝癌に対する肝動脈化学塞栓療法(TACE)は,近年の画像装置やカテーテル,さらに薬剤溶出性ビーズ(drug eluting beads:DEB)やethyl ester of iodinatedpoppy-seed oil fatty acid(Lipiodol)エマルションの生成デバイスの開発により,治療精度が向上している.肝細胞癌においては,全身薬物療法の進歩に伴いTACE の役割が再考され,肝機能を低下させず,根治性の高いTACE が求められている.転移性肝癌に対しては, 欧米からirinotecan hydrochloride hydrate 溶出性ビーズを用いたTACE の良好な治療成績が報告されており,本邦においても臨床試験が進行中である. -
1.Interventional radiology:3)アブレーション
84巻8号(2022);View Description
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Interventional radiology 領域では悪性腫瘍に対する局所治療として画像ガイド下に腫瘍に針を穿刺して治療するアブレーション治療が広く施行されている.特に,針を加熱するアブレーションとしてラジオ波を用いたラジオ波焼灼療法(radiofrequencyablation:RFA)とマイクロ波凝固療法(microwave ablation:MWA)が,針を凍結させる治療として凍結治療が施行されており,いずれも良好な成績が報告されている.本稿では,肝・腎・肺病変に対するアブレーション治療の成績や手技の工夫について概説する. -
1.Interventional radiology:4) 経皮的膿瘍ドレナージの基本と応用
84巻8号(2022);View Description
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経皮的膿瘍ドレナージは基本的なinterventional radiology(IVR)手技であるが,周術期マネジメントに必須の技術である.ドレナージカテーテル挿入の技術自体は以前から大きな進歩はないのが実状であるが,angio-CT システムやcone-beam CT を併用することで,深部病変なども安全に穿刺可能となり,手技の適応は拡大している.本稿では,基本的な手技の流れから応用的な手技までを症例提示を通じて解説する. -
1.Interventional radiology:5) 術後リンパ系interventional radiology
84巻8号(2022);View Description
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リンパ系システムは全身に存在する.微細なリンパ管の損傷ですら術後にリンパ漏をきたすことがあり,さらに胸管損傷では乳び胸水は重篤になりうる病態である.過去にはリンパ漏の画像化はリンパ管シンチグラフィや足背から行うリンパ管造影(pedallymphangiography:PL)しか方法がなく,interventional radiology(IVR)治療に応用するのは困難であった.しかし近年,鼠径部のリンパ節から行うリンパ管造影に加えて,逆行性経静脈的胸管造影や肝内リンパ管造影の技術も臨床応用されてきたことにより,術後リンパ漏の治療をIVR で行うことが可能となってきた. -
2.Interventional endoscopy:1)小腸内視鏡
84巻8号(2022);View Description
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ダブルバルーン内視鏡をはじめとしたdevice-assisted enteroscopy(DAE)の進歩によって,過去には外科的手術を余儀なくされた小腸の疾患や病態も,より低侵襲な内視鏡による治療へとかわってきている.DAE は小腸出血に対する止血,小腸狭窄に対するバルーン拡張術,ポリポーシス症候群における小腸ポリープの腸重積解除やポリープ切除,小腸異物摘出,術後再建腸管の内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)関連手技など幅広い病態に対する内視鏡治療が可能であり,今なおDAE の可能性は広がり続けている. -
2.Interventional endoscopy:2)消化管ステント
84巻8号(2022);View Description
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悪性消化管閉塞はさまざまな閉塞症状や食事摂取不能をもたらす重大な病態である.現在は消化管閉塞の是正のためにステントは大きな役割を担っている.ステントテクノロジーの進歩によって,目的臓器に合った専用ステントが開発され,手技は容易となり広く普及した.一方で,手技の普及に伴い本手技のさまざまな課題も明らかになりつつある.本稿では消化管ステントの最新のトピックスについて概説する. -
2.Interventional endoscopy:3)内視鏡的逆行性胆道膵管造影/超音波内視鏡下インターベンション
84巻8号(2022);View Description
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胆道・膵臓疾患に対する内視鏡的治療は内視鏡的逆行性胆道膵管造影(endoscopicretrograde cholangiopancreatography:ERCP)を中心に行われており,近年は胆管大結石に対する内視鏡的乳頭ラージバルーン拡張術や経口胆道鏡など新しい手技も普及している.またERCP 困難例に対する代替治療としての超音波内視鏡(EUS)ガイド下胆管ドレナージや急性膵炎後液体貯留に対するドレナージなどのEUS インターベンションも急速に普及しており,lumen-apposing metal stent(LAMS)などの専用デバイスを用いたさまざまな手技への応用が期待されている. -
2.Interventional endoscopy:4)経皮内視鏡的胃瘻造設術・経皮経食道胃管挿入術
84巻8号(2022);View Description
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経皮内視鏡的胃瘻造設術(percutaneous endoscopic gastrostomy:PEG)や経皮経食道胃管挿入術(percutaneous trans-esophageal gastro-tubing:PTEG)は経鼻胃管や経静脈栄養の長期的管理における合併症や苦痛などの不利益を軽減するため開発された優れた栄養経路であり,病院以外の施設や在宅に生活拠点をおくことをも可能にする.非癌患者に対しても対象が広がっている在宅緩和医療という考え方の中でPEGやPTEG は今後重要な役割をはたす.PEG やPTEG が適切に普及し,自己決定が困難な患者に対して最善の栄養経路選択が平等になされていくことが望まれる. -
2.Interventional endoscopy:5)食道癌に対する光線力学療法
84巻8号(2022);View Description
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光線力学療法(photodynamic therapy:PDT)は,腫瘍親和性光感受性物質(photosensitizer:PS)とそれに特異的な励起波長のレーザー光を用いた局所治療である.現在,PDT は化学放射線療法後または放射線療法後の局所遺残再発食道癌に対する救済治療の一つとなっており,固有筋層浅層までの病変に対する低侵襲な治療が可能である.本稿をきっかけに,PDT が安全で有効な治療として,消化器診療に携わる医師の間で周知されることを期待している. -
2.Interventional endoscopy:6)食道良性疾患の内視鏡治療の展開―経口内視鏡的筋層切開術,経口内視鏡的粘膜下腫瘍摘出術,経口内視鏡的胃噴門趨壁形成術,逆流防止粘膜焼灼術
84巻8号(2022);View Description
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食道アカラシアに対する経口内視鏡的筋層切開術(per-oral endoscopic myotomy:POEM)の開発により,粘膜下層内視鏡という治療領域が確立された.粘膜下層トンネルをつくって固有筋層の切開が可能になるということは,筋層由来の粘膜下腫瘍なども経口内視鏡的に切除すること[経口内視鏡的粘膜下腫瘍摘出術(POET)]が可能であるということになる.また,Zenker 憩室(Z-POEM)や横隔膜上憩室(D-POEM)にも適応可能である.このように,従来は外科手術で対応してきた食道良性疾患に対しても,一部で内視鏡手術が可能となってきている.
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書評
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臨床と研究
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高齢者に対する痔核注射治療(ALTA 療法)の効果について
84巻8号(2022);View Description
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脱出や出血を伴う痔核に対して,alminium potassiumsulfate and tannic acid(ALTA)注射液を用いた注射治療(以下,ALTA 療法)は有効な治療方法の一つとして本邦では普及しており1~3),高齢者に対してもしばしば用いられている.内痔核治療法研究会が発行したALTA 療法ガイドライン(医師用,初版2014 年)では,高齢者では腎機能が低下していることがあるため,投与量の減量を配慮する必要があると記載されている.臨床では高齢者に対して投与量を減量することがしばしばあり,治療効果まで低下してしまうのではないかと危惧することがある.そこで高齢者に対するALTA 療法に着目して,投与量や年齢が治療効果に影響を与えるかどうかを調べることにした.
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症例
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胸腔鏡補助下に切除した巨大食道平滑筋腫の1 例
84巻8号(2022);View Description
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食道平滑筋腫は食道粘膜下腫瘍の中でもっとも頻度が高いが,10 cm 以上の大きなものはまれである.手術においても,狭い胸腔内での視野の確保や,腫瘍の取りまわしが困難で大開胸を余儀なくされることが少なくない.本稿では,巨大食道平滑筋腫に対し,胸腔鏡補助下・用手腹腔鏡補助下に手術を施行した1 例を経験したので報告する.
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